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『RPGタイム!〜ライトの伝説〜』の素晴らしさを伝えたい

なんのためにゲームの感想文を書くかと聞かれたら、まずは自分が読みたいからと答えます。自分が感じた感想を自分で書くんですから、納得感が違います。そりゃそうだ。で、次に何が来るかというと、友人知人に知らせたい。といっても、僕にはリアルでゲームについて語り合える友人はおりませんので、ここでの友人知人というのはSNSでつながったみなさん。今から20年ほど前、Wiiでバーチャルコンソールが登場た時、若い人にその魅力伝えたいと、今思い返すと無邪気すぎる思いを胸にブログ始めたりしまして、ありがたいことにそこでつながったご縁が、いまだに続いていたりします。今はみんなにゲームの面白さ伝えたいというよりも、岡山や広島や名古屋のゲーム仲間にジャックジャンヌ薦めたいとか、北海道にいるゲーム仲間に両手いっぱいに芋の花をの良さ伝えねばとか、割と小さな目標に「届け!この思い」と感想をしたためています。と、届ける先が小さくなったもんで、大体ツイッターでぽつぽつ感想つぶやいて「届いたかなあ」と感じたら、そこで落ち着いてしまい、(加齢による体力気力の衰えで日々生きることにリソース割かざるを得ない現実も大きいですが)昔ほどの熱量で書くことは本当に少なくなりました。そんな中、凄いゲームに出会ってしまいました。久々に、なにかを伝えずにはいられない。そんな衝動と共にこれを書いています。

『RPGタイム!~ライトの伝説~』は2022年3月10日にアニプレックスからXBOXシリーズとPC用に配信されたゲームです。開発はデスクワークス。週刊ファミ通No.1736号にこのゲームについて10ページの特集が載っていると知り買ってきまして、その特集を読んだところ、このゲームはデスクワークスの藤井トム氏と南場ナム氏が”架空の小学生ケンタくんが自作したRPGを放課後に一緒に遊ぶ”というテーマで、構想15年、開発期間9年の歳月を費やし完成させた、ポイント&クリックアドベンチャーだそうです。なるほど、そういうコンセプトだったのか。僕がこのゲームに手を伸ばしたのは、このゲーム配信直後に、僕のTLがとんでもなくざわついていたから。僕のTLには頼もしいゲーム好きの方々が揃っている、と、自分では思ってるのですが、そのゲーマーの皆さんが言葉を失うほどに驚き戸惑っているのを見て、これは是が非でも遊んでみないとと思い、週末にDLし、プレイを開始して5分でKOされました。

放課後の教室で、プレイヤーは机の上にケンタくんが自作した『ノートRPG~ライトの伝説~』を遊ぶことになります。ファミ通の記事には、架空の小学生クリエイター、中村ケンタくんのインタビューが載っています。そのインタビューによると、ケンタくんは小学4年生から作り始めて小学5年生になるまで、1年以上の期間をかけて完成させたそうです。10歳の小学生が1年かけて完成させた力作です。たしかに凄い。ノートに描かれたイラスト、ダンボールや石、電子工作と、手に入るものを駆使して作られたギミックの数々。小学生の情熱恐るべしのレベルです。だがしかし、このゲームの本当の凄さは、その先にあるものまで可視化していることです。言うても10歳児が作った手作りのRPGです。めちゃくちゃよくできてるけど、紙の上の絵空事。しかし描いてる当人の頭の中には、まるで自分がゲームの中にいるような感覚で描いているはず。作っているはずです。このゲームは、その想像力の部分まで完全に再現してあるのです。それも圧倒される密度で描かれています。プレイヤーはケンタくんが作り上げたライトの伝説の世界にダイブさせられるのです。加えて、ギミックから溢れるゲーム愛やマンガ愛。ほんとに芸が細かい。かつて自分が子供だった頃そうだったように、色んなゲームで遊び、アニメやマンガの世界を直球で受け止め、感動し、脳内で妄想した世界が広がります。さらに、そこに加わるアナログな文房具や小道具の数々が妄想にリアルを乗せて凄みを増してきます。構想15年制作期間9年は伊達じゃない。こういう世界が好きな者ほど、この情熱に打ちひしがれることでしょう。

