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日本酒って面倒くさい

昨日、急遽、開封済みのお酒を飲み切ることになった。
と言っても、少しずつ瓶に残っているものが大半だけれど。


理由は、だんなちゃんの長期出港が、昨日、急に決まったから。しかも今日からだと。
私は、一人だとアルコール類を一切飲まないので、その前に消費してしまおうと思ったのです。

その中の一本が雨後の月、特別純米 超辛口。

お酒の甘辛の目安になる日本酒度っていうのがあるのですが、簡単に言うと、糖度が高いほど、数値はマイナスになり、糖度が低いほど、プラスになるというもの。

※日本酒度については、こちら↓でもう少し詳しく解説しています。

この日本酒度が、雨後の月で、+14.0とは、思い切った数値。

日本酒に詳しい方だと『ほぉ!』とか『えっ?』と思われるかもしれませんが、
そう言われても、日本酒度なんて知らないっていう人には、数字だけじゃ、わかり難いですよね。

日本酒度の説明では、±1.4が普通って言われていますが、
でも、実際に市販されているお酒の平均的な日本酒度は、だいたい±0から、+5ぐらいのようです。

それを超えてくると、辛口、+10を超えたら超辛口って感じだと思います。

因みに、雨後の月で一番人気のBlack Moonというお酒があるんですが、これが+2。
どんな感じかと言うと、広島の瀬戸内側のお酒らしく、フルーティーで華やか。
心地よい苦みがあるので、甘みにコクを感じさせながら、お酒全体が重くならず、スッキリまとまっています。

そして、熟成してくると、甘みが膨らみ、ジューシーという言葉がしっくりくるお酒です。

その他のお酒も、日本酒度は、だいたい+2から+4。
定番商品に、+6という辛口があるんですが、レギュラー商品は、この範囲。
過去に、企画商品で+11のお酒を、超辛口として出したことはあるんですが、今回は、それを通り越して、+14。

日本酒的にも立派な超辛口だし、普段の蔵のお酒から考えると、思い切った商品だと思います。

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ところが…
その為か、このお酒は、かつて無いぐらいのじゃじゃ馬で。

以前の雨後の月って、開栓当日は、お酒の温度が2度違うだけで、味わいが違って感じる、繊細なお酒だったんです。
 
それが、開栓して2日目以降、空気に触れて、甘味や香りが膨らんできて、フルーティーな印象に…というのが、特徴でした。

言い換えると、開戦直後は、ちょっとツンデレなお酒。

ところが、去年ぐらいから、その傾向に変化が。
開栓直後から、以前よりも香りや甘みが感じられるようになり、逆に、2日目以降の変化は穏やかに。

私は、雨後の月の苦味が好きなのですが、それが苦手な人や、甘いお酒がⓈ喜な人の場合、こちらの方が好みだったり、扱いやすくなったかなぁって思っていたんです。

ところが!!!!
このお酒に限って言えば、開栓直後の味わいも、お酒の移りゆく味わいに対しても、ツンデレ以上の難しさ。

口に含むと、甘みと旨味、ぶどうのような香りがふわっと膨らむのですが、辛味と苦味も負けていない。

上にも書きましたが、この苦味というのは、雨後の月の持ち味の一つで、これがあるからすっとした品の良い仕上がりや、膨らんでも心地よい甘みやコクとつながります。
ところが、今回は、辛味とタッグを組んじゃった。
だから、辛いの。とっても。

八反錦ってお米は、時間が立つほどに、甘みが膨らみ、フルーティーさが増すけれど、どこかすっきりとした感じがあるお酒が多いんです。

なんて言うのか、押しが強くないっていうのか。
でも、最初は、淡麗で大人しいので、甘みも膨らまない状態だと、余計に、苦味と辛さが引き立つという感じ。
 
次の日に呑んでも、味わいに少し変化はあるものの、やっぱり辛い。当たり前ですよね。超辛口なんだから。

鰹の塩たたきや、ホッキ貝のバター焼きあたりなら、そこそこ行けるのですが、まだ、やっぱり尖ってる。
う~~~~~ん。
友達は、このお酒は香りがそこまで強くないから、燗酒にして楽しんだって言っていましたが、私は、結局、途中から冷蔵庫に入れるのを止めて、常温放置することに。

そんなこんなで、開栓から、約4週間後の昨日。
久しぶりに、雨後の月の味を見てみたところ、雨後の月らしい甘みと苦味に、程よい酸味がバランスよくフルーティーな味わいに変身。

辛さと心地良い苦味と一緒に感じるぶどう感、そしてキリッとした後口。
優しい華やかさで、雨後の月らしさもちゃんと感じる、バランスの良い辛口お酒に。

全部で1合、残ってるかどうかっていう量だったのですが、やっとたどり着けた、引き出させた味わいに大満足。
こごみのクリームチーズ和え、山椒風味にぴったんこ!

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日本酒好きの人の中には、
「日本酒にはまずい酒はない!あるのは、うまいか、口に合わない酒だけだ」
っていう人もいるんですが、その理由は、こういうところ。

要するに、味わいが、飲酒温度や保存状態、食事、器、その他のシチュエーションで変わるので、美味しいところを探り当てなきゃいけない時があるのです。

そう思うと、日本酒って、かなり面倒くさいお酒なのです。
でも、その過程も面白いし、もし、求める味にたどり着けたなら、大変だったり、面倒くさく思ったことも忘れちゃうのです。

◆ ◆ ◆

因みに、毎年11月頃に、雨後の月の八反錦、純米大吟醸が出るのですが、昔、相原さんに飲み頃を伺ったところ、
「正月が過ぎてから呑め」
と仰っておられました。

結局2本買って、開栓時期を変えてみたんですが、
発売直後は、スッキリとした味わい。淡麗なお酒が嫌いじゃない私には、美味しく感じます。

もう一本は、1月の終わり頃に開栓したところ、八反錦のフルーティーな甘味が膨らみ、でも、どこかスッキリとしたいい塩梅に。

そう思うと、八反錦の特徴を踏まえたアドバイスだったんかなって、今なら思います。

…ということで、次から超辛口も、寝かせてみようかなって思いました。


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