悪い推定
こんな記事がありました。
古市氏のいう『都の若者(12~39歳)が400万人としてワクチン打ちたい人が1%だとしても4万人。対して準備数が200って、都の担当者は算数もできないんですかね!?』という意見。思うところがあったのでちょっと解説してみます。
『都の若者の何人が渋谷のワクチン接種に来るだろうか?』
こういった問をフェルミ推定と言います。コンサルの入社試験では定番とされている問題です。
明確な答えが出ていない、もしくは勘が効かないような問に対して論理的に仮説を積み上げられるか?を見ます。
例えば有名な例題。
『日本全国には電信柱が何本あるでしょうか?』
こんなの答えそのものを知ってる人はほぼいないでしょう。
だからといって、勘で『う~ん、100万本!』とか言ってもだめです。当然その場でググるのもNG。身近な数字を積み上げて推測していきます。
『都市部と山間部では電信柱の密度が違うとして、都市部では◯mおき、山間部では△mおきに立っているとする。そうすると、1キロ平方メートルあたり都市部では◯◯本、山間部では△△本あると思われる。
日本の国土面積はたしか37万キロ平方メートルで、7割が山だと聞いたことがあるので、都市部は10万キロ平方メートル、山間部は27万キロ平方メートルとする。
だとすると都市部の電柱は◯◯◯本、山間部の電柱は△△△本あることになるため、合算すると××××本あると思われる』
みたいな感じです。
数字そのものを当てることが目的ではなく、考え方を見るのが目的なので最終的な数字が合っているかどうかは大した問題ではありません。桁がプラスマイナス1桁の範囲であれば上出来。
はい、古市氏の話に戻ります。
どうでしょう?
『都の若者の何人が渋谷のワクチン接種に来るだろうか?』
『都の対象人口が400万として、1%が打ちたいとしたら4万人!』
雑すぎません(笑)?
続きをやってみます。
1%打ちたい路線を引き継ぐとして、接種希望者全員が未接種ではありません。1回目接種済みの国民は55%とニュースでやっていました。高齢者から優先して打っていったので、若者は30%くらいですかね。残り70%が未接種だとします。40000×0.7=28000。
重要なのは件の接種が金曜の昼間だったという点。平日の昼間に自由に動ける人というのはかなり限られます。接種自体が急に決まったことでもあるので前もって仕事の休みを取れる人も少ないと思われます。仕事も予定もなく、来ようと思えば来れる人を10%とします。28000×0.1=2800。
後は「打ちたいけど未接種で予定が空いている。で実際に行く」人がどれだけいるか。都は都庁などでも予約制の大規模接種やっていますが、結構ガバガバ空いているそうです(争奪戦になっている横浜市民からすると羨ましい限り)。その状況から鑑みて、「予約がいらないなら行こう」となる人が何割いるか。50%として2800×0.5=1400。
こんなところですかね、1400人。
感覚値から言うともっといそうな気もするけど。
数字を当てることが目的ではないのでそこは置いておきますが、ステップとして『400万人の1%で4万人』が相当雑というのは感じていただけるかと思います。
古市氏の目的が都をディスることだから意図的に4万という数字を出した可能性も高いです。それで「都の人は算数もできないんですかね?」はひどい。少なくとも彼の推定は新卒採用試験の応募者レベルより遥かに低い。
コロナはその特性上、(珍しく)理系の人が幅を利かせられるトピックです。
数字を用いて説明されると「なるほど、たしかにそうだ!明確だ!」と思ってしまう人も少なくないと思います。
統計のごまかしテクニックとかも良く聞きますが、そういうところに悪知恵使わないで欲しいものです。