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2024.9.17「かぞかぞ第9話」 あらすじ ときどき きりん                                 (勝手な解釈)

「2015」

真っすぐに登る、街への道。

車椅子の“ひとみ”は坂道を“呆然”と見上げている。


「2025」

“私の街”まっすぐの道を行きかう人々、

軽やかに車椅子でゆっくり滑るように行く“ひとみ”

散歩中の犬“カイ君”に「こんにちは」笑顔で挨拶する。

「ワン」


バス停

笑顔でバスを迎える母ひとみ。

バスは止まり扉が開く。

草太が運転手に「ありがとうございます」声をかけ降りてくる。

右手に持つ紙袋からピンクのチューリップが一輪、覗いている。

草太「ただいまぁ~」

笑顔で「はい」紙袋ごとママの膝にやさしく乗せた。

ママはすこしだけ驚いて「ありがとう」顔が“ぱっ”と明るくなる。

草太はすぐに紙袋を持ち「い…行くか」

ママ「うん」弾むように答える。

草太とママ、ならんで歩く。


「私の家族」ママこころの声


「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった第9話」始まります。


神戸の家

夕食の準備中。

ママはキッチンで長い焼きちくわを斜めに切ってるところ。

手前にピンクのチューリップ。

ダイニングテーブルの草太を“ひょいっ”と覗く。

ノートに何か記している草太が視線を感じ顔を上げ目が合う。

草太はおどけた顔でそれに答える。

ママもそれに答えるように笑顔を投げかける。手前にピンクのチューリップ。

静かな笑顔の草太、ノートに視線を戻す。

穏やかな時間。


午後7:10’を指す壁掛け時計。


草太の背中、ダイニングテーブルで夕食の準備をしている。

ママは席に付き笑顔でそれを眺めている。

草太「ごはんにするで」

ママ「ありがとう」

晩御飯はお鍋です。


草太はママと食べながら今日有ったことを話します。

草太「で、カレーが一番人気だった」

ママ「カレー?」

草太「うん」

ママ「ふーん」

奥にはピンクのチューリップ。


キッチン

上からの画面

草太が食器をかたずけている。

ママ「いつもありがとうな」奥からママの声。


キッチン

草太背中越しのママ。

ママはダイニングテーブルでりんごを剝きながら草太を愛おしそうに見ている。


翌朝


”三久堂書店”の自動扉が開く

開いて直ぐにポスター

右に、あやしく動く人。


「岸本家のあかん日々」大ヒット記念

     岸本七実さん

   ふるさと凱旋サイン会


本を手に手に大勢の人が並んでいます。


その先では、七実が本にサインをしています。


次の客は若い女性2人

なんだかおかしな会話が繰り広げられています。


客「草太とおばあさんと…」

きりん:最後までちゃんと言いましょう。


客「芳子、芳子推しです」

きりん:…芳子芳子ってばあちゃんの名前連呼して、気に障る。


客「あの、芳子に…」

きりん:…ばあちゃんがどうした。


客「年取るのが怖くなり“つつ”あります」

きりん:“つつ“ってなに?


客「“徐々”にやな。“徐々”に“徐々”に」

きりん:なに??“徐々”…流行ってるのか。


七実「お名前とかお入れしましょうか?」

客2人組「いやだいじょうぶです」「“まだまだ”なんで」

きりん:“まだまだ”…なにがや!イライラするわ。よく対応できるわ。

きりん:“サイン本、自分の名前なし”“まさか…メ・ル・カ・〇?”


七実「大丈夫なんですかね」末永に不安げに問いかけるも

末永うなずく。

きりん:そんなことより目先のゼニか


次の客「似顔絵もおねがいします」

驚く七実。…嬉しがる、七実。

きりん:似顔絵って…?頼めるの…け?まさかこれも“メ・ル・カ・〇”か?


