【BL二次小説】 好みのタイプ・新開ver.①終
「ごめん」
告白してくれた女子にこの台詞を言うのは、もう何度目だろうか。
謝られた女子は、項垂れて立ちすくんだままだ。
いつまでも気遣ったところで事態は変わらない。
新開は踵を返し、その場を立ち去った。
「まァた断ったのかヨ」
校舎の角を曲がった所で荒北に声を掛けられる。
「……見てたのかい」
ばつが悪そうに苦笑いする。
「ケッ。遭遇率高過ぎンだよ」
両手をズボンのポケットに突っ込み、部室に向かって荒北は歩き出した。
新開も並んで歩く。
「さぞかし理想が高いんだろうなァ」
「そういうわけでも……」
濁す新開。
「どーゆーのが好みなわけェ?」
「……え?」
「あンだろ?例えば髪は長いのがイイとか短いのがイイとか」
新開は答えるべきか躊躇したが、少しぐらいならいいか、とガードを緩めた。
「……ショート」
「色はァ?髪の色ォ」
「……黒」
「そっか。確かにさっきの女は茶髪ロングだったな」
「……」
「もう黒のショートが好きなんだって掲示板に貼り出しとけヨ。そうすりゃ告ってくる女も減るだろ。……いや、そんなことしたら学園中の女が黒のショートになっちまうか」
「ははっ。大袈裟だよ」
荒北は更に質問を続けた。
「お目々はパッチリ?」
「いや……細いのがいい」
「チチはァ?巨乳か?」
「いや……ぺったんこ」
「マジか!プチチチが好みか!ヘェ~」
「……」
新開の理想像に興味を示す荒北。
「お嬢様タイプとか?妹タイプとか?」
「……ヤンキー、かな」
「ブッ!オメ……意外なトコ攻めんなァ!」
「そうかな」
「モテモテ新開くんの好みがまさかヤンキーたァ、誰も予想つかねェだろ」
「……」
「体型はァ?痩せ型とかぽっちゃりとか」
「痩せ型だな。……適度に筋肉がついてる感じ」
「筋肉て……そっか!体育会系か」
「そうそう」
「タッパはァ?やっぱこう……ギュッと抱き締めた時に胸の辺りに顔がうずまる、みてェな?」
「いや……180cm超え」
「デカっ!!」
「はっ!」
新開は喋り過ぎた、と口に手をあてた。
「180cmてオメ、デカ過ぎだろ!オメーとおんなじぐれェだぞ!」
「つ、釣り合い取れてるだろ」
「そんな背ェ高けェ女、バスケ部にも居ねェぞ!」
「い、居ないだろうな」
「無茶苦茶だぜテメェの好み。そりゃみんな断られるワケだ。納得納得」
「……」
新開は不安になる。
「靖友……この事、誰にも言わないでくれよ」
「言うかよ!だいたいィ!こんなん誰も信じねーヨ!」
荒北の反応にホッとする。
「ウチの学園にゃ当てはまる女は居ねェな」
「……そうだろうね」
「外のスポーツ選手か、モデルか、外人か」
「ははっ」
「全く……マニアック過ぎだっつーの。理想高いっつーより、上級者だァ」
「ひどいなぁ」
「でもヨ……。背ェ高けェ女とかプチチチの女って、その事気にしてるだろうからヨ。そういうコが好みだっつったら、きっとスゲー喜ぶぜ」
「靖友……」
荒北の解釈に優しさと思いやりを感じ取り、そういうところがやはり彼の魅力なのだと改めて認識する。
本当のことを知ったら、どんな顔をして驚くだろう。
真っ赤になって照れてくれるだろうか。
それともやはり……嫌悪されるだろうか。
今はまだ……言えない。
二人は部室に着いた。
「遅いぞ貴様ら!」
東堂から怒鳴られる。
それをスルーしてロッカールームへ。
「じゃ」
新開は素早く着替え、ソソクサと出て行った。
荒北は着替えながら、さっき新開と話していた事をずっと考えていた。
「……やっぱ居ねェよなァそんな女。だってまるで男……ン?」
着替える手がピタッと止まる。
「男?……ンン?」
目が泳ぎ出す。
「……エ?……エッッ?」
荒北は自分を指差し、耳まで真っ赤になった。
「エエーーッッ!?」
おしまい