
エッセイ:訓練の話
学校では毎年避難訓練、不審者対応訓練、救急対応訓練などの訓練が行われる。
その中でも不審者対応訓練は大人だけの訓練や子ども達も一緒に訓練に参加するものなど、学校によって違いがあり、印象深いものが多い。
教師になって1年目の不審者対応訓練は、大人達だけのさすまたの使い方講習だった。
なぜか校長先生が不審者役となり、私がさすまたの実践をすることになった。
え~?校長先生に向かってさすまたなんて…と思ったが教師1年目、嫌だとは言えない。
当時の学校の校長先生は大きなお腹の大柄な男性。さすまたの使い方もよく知らない新人教師の私は、あっけなくやり返されてしまった。
(本当はさすまたは複数人で使わないと意味がないので注意!!)
そして数年後、特別支援学校で勤務していた時の不審者対応訓練。こちらも大人だけの訓練であった。
警察署の方も講師として参加する本格的なものだった。
朝の会中に不審者が入ってくるという設定で訓練が行われた。私は不審者が入ってくる教室とは別の場所にいて、椅子(いざという時に武器にも盾にもなる)を持って応援に駆けつける役だった。
響き渡る不審者(役の警察署の方)のどなり声とパニックになる子ども(役の先生達)の叫び声、応援の先生(役の私達)が椅子やさすまたを持って走ってくる音、不審者を取り押さえるまでの緊迫した様子。
あまりのリアルさに言葉を失った。
この訓練、不審者役も先生役もかなり本気で取り組むので、けが人が出ることもあるそうで…。
確かに実際の状況になったら、けがだけじゃすまないもの。
しかしあまりにリアルすぎて、その後の警察署の方の講義は頭に入らなかった…。
さらにその数年後、小学校で学級担任を持った時の不審者対応訓練は、授業中に子ども達も一緒に参加するものだった。
私のクラスに不審者が入ってきて、私が第一発見者、クラスの子ども達をベランダから隣のクラスに避難させ、異変に気がついた隣のクラスの担任から職員室に通報、全校児童が避難する、という設定で訓練が行われることになった。
子ども達に事前指導で不審者(不審者役の人)が入ってくること、指示をよく聞いて隣のクラスに避難すること、私は一緒に避難できないことなどを伝えた。
最後に「何か質問はありますか?」と子ども達に聞いたところ、ひとつ質問が。
「先生、何でうちのクラスが不審者が入ってくるのに選ばれたのかんですか?」
確かに大規模校で30クラス以上あるのになぜこのクラスが不審者が入ってくる1クラスに選ばれたのか…。
結局子ども達は「学校に不審者が入ってきたら先生(私)が学校内で不審者に1番やられそうな大人だから。」という結論に達した。
うぅ…子ども達にはそんな風に思われていたのか。
確かに私は大人にしては小柄だし、強そうな不審者が来たら、力では勝てそうにない。
結局、訓練はインフルエンザの流行と重なってしまったため、避難はせずに教室で机のバリケードを作ったり、放送を聞いたりする訓練に変更になった。
小柄で体力もないし、力も弱い私。でも本当に不審者が入ってきた時は君達を全力で守るよ。
いいなと思ったら応援しよう!
