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【BL二次小説】 お出掛け②
「靖友」
ドキン!
寮の廊下で新開に呼び止められ、振り向く。
「な、ナニ?」
笑顔がひきつり、動きが硬い荒北。
ドキドキ……。
「あのさ……」
新開は目を泳がせ、落ち着きがない。
ハタから見ていると、二人とも挙動不審だ。
「グ、グローブ買いたいんだけどさ……」
「ハ、ハイ」
なぜか敬語になる荒北。
「靖友……選んでくれない?」
「……ハ」
「その、つまり……一緒に、買い物、付き合ってくれないかな、って」
これは、新開の考えに考え抜いた渾身のデートの誘いだった。
サイクルグローブは消耗品だ。
部の予算でいくらでも取り寄せてもらえる。
それをわざわざ「一緒に買いに行こう」と誘う。
それで荒北の反応を探るのだ。
普段の荒北なら「ハァ?メンドクセェ。自分で選べバァカ」と言いながらも結局付き合ってくれる、そんな感じだろう。
さて、どう答えるか。
新開は荒北の返事を待った。
「……ハイ。了解致しました」
荒北は直立不動でロボットのように答えた。
「……」
これはいったいどういう反応なのか。
新開は読みあぐねる。
でも、一応OKはしてくれたようだ。
新開はホッとして、次の段階に移行する。
「じゃ、じゃあさ。次の日曜日、10時に△△駅前で待ち合わせ……な」
△△駅は、ここから数駅先の大きな街にある。
しかし、同じ寮に住んでいるのだ。
一緒に出掛ければ良い。
なぜわざわざ△△駅で待ち合わせる必要があるのか。
それはもちろん、誰かに邪魔されたくなかったからだ。
一緒に出掛けるなどと知られたら、オレもオレもときっとみんなついて来てしまう。
自分は、荒北と2人だけでお出掛けしたいのだ。
荒北は、何と答えるだろうか。
普段の荒北なら「なんで現地集合なンだヨ。一緒に出りゃイイじゃねーか。そうだ、福ちゃんも誘おうぜ。東堂は置いてくけどナ。ギャハハ」と言うだろう。
「……ハイ。了解致しました」
荒北はまたロボットのような返答をした。
「……」
ちゃんと理解しているのだろうか。
新開は不安になった。
しかし、下手に突っ込んで気が変わられても困る。
「じゃあ、な。日曜日、よろしく」
「了解致しました」
新開はその場を去った。
「……」
荒北はしばらくその場で直立不動だったが……。
バタン!
そのまま廊下に倒れた。
周りにいた寮生達が驚いて覗き込む。
ツンツン。
死んだのかと、荒北をつつく。
「ブハーーーッ!」
突然大きく息を吐いて半身を起こした荒北に驚き、みんな一斉に離れる。
「ゼーッゼーッ!呼吸すんの忘れてたァ!」
息を吹き返す。
極度に緊張していたらしい。
立ち上がりながら、先程新開に言われた事を思い出す。
「えっと……次の日曜日、10時、△△駅前、グローブ買いに……だったナ」
なんとか覚えているようだ。
「休日に……二人で……買い物……」
これは……まるで、デート!
瞬間、荒北は茹でダコのように耳まで真っ赤になった。
「いやいや!何言ってんだオレ!ンなワケねーだろ!」
両手で頭をポカポカ叩く。
ただの買い物だ。
ただの。
……ヤベェ。
何着て行こう。
いやいや、何だってイイじゃねーか。
デートじゃねェんだ。
……床屋、行ってこようかな。
いやいやいや、気合い入り過ぎだろ!
ただの買い物だっつーの!
荒北の思考はパニックを起こしていた。