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エッセイ:M先生のこと
M先生は1度定年退職して再び働いている再雇用の先生だった。
持ち時間数(1週間に教員一人が担当する授業のコマ数のこと)の関係で、M先生は私のクラスの図工と社会を担当してくれることになった。
当時の私は特別支援学校から久しぶりに小学校に異動してきての学級担任だったので、不安いっぱい。なので大ベテランのM先生が自分のクラスの授業を受け持ってくれることが大変心強かった。
M先生の授業はとにかくすごかった。まず、教材研究からしてすごいのである。
社会では模型を作ったり、図工では技法を自ら実践して見せたりと子どもだけでなく、大人もこんな授業を受けたいと思わせるような授業なのである。
M先生が私のクラスで授業をしている時、私は空き時間なのだが、しょっちゅう授業を見に行った。
M先生の指導技術を少しでも見習いたいと、ある時は教室の外からそっとのぞいたり、ある時は子ども達と一緒に授業に参加したり…。
そんな私をM先生は嫌な顔ひとつせず受け入れてくれた。
そんなM先生の授業を受けたわがクラスの子ども達もすごかった。
廊下に図工で描いた絵を掲示するとどのクラスより上手だった。私が教えたわけでもないのに誇らしくなった。
職員室ではM先生の隣の座席だった。日頃の授業の教材研究のことや子ども達のこと、悩みなどを相談していた。
また、M先生は特別支援学校の勤務経験もあったので、特別支援学校の話もした。私の趣味の宝塚の話も聞いてくださったので、遠征に行った時にはお土産を渡したりもした。
まるで父親のように慕っていた。
その1年後、私はM先生にお礼もろくに言えずに学校を退職してしまった。自分の気持ちが落ち着いてからM先生には手紙を書いた。
手紙の返事には今も現役で教員をやっていることや私の活動を応援してくれていることなど、当時と変わらず、優しさあふれる内容がたくさん書いてあった。
M先生にもう一度会いたい。
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