【BL二次小説】 お出掛け⑤
結局、まだ開いていないスポーツ用品店の前で開店待ち中の二人。
新開は立ったまま入口扉にもたれかかり、荒北はその足元でヤンキー座りをしている。
「……」
「……」
会話も無く、黙ったままの二人。
だが、ずっと互いを意識しっぱなしだ。
今日、このデート中になんとか荒北の気持ちを確かめたい、と新開は思っている。
脈があるようなら、そのまま告白まで雪崩込み、お付き合いを申し込みたい。
さっきも手を握った状態でお互い赤くなっていた。
これは、どう考えても、両想いだ。
絶対。
だって、他に考えられる理由が無い。
しかし、相変わらず確証は無い。
「……はぁ」
溜め息をつき、悶々とする新開。
「……」
ヤンキー座りをしたまま、荒北は何か話題を振ろうと考えていた。
「……なァ新開」
「ん?」
「オメー、す……」
「?」
好きな奴、居ンのかよ ──
荒北は、思わずそう尋ねかけて、慌てて飲み込んだ。
待て!
待てオレ!
ナニ聞こうとしてんだ!
この質問は、危険だ!
考えてもみろ!
コイツが「居る」と答えたところで、その相手がオレだって保証も根拠もねェ。
誰か他の奴かもしんねェ。
だったらそんな話聞きたくもねェ。
かといって「居ない」と答えたら、なんだ、やっぱりオレの事なんとも想ってなかったんか、で失恋決定だ。
更に「靖友は?」なんて返されてみろ!
どうする?
どう答えるつもりだ?オレ。
何も考えてねェぞ!
どう転んでも、オレにとって全くハッピーじゃねェ!
「す……」
「す?」
はっ!
もしかして!
もしかして靖友!
「好きな人いる?」とか聞こうとしてるんじゃ?
きっとそうだ!
そうに違いない!
居る!
居るよ!
オレの目の前に居る人だよ!
オレの瞳に映っている人!
それがオレの好きな人だよ!
よし!
そう答えよう!
OK靖友!
オレは準備万端だぜ!
さあ!
カモン!
ドックンドックンドックン……!
「す……」
「……」
ゴクリ。
「酢豚のパイナップルって邪道じゃネ?」
「邪道じゃないよっ!!あれが旨いんだよっっ!!」
「お待たせしましたー!いらっしゃいませー!」
扉を解錠した店員が元気に声を掛けてきた。
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