それを覗いている二階堂。

奥の控室ではサイン本と記念写真を撮る小野寺だけが居る。


二階堂、振り向き話しかける。


二階堂「すごいな」「家族への愚痴がここまで人気を博すとわねぇ」「小野寺さんも楽しいでしょ」

小野寺「うちは得には」「でも、末永さんはウホウホでしょ」「十色出版さんサイン会のたびにすごい接待してくれますから」

二階堂「ぼくはね、岸本家ドキュメンタリー番組企画を…」


次の客

七実「お名前お入れしましょうか」誰だろう…探る表情。

客「旭くんへと」

七実「はぁっ!」思い出した、高校のとき付き合っていた…旭君や!

懐かしむ七実、近況を聞きながらサインを終える、

「じゃまた、連絡するね」っと社交辞令を伝えるも

旭君「ぼく番号変えたんよ、電話番号交換しよか」

七実「あぁ~いやいや」まいったなぁ…の表情。

旭君は強引に番号交換しようとするも、目が悪く四苦八苦している。

七実「老眼や」いじりだす。


サイン会無事終了。控室にて

二階堂、小野寺、斉藤さん、末永さん、と雑談中

小野寺の上達する気のない関西弁で話を回そうとするも、

用もないのにのこのこ付いてきた小野寺を斉藤さんが一喝する。


小野寺「ごめん」しゅんとする。

末永さんが書店定員に呼ばれ退席する。

七実「今夜は茉莉花の実家に行くんですか?」

二階堂「妻はね…妻…」


きりん:「え?!…妻」わたしだけが驚きそして、おいてけぼりに独りぼっち。


その後も皆で雑談の中、末永さんが顔を出す。

末永「先生、お客様が…」

控室に現れたのは“田口先生”(無料で英語を教えてくれた高校の担任)だった。

田口先生「ほらね」当たったって顔

七実「ほらねって、なにが?!」きょとん顔

田口先生「予想通り、立派になられた。先生」

田口先生が七実の本を大量に購入してくれていた。

田口先生「サインしてください」

盛り上がる席。

小野寺「いやいや、先生だらけやないかい」突っ込むも斉藤さんに邪険にされる。


神戸の家

カメラで撮られている。

草太が母の前で洗濯機に洗濯物を入れている。

母「白は後」

草太「あっそうか」ぱっと笑顔

母笑う。

撮っていたのは斉藤さん。

それを見て

ばあちゃん「七実、かわいそうやわ~」斉藤さん⇔七実。

そんな午後3:00’5分前。


ようやく草太が洗濯機のスタートボタンを押すことが出来た。

母「オッケー」ホッとする草太とママ。

草太に押されママを乗せた車椅子がリビングに入る。

ママ「小野寺さんモンブランありがとうございました」

小野寺「あっどういたしまして」ソファーと壁の間から顔を出し声を掛けるとすぐに引っ込んだ小野寺。

きりん:斉藤さんに邪険にされたことがよほど応えたとみえる。

それを見たばあちゃんがじいちゃんと勘違いして小野寺をじりだす。

二階堂「小野寺さん、どうしちゃったの」

小野寺色々言い訳はじめるも、「ほら、気にせず仕事してください」再び身を隠す。


斉藤がママと草太の二人暮らしのことを聞くも、ママも草太も楽しいと心から笑っている。

二階堂、草太に問いかける「何をしている時が一番たのしいですか?」

草太「独り暮らしのノートを書いているときが楽しいです」

七実「独り暮らし?誰の?」ぽかん顔、

ばあちゃんは草太が手に取ったモンブランの箱を凝視。

草太「俺やけど?」

ばあちゃん草太を見ながら目を剥く

草太、モンブランの箱をダイニングテーブル、母の前に置く。


小野寺、ささっと出て来て「独り暮らし、独立、すばらしい」

甘栗を1つ草太に渡す。

ママはそこだけ聞こえていない素振り。

小野寺、出て来た勢いで栗のうんちくを披露するも

ばあちゃんだけが拍手