作り込みの熱量が凄まじいゲームなのですが、僕はこのゲーム最大の魅力は、ゲームマスターとしてのケンタくんの素晴らしさ、天才クリエイター中村ケンタくんから溢れ出る情熱と眩しさにあると思います。ゲームマスターとして、ケンタくんはプレイヤーを楽しませようと全力を注ぎます。その姿は、ゲームの進行とともに右上のウィンドウに表示されるのですが、ここにこのゲームの魅力が詰まっていると僕は考えます。すべての登場人物を、お面まで作って演じ分けるケンタくん。最初は次々と繰り広げられるデジタル技術を駆使して再現されたアナログ感溢れるギミックや、細かすぎる作り込みの数々に目を奪われがちですが、最後はケンタくんのマスターとしての熱演ぶりに夢中でした。ちょっとしたアクシデントもものともせず、それを好機として演出を書き換え、全力で進行していく。そんなケンタくんと共に、1週目は僕も小学生になった気分で存分に楽しみました。

冒頭にポイント&クリックアドベンチャーとありましたが、これはケンタくんと放課後のひと時を過ごす、放課後体験シミュレーションとも言えるかもしれません。この作品はVRではないけれど、ゆうなまVRやアストロボットレスキューミッションにも勝るとも劣らない没入感のある凄いゲームだなとも思いました。そして色んな楽しみ方ができるゲームであるとも思います。このゲームを遊んでいて、僕はPSVITAで発売されたテラウェイという作品の事を最も強く思い浮かべました。テラウェイは紙の世界を舞台に、背面タッチからジャイロまでPSVITAの機能をフルに使ってプレイヤーを楽しませようとした、PSVITA最高の1本だと思っている作品で、手作りの風合いがとても近いことが挙げられるのですが、それに加えて、僕はテラウェイに対して特別な思い出がありまして、それは当時幼稚園ぐらいだった次女と一緒に遊んだ思い出。次女を僕の膝の上に乗せて、VITAを手にテラウェイの世界を最後の最後まで存分に堪能した思い出が宝物のように心の中に残ってまして、今回RPGタイムを通じてケンタくんと過ごした時間は、それに近い感動を覚えました。先ほど小学生になった気分で楽しんだと言いましたが、途中からはケンタくんのお父さんのような視点で、ケンタくんと共に過ごしていたのかもしれません。

幸運なことに、ビデオゲームに出会って40年以上たっても面白いゲームに出会いたい欲は衰えず、更に幸運なことに、ビデオゲームの面白さも天井知らずでずっと面白くあってくれています。また、面白いゲームにたどり着けているのは、みなさんのおかげです。冒頭に、加齢で色々衰えてきたので、最近は、自分とごく近しい友人知人と楽しめてればそれでいいかなという感じの事を書きましたが、とても熱量のある作品に出会うと、やっぱり多くの人に自分が感動した体験を共有してほしいという欲が出てしまいますね。さて、RPGタイムを、ちょっと刺さりそうにない方向に薦めるにはどうしましょうか。そうだなあ。天才クリエイターの中村ケンタくんの熱演がとても微笑ましい作品です。その知識量はちょっと早熟な少年の印象も受けます。それはペンギン・ハイウェイのアオヤマくんのようでもあります。今回は年頃の同級生のように、あるいはケンタくんの保護者目線で、ケンタくんの眩しさと対峙しましたが、ケンタくんの隣に住むお姉さんというロールプレイでケンタくんを眺めてみるのも面白いかもしれません。ゲームマスターケンタくんとお姉さんの薄い本が生まれそうな予感もします。と、とにかく、一人でも多くの人に、この作品の熱量に触れてほしいと思います。僕は大変素晴らしい体験をさせてもらいました。構想15年、制作期間9年の歳月を、面白さのあまり週末の2日間で駆け抜けてしまった事に少し申し訳なさを感じながら。本当に面白かった。確実に、今後も思い出に残る作品となりました。藤井トムさん、南場ナムさん、素敵な作品をありがとうございました。

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なかじマダオ
サポート頂いたものは概ねゲーム会社に回ると思います