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夏に近づく
長い回想の中にいたように思う。
自分と対峙して生還するような時間を過ごしていた。
ちゃんと生きて還れたかな。
今の自分を迎え入れるために、自分の過去と、手を振って別れたような気がした。
また会えるのかもしれないし、もう会えなくても、きっと寂しがったりしない。
わたしはわたしの体験を、自由にしてあげたかったんだよ。
大事に抱えていたんだよ。
たぶん、体験を引き止めておかなくても、わたしの心の仄暗さは消えて無くならないと思う。そのことを、信じたかったんだな。信じるのが怖くて、手放せずにいたんだね。そうだな、同時に、光も失くしてしまう気がしたんだね。わたしの光も、わたしの痛みも、大丈夫だよ一緒にいてくれる。
わたしは随分、わたしに優しく話しかけてくれるようになった。
今夜の満月を見ている。夏の夜の空気を感じる。
夏の夜が好きだ。夏が好きだ。
わたしはわたしの時間を、きっと生きてゆけるだろう。
まだ祈るような気持ちだけど、少しずつ確かな歩みになってゆく。
今日も、見てくれたあなたは本当にありがとう。
今日も、生きていたわたしは本当によかったね。
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