ママは草太に仕事の話を振る、草太は職場であるカフェのことを皆に一生懸命話す。

おばあちゃんはそれを聞き「耕助さんは今日、会社は休みなん?」

今は亡きパパ“耕助”と勘違いして話す。

草太「今日は休みです」違和感なく答える。

七実、その様子に納得いかない。


その後コンビニ、イートインスペースにて

小野寺、二階堂、斉藤さん3人。

斉藤さんはカメラで録画のチェック中、頭をかしげる。

小野寺、二階堂は仕事を終えていくらかお気楽ムード

小野寺「神戸牛、神戸牛、神戸牛」「こんなとこ居ないで神戸牛」

コンビニ店長「こんな所って言われちゃったねぇ」

コンビニ従業員「ええぇ…」

コンビニ中に蔓延する嫌なムード

二階堂「小野寺さん、失礼ですよ」

小野寺言い訳するも、何を言っても裏目に出てしまう。

最終的に、“岸本七実を見つけたのも、育てたのも俺”自慢話。

食いつく店長。ビールをごちそうになる3人。

このままここで呑み始める。


神戸の家

キッチン上からの画面。

ママがまな板の上で焼いたステーキをナイフとフォークでカットしている。

イラ立ちモードの母。

七実、草太、ばあちゃん、ダイニングテーブルでわちゃわちゃやっているのを見るや

「草太、どんぶりにごはんよそってくっれる?」恐い顔の母

七実とばあちゃんは気付いていない様子。さすが。

七実「何やこの家!しばらく来うへんうちにめちゃくちゃ居心地ようなっとうやん」

「お客様気分で最高。しばらく居たろっと」

七実まったく察していない、お気楽発言まき散らしながらぷらぷらうろつく。

ママ「草太、七実もおうち最高やて」ちくり刺すも、気付かない草太。


夕食も終わり、リビングには七実と草太。

七実はパソコンで執筆作業をしながら草太に問いかける。

七実「今書いてんのひとり暮らしのノートってやつ?」

草太の耳には入らず夢中でノートに書き込み作業を続けている。

七実は草太の後ろからノートの中を覗く

“箸、スプーン、おたま、フライ返し、ボウル、洗濯ネット…”

七実、母を見る。

母は顔だけをこちらに向け“なにも言うな”と目で訴えた。


薄明かりのリビング。

母は草太の寝顔を愛おしそうに見つめる。

リビングの時計は午後10:10’。

母は何かから素早く逃げるようにくるりと踵を返すと自室に飛び込む。


ほっとした…


七実「ママ、草太のひとり暮らしどう思う?」


七実が追いかけて来た。


ママ「えぇ~何がぁ?」すっとぼけるママ。

きりん:逃げろママ!


七実「何がって、あのノート見たことないの?」

「独り暮らしの計画びっしりやったで」


母「うん…」あかん、捕まりそう。


七実「うんってどうすんの」「なぁって」

七実「ずっと草太と2人でおるつもり?」


母「当たり前やん家族なんやから」自分から両手を出してしまう。


七実「わたしも家族やで、一緒に住んでへんけど家族やんねぇ」


母「嫌な言い方」


母「着替える」


七実「撮影とかいろいろ疲れたよな、おやすみ」

母のへやから出て体反転

七実「草太の職場に隣接してるグループホームあそこやったらママも安心やろ」


母「ちょっとそこ閉めてよ」

母のへやを閉めようとする七実


七実「なんやったら私明日ちょっと見学してこよか?」


母「急すぎるわ」追い込むことを辞めない七実


七実「でも明日やないと私もういける時ないで」


母「そしたら行って来たら?」やけくそな母


七実「おやすみ」扉を閉める。


苦悩の母



コンビニ、イートインスペース

小野寺の前のちいさな机の上は、缶ビール(350ml)5本・甘栗の殻たくさん。

午後3:00’~10:00’

