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【BL二次小説】 お出掛け⑧
バッ!!
「アッ!」
新開は、荒北の手にしていた商品を背後から素早く奪い取った。
「オ、オイ!」
そして、無言でレジへ持って行き、支払いを済ませる。
包まれた品をわし掴みし、スタスタと店を出て行った。
「エ?……新開!」
荒北は慌てて後を追う。
新開は小走りで、2ブロックほど先の公園へ入って行った。
「新開!」
訳が解らず、荒北も新開について公園へ入る。
「はぁ、はぁ」
新開は公園内の太い桜の木に手をつき、息を整える。
「ハァ……」
深呼吸している新開に荒北はゆっくり近寄った。
「どしたんだヨ。急に走り出して……」
「靖友……」
新開は桜の木を背に、荒北の方へ向き直った。
「新……!!」
荒北は驚いた。
新開の瞳から、涙が、こぼれていたからだ。
「な、なんで泣い……」
「説明……してくれよ、靖友……」
「エ……?」
グスッ。
ガサガサ。
新開は涙を流しながら、先程買った包みを開ける。
「さっき……オレさ……おめさんに、プレゼント買おうと、選んでたんだ。今日、買い物付き合ってくれたお礼にさ……」
「エ……」
「けど……。おめさんが選んだのは……」
ガサッ。
新開は包みから買った物を取り出した。
そして、手の平に乗せて、荒北に差し出す。
「ウ……」
荒北はそれを見て、みるみる顔が赤面する。
1歩、後ずさった。
それは、革製のアームバングルだった。
2個、ある。
小さなシルエットの動物の絵柄がそれぞれにひとつ刻印されている。
その絵柄は……狼と、兎だった。
「ペアの……アームバングル……」
「ウッ。ソ、ソレは……」
「靖友……」
グスッ。
新開はすすり泣きしながら、荒北に尋ねる。
「教えてくれよ靖友……。これ……オレと、ペアで、身に付けたい……そういう意味にとっていいのかな、オレ……」
「……ッ……」
荒北は真っ赤になって下を向き、口ごもっている。
「オレ……靖友がこれ選んでるの見た時……すごく感激してさ。めっちゃ……嬉しかった……」
益々涙が溢れてくる新開。
「嬉しかった?ホント……?」
顔を上げる荒北。
「ホントだよ……靖友……オレ……」
新開は1歩、前へ出た。
「好きだ。靖友……」
「……!!」
息を飲む荒北。
「今日……デートのつもりで、おめさんを誘った……。来てくれて……嬉しかった」
「新開……!」
「もし……オレの気持ち、受け入れてくれるんなら……。このアームバングルの狼の方……受け取ってほしい……」
「!……」
照れ屋の荒北から“好き”という言葉を引き出すのは困難だと最初から新開はわかっていた。
だから、それに変わる意思表示を用意してあげた形だ。
「……」
荒北は顔を真っ赤にしたまま、ゆっくり震える手を伸ばす。
そして新開の手の平から、狼のアームバングルを、受け取った。
「靖友……」
ホッとして微笑む新開。
「……」
荒北は、二の腕に装着する。
新開も、同じように兎のバングルを装着した。
「靖友」
「わッ!」
新開は荒北の腕を引き寄せ、抱き締めた。
ギュッ。
「好きだよ靖友。やっと……告白できた」
「新開……」
荒北も、新開の背中に腕を回した。
「ずっと、怖かった……。不安だった……。おめさんの気持ちがわからなくて……」
ポロポロと涙をこぼして想いを吐き出す新開。
「毎日毎日……おめさんへの想いが強くなってって……頭ん中おめさんだらけで……でも、どうしていいかわかんなくて……」
「オレは……」
それを聞いて荒北も語り出す。
抱き合っているので互いの顔が見えない。
それがかえって話しやすかった。
「オレは……諦めてた。オメーとハッピーエンドなんて、不可能だって……」
「靖友……」
「けど……どうしても、目で追っちまう。見ないよう、見ないよう、気を付けてンだが、身体が言うこときかねンだ……」
荒北も、瞳に涙が滲んできた。
「デート誘われて……オレ、舞い上がっちまって、ゆうべ、一睡も出来なくて……そんで、あんなに早く、駅、来ちまった……」
「靖友……」
「何着て行こうか迷って、床屋どうしようか、とかヨ……ヘヘッ。オレらしくもねェ」
「オレも……1分でも1秒でも早く、おめさんに会いたかった……」
ギュー。
新開は、更に抱き締める腕の力を強めた。
そして荒北も、それに応えるようにきつく新開を抱き締めた。