一口小説:赤い流星群が降る
「ああ…またこれか」
君は紙切れを眺めて溜息をついた。
長いポニーテールが揺れる。
「なに?」
「なにって、これだよ。わかってないのか?」
紙切れを乱暴に突き出される。
受け取ると、赤い流星群の観測記録が書かれていた。
「なるほど、ね。」
「なるほどじゃねぇよ。なんなんだ、またこういう結果にしやがって。なんのつもりだ?楽しいのか?綺麗でもないだろ。」
「そうだね。」
「どうせおまえのことだから言い訳するんだろ。いや、そんなことはしないか?そうだ、おまえは被害者ヅラをするんだ。これを見てもわかるが…おまえは本当に価値がないよ。なんでまだ生きてるんだ?」
またこれだ。すぐに僕のことをまくし立てる。
でもこれは僕が思っていることだから、怖くはない。
ちょっと心臓が苦しい。
「なにレビューしてんだ。あのなあ、俺はおまえなんだぞ?何度も言ってるよな。」
「うん。それについて考えてたんだよ。」
「チッ」
意味のない舌打ちをされる。
「んで、どうするんだ。」
「うーん…とりあえずこれは塾に持っていくよ。先生が欲しがってたから。」
「そんなもん見せて何になる?恥ずかしいと思わないのか?恥だぞ。恥。先生もがっかりだ。怒られるかもしれないな。」
怒られるかも、のところで君はにやけた。
「滑稽かい?」
「ああ滑稽だ!愚かで傲慢で価値がないからな!」
「そのとおりだよ。」
「…」
君は広げていた手をゆっくりと握った。
こっちを睨みつけながら。
「じゃあ、行ってくるよ。」
席を立って君の方を見る。
夕日が綺麗だ。
「…忘れ物はないだろうな。」
「ないよ。」
「そうか。」
ふと気になって、
紙切れをもう一度眺める。
「…やっぱり、綺麗じゃない?」
「おまえの血の色だ。」
「僕の血はもっと黒い。」
「どうだろうな。」
「…結果もよくない、か。」
「あたりまえだろ。」
「そうだよね。でも半分はいってるよ。」
「平均が何点か知らないのか?」
「しらない、けど…知りたくもないし。」
「……………早くいけよ。」
「ああ、うん。
でも君も来るでしょ?さっき、行ってくる、なんて言っちゃったけど。」
「ああはいはい。そうですね。」
やれやれと君は立ち上がって、僕の隣に立った。
「ほら行くぞ。」
「うん。」
「今度は塾で観測することになるかもな。」
「え〜それはやだなぁ…。」