きりん:ずっとここに居たのね。


斉藤さん「なんで親って子供に執着しちゃうんだろうか」

小野寺「かわいがって育てた我が子の成長した姿を」「喜ぶ気持ちと寂しく思う気持ちの修羅…」

斉藤さん「子供の居ない我々がこんな話しても空虚なだけですけどね」

小野寺「子供という立ち位置からの発言ならできるでしょ」


小野寺「あれ甘栗きれました!」その場の空気を変えるように

甘栗を探す小野寺、それを追う二階堂。

“関西限定 甘栗”を発見、食いつく小野寺。

なんとかうるさい小野寺をいさめようとする二階堂。

小野寺の手に取った“関西限定 甘栗”を奪いレジへと向かう2人。

そこを撮る斉藤さん。


レジ前で会計をしている二階堂に

小野寺「二階堂さんも子育てしたいでしょ?」

二階堂「あ~もうしましたから」

小野寺「えっ?」


二階堂「前妻との間に息子と娘、2人とも社会人です」


愕然とする小野寺。叫ぶ小野寺。

「うるさいなぁ」と言う二階堂。

小野寺「あんたホントなんでも持ってやがるなあ!」今の今までさっきまで、

同士だと思っていたのに…

実は上のステージの人が混じっていたとわ、裏切り者だ。


二階堂「小野寺さん確かに子離れは文学ですよ(* ̄▽ ̄)フフフッ♪」

小野寺、絶句して動けない。

悲哀の目がレジカウンターの向うから4っつ。


翌朝、神戸の家

玄関先。

なんともいえない表情のママ。

七実「ママ、ホンマに見学せんでええの?」

ママ「…うん」草太がここを出て行こうとしている、一緒に居て欲しいとも言えない。

七実・草太「行ってきます」

七実と草太を見送る母、“ふと”出産後すぐに保育器に入れられ扉の向うへ草太が連れて行かれた時のことを思い出す。

母「後でどんなやったか教えてな」草太とのつながりをこの言葉に託すように。


グループホーム

草太が入居するであろう部屋の中。

ここに住む気でいる草太、職場を共にする仲間たちとはしゃぐはしゃぐ。

これは、ママには見せられないな。


東京のALL WRITEオフィス

七実:草太とグループホームの見学に行ったときの動画を斉藤さんに見せている。

七実「どう?“スクープ草太の独立”」「二階堂さんも喜ぶんちゃうん」

斉藤さん「そうですね」「入居当日は密着させていただきたいです」

七実「どうぞどうぞ」


そんな会話がなされている対面の窓辺の席、小野寺が聞き耳をたてながらなんだか不満げに外を睨んでいる。親指クルクルしながら。


南ちゃんがペットボトルの水を持って来た。

七実「あ~南ちゃんありがとう」「靴下かわいい」


きりん:見たい、靴下…


七実「小野寺さんどう」受け取ったペットボトルを小野寺の前に置く。

小野寺「つまらん」目もあわせずに吐き捨てる。明らかに気に入らない顔。

自分が発掘し育てた作家が出版社、テレビ局になついているようで気に入らない。

まるで、これまで手塩に掛けて育てて来た草太が自分から去っていくママの気持ちか。


小野寺「岸本さん、小説には興味ありますか」まさか、つなぎ留めておくための出まかせ?

