深夜の脱衣所で思い出す、あの日あの時あの場所で
心と生活に深く染み渡ったドラマの影響ほど怖いものはないよねって話。
私が中学生になったばかりの頃、めちゃめちゃ話題になったドラマがあった。
それは、
東京ラブストーリー。
40代以上の人なら「東京ラブストーリー」を観たことはなくてもタイトルぐらいは聞いたことあるんじゃないかな?というか、逆にあれだけ世間を席巻したドラマを知らないことの方が難しい。
このドラマの主題歌、小田和正が歌う「ラブ・ストーリーは突然に」も秀逸で、見事に内容とマッチ。
「あの日あの時あの場所で君に会えなかったら」というわずかな文言には、恋する切なさや相手を心から大切に思う愛しさがみっちり詰まってる気がしませんか?
私はだいぶ大人になるまで「東京ラブストーリー」が大好きなドラマぶっちぎりNo.1でした。
大学生の時に再放送があったんだけど、なぜかものすごく緊張しながら観たもんね(笑)。そして、観終わった後に、中学時代と同じ場面で同じ気持ちになりながら涙を流す自分になぜかほっとした。
「東京ラブストーリー」は恋愛ドラマなんだけど男女の群像劇の要素も多かった。
それは今だからこそそう感じるけど、10代の頃とは違う“青春”みたいな感じ。もっと言うと、“青春の終盤”みたいなやけに透明感溢れる甘酸っぱさがある。
20代前半で、仕事にもまだ慣れていないし自分の将来も確立しきれていない不安を抱えながら、4人の男女が恋愛を通してこれからの自分が進む道をを見つけていく、みたいなね。
まあ、中学生時代の私がそんなことを思うはずはなく、東京タワーの下で完治とリカが抱き合う衝撃的なシーンを観て、
東京すごいぞ!東京に住めばあんな恋ができるんだ!!
と信じた(笑)。
このドラマには当時も今でも話題に上がるようなビビッドな台詞が多かった。その大半は赤名リカを演じる若き日の鈴木保奈美が言うんだけどね。
彼女が口にした台詞で印象的で今でも覚えているのがこの2つ。
「完治がいないとトホホだよ」。
これはね、いつもは気が強くて明るくて元気でポップコーンみたいなリカがふと見せる本音なんですよ。
大人になって恋がうまくいかない時、私も独り言で呟いてたよ(笑)。そして、この台詞を言ってしまう恋はなぜか成就しなかったねえ。
次はこちら。
「完治、セックスしよ!」。
衝撃的すぎませんか(笑)?
20代前半の若くて綺麗で元気な女の子が真っ昼間(朝だったかな?)に、大きな声で片想いの相手に向かって、
「セックスしよ!」
ってすごく爽やかにキュートな笑顔で言うんだよ。
そりゃ、一緒に観ていた母も固まるよね(笑)。
コンビニもないような地方の田舎で育った私は、このドラマを観る前から「いつか東京に行く!」って決めてたんだけど、「東京ラブストーリー」は漠然とした憧れを確固たる目標に変えてくれた。
猛勉強の末に、念願の東京の大学に入り、順調に社会人になった私はいくつかの恋をするんです。
気分はね、赤名リカなわけですよ(笑)。
東京に住んでるお洒落で元気で綺麗な女性はみんな赤名リカ!
そんな風に思い込んでたの。
そんなわけないんだけどね(笑)。
ずいぶん大人になって「東京ラブストーリー」を観る機会があったの。
何度めかの再放送なのかDVDをレンタルしたのかきっかけは忘れたんだけど、なんと、泣かなかった。
それでも「ラブ・ストーリーは突然に」のイントロを聞いた瞬間に、東京タワーの下で抱き合う完治とリカを思い出すし、何十年も前のあの雨の夕方、塾の帰りに片想いしていた男子が小田和正のCDを貸してくれたこともよく覚えてる。
私もそれなりに「あの日あの時あの場所で」という恋をしてきたし、夫ともそうだった。
息子にもいつかそういう恋をしてほしいなって母ちゃんは思ってる。
ま、でも「世界で一番ママが好き」って言われたいけどね(笑)。