七実、食いついてきたが、小説は自信なさげな言葉が続く。

小野寺「一見ありふれた日常や情景から」

「大きな気付きや人のドラマを見つける岸本さんの着眼点や描写力は、非常に長けています」

「その力を今度はフィクションや創作の分野で発揮してみる」「どうだそれならやれそうか」

七実「そう言われると書けそう」

小野寺「ですが今のままのあなたじゃ無理でしょう」

七実「なんでですか」

小野寺「さあ知りませんよ」「そんなもんじゃねえんだよ創作ってのはよ」

「まあ、薄っすら期待して待ちましょう」二階堂の姿に気づき、扉を開ける。

小野寺「いま岸本さんの小説はどうせ面白くない件について話しているのでちょっとお待ちください」イラ立ちを抑えられず二階堂に当たってしまう。

二階堂を招き入れず扉を閉め、席へ戻ろうとする小野寺。


七実「何?何してんの」

「すみません」慌てて二階堂を招き入れる。


小野寺、イライラがおさまらず甘栗を殻ごとかじる。

小野寺「自分、小説はマジなんで」宣戦布告とも取れる発言。


きりん:ALL WRITEから出版する気か


七実が机に散らばる甘栗を拾おうとするも小野寺が全て奪い取り口に全部入れる。


ALL WRITEを出て神戸の家へと向かう歩道。

七実「小説か~」

御成門駅へと吸い込まれる。

しゅ~っ!


神戸の家

草太の体験宿泊2泊3日の予定表が映しだされる。

七実「服は2セットでええよな」

草太「ずっと住みたいです」後ろでママは“りんごうさぎ“を作っている。

草太「最高!最高!最高です!」

ママ「ほなリンゴ食べ~」


翌日の朝

下を行く2人。

マンション通路から見送るママ。

草太「行ってきま~す」ママの存在にいち早く気付き大きく手を振る。

浮かない顔で振り返すママ。

後ろ髪を引かれつつも前に進む草太。


グループホーム

“体験宿泊2泊3日”はじまり~

来ましたよ~!いらっしゃい!全員に迎え入れられる草太と七実。

草太「よろしくお願いします」ノリノリ♬

グループホームの皆の中に溶け込む草太


神戸の家

時計は午後7:15’七実とママ。

向かい合って鍋をつつく。


七実「草太とこうしてよう鍋しとったんや」

ママ「ん~?うん」こころここに…

七実「どんな話すんの?」

ママ「お互いの仕事の話とか」

七実「中年夫婦やんそれ」

ママ「ふっ」


暗いリビング

ノートパソコン画面“小説、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、”

やばい姿勢で爆睡の七実。息できてるか?心配になるわ。


画面越にママが扉を静かに開ける。


七実「ん?」気がつき、しっぶい顔で起きる。

ママ「眠れんくて…」申し訳なさげに車椅子を静かに進める。

七実「草太が家族から離れるの初めてやもんな」


暗めのキッチン

マグカップを大事そうに手にする2人。

七実のおもんないダジャレは聞いていないママ。


ママ、カップの中のミルクを“じっ”と眺める。

“草太が哺乳瓶の乳首からミルクを一生懸命に飲む”

“抱き上げ背中をたたき、ゲップを笑顔で催促する若いママ”

“あかちゃんベッドに乗って病室から連れていかれるあかちゃん草太”


“ガチャン”


“身障者として産まれた草太”

“やり場のない歯がゆさがママを包む”だれも近づけない。“


パパさえも…


“不安がママを支配する”堪え切れずに涙を吐きだす。

“この領域にはだれも入れたくない”ママだけの世界“


“何も言えず静かに病室を出て行くパパ”


“ガチャン”


“パパ、夜の帰り道「大丈夫、大丈夫、大丈夫…」丁寧に種を蒔くように歩くパパ“


グループホーム二泊三日、初日の夜

草太。


“大丈夫、大丈夫、大丈夫…”パパ


目を覚ましベッドから足を下ろす…


着替えをリュックに詰めて、財布を持って出て行く草太。

レースのカーテン越しに入る光りは朝までまだ遠い様子


“ガチャン”


いつの間にか緑覆い茂る一本道。

独りまっすぐ歩く草太。


パパを召喚し静かに並んで歩く。

2人、視線を前に歩く。

草太「パパ?」不安

パパ「なんや?」

草太「この道で、ええ?」不安

パパ「この道でええで」優しく微笑む

草太「ぼくおおてる?」不安

パパ「おおてるで」笑顔

草太「パパ?」不安

パパ「なんや?」

草太「ぼく間違ってない?」不安

パパ「間違ってないで」涙をこらえながら

パパ「うん。草太はずっ~とおうてる」こらえきれず涙する

草太「はい」唇をぐっとつぐむ

パパ「そのままでずっとおうてる」安心したような涙

草太「はい」優しく答える

パパ「これからも、ず~っとずっとおうてる」納得するように涙

草太「はい」迷いなく答える

パパ「はい」もう伝えることはないと言うように

草太「はい」別れを受け入れるように

パパは草太のこれからを確認するように真っすぐ前を。そしてゆっくりとうなずく、納得したように視線を下へと…

草太「パパ?」問いかける

パパ「ん…ん?」寂しく涙が溢れる

草太「今までありがとう」もう行っていいよ…

パパ…“ふっ”と消える。


朝日に向かって歩いて行く草太。


草太はひとり脳内で“だいじょうぶ?だいじょうぶ!”召喚したパパと禅問答し

そうやって脱皮していくんだ、草太は。

すごい、すごい。


神戸の家

朝、パパの仏壇、遺影が映る。

ママ「いなくなったってどういうことですか?!」画面の外で声がする。


“ガチャン”玄関からの音


七実「ふぅえっ!」玄関へと画面から消える。車椅子に乗ったママの後ろ姿、明らかに動揺している。


「草太ぁ?」玄関から聞こえる七実の声

玄関へと飛ぶママ


そこには疲れ切った草太。

肩をさする七実が居た。


ママ「歩いて帰ってきたん?」ほっとするも


ママ「夜中に独りで帰って来て…」準備中


「何かあったらどないするつもりやったん!」はい、どっか~ん!手加減なっし~

心配が怒りに変換され1000倍に膨れ上がり弾けた。


草太は立ち上がりママに向き直る。

ママの怒りは空っぽになって“ふっ”と草太の手を握る。


ママは今回の草太の行動の理由を2人の記憶からたどり探し見つける。

それまでは、一歩階段をあがる度に初めての経験の怖さをママと共有してきた。

まるでペットと接するように…


でも、今回は違う、

ママのことが心配になって帰って来た。


ママに安心してもらえるようにちゃんと甘えに帰って来た。

2人だけの時間。



翌朝

草太はあらためてグループホームへと向かう。

ママと七実と三人で。

草太は途中、コンビニへ寄ると言う。


コンビニドリンク冷蔵庫前

ママ「どれにする?」

草太「どれにする?」

ママ「わたし?わたしはお茶かな」

草太「七実ちゃんは?」

七実「わたしもお茶」

草太がケースからお茶を取り出すと「買ってあげる」

ママ「ぇえ!」

草太「いままでりんごジュース買うてくれてありがとう」

草太「お礼です」

ママ「ありがとう」困惑の笑い

レジにて会計を済ませる草太

おつりを財布へと入れていると

七実「持とうか?」お茶を持とうとするも

草太「俺が持つ」しっかりとした口調で


グループホーム到着

ママの運転してきた車を降りる草太。

草太「ほな、さいならです」ママ、七実に運転席の窓から


背中を向けグループホームへと歩み出す草太。


“産まれたばかりの草太が連れていかれる”


車の扉を吹き飛ばし、飛び出るママ。


七実「ママあぶない!」

すかさず草太が飛んで来てママを支える。

“幼い草太が駆け寄って来た”


草太「ママ、大丈夫です」「ぼくはママの子供です」ママを見つめる。

ママ「草太」草太の目を見ながら涙声で言う。

草太「ぼくは大人です」

扉を閉め、グループホームへと向かう草太。

見つめるママ、なみだが一筋流れて消えた。

振り返らずに消える草太。


神戸の家

午後8:45’

ママひとり夕ご飯の支度へと向かう後姿。


キッチン下の棚から2人分の御膳がはいった篭を出し、一人分の御膳をキッチンに置く。


そして、篭を中へ…


そこに、何かはいっている、取り出すと“ジンベイザメ”ぬいぐるみです。

ママは草太が入れたぬいぐるみをうれしそうに眺め、あかちゃん草太を抱きかかえるようにゲップを催促した。

“抱いて背中を…トントントン”ママ、笑顔!


マルチの職場、熱帯魚屋

マルチ「あの波乱万丈を乗り越えた岸本家が解散するとは…」「わたしは家に戻ります」

「ただし、こいつとはおさらばです」あの2ℓボトルの水を手にシンクへと流す。

七実「え~やん環~!」”たまき”関係性が変わった。


環は七実に「東京に戻る前に熱帯魚を決めてください」

七実「はい~」そこに座って泣いていたのが、


田口先生。


ここ熱帯魚屋のオーナーでもあることを知ることとなり、熱帯魚をプレゼントされた。


東京のALL WRITEオフィス

向かい合って座る小野寺と七実、打合せ?


小野寺「最近、甘栗をあげかねています」手帳にメモしながら

七実「そう言われると欲しいものですね」

小野寺「じゃあお書きなさい」尚もメモ

七実「そもそも小説なんて書いたこと無いし…」

「でもいつか絶対書きます」小野寺と目が合う。


小野寺「いいですねその自信」なぜか机の下へ潜る。

七実と小野寺甘栗でフザケル


二階堂、斉藤さん2人して髪型ぼさぼさで入って来る。

二階堂「“家族流儀”岸本家スペシャル傑作になりました!」

スタッフ一同「拍手」

七実と二階堂が二階堂の妻、茉莉花のことを話している

斉藤さん「嫉妬しないんですね」

七実「ほんまや、なんも思わん」「臭い」

二階堂、小野寺から甘栗を貰う。


神戸の家

午前10:20’

ママひとりリビング。

「ピンポ~ン」

みなと運輸の陶山さん。

七実から“いきもの”の届け物。

陶山の後ろから熱帯魚屋の環、惨状。


神戸の家

テレビに草太が映る。「家族の流儀」

草太「兄弟です」ジンベイザメのぬいぐるみを手に喋っている。


テレビを観ているママの手にもジンベイザメ


テレビに棚が映しだされた。

テレビスタッフ「棚を下半分しか使わない理由は?」

草太「ママが取れるようにここです」

七実自宅で見る「岸本家、大事なもんは下に置く」


ママ、泣く。何気に水槽の隣の観葉植物を見る。


なんとなく違和感。


なにこれ?


鉢の中に何か入っている。


手に取りじっと見るママ。「はぁあ!」目を剥き息を呑む。


あの引き出しの取っ手だった。



グループホーム草太の部屋

ホームの全員で楽しそう。

部屋いっぱいの布団。

今日はみんなここで寝るつもりらしい。


神戸の家

洗濯機に洗濯物を入れているママ。

鼻歌、機嫌良さそう。

ママの鼻歌の流れる中、草太の声

“ぼくとパパとママと七実ちゃんとばあちゃんはバラバラになりました”

“でもずっと家族です”

リビングの壁に飾られた草太の絵。

夜空を行く“赤いボルボに乗る家族5人”


“わたしの街の真っすぐな道”

お昼前かな

坂の上で何かを待つママ。

ママの声“わたしの街”


七実が角を曲がり坂を上る。見上て手を振る。

「ただいま~!」


ママ「おかえり~!」手を振る。笑顔。


上る七実の後ろから草太が映る。

七実の後ろで手を振る草太。

「ただいま~!」


ママ「おかえり~!」七実の時より嬉しそう。


草太の方を見る七実。草太に手を振る。

「おう!」


草太「もう、なに~!」


ママ「ほら、あの子達かえって来たよ」ばあちゃん立ち上がり登場。杖をつく。


ばあちゃん「あかん!ごはんの支度!」「急いでご飯の支度せな」


草太「カフェのごはん、いっぱい持ってきました」


草太“ぼくの家族”


ばあちゃん「な~耕助さん」


七実「すっかり君は岸本家のパパやな」


草太「パパ~!」


七実“わたしの家族“


そしてエンディング曲、エンドロールの流れる中

家族は家路につく。


そして角を曲がり見えなくなった。


―つづくー

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