オンライン診療における本人確認と認証(2)〜対面診療における資格確認
前回は、医師等資格確認検索の話をしましたが、今回は従来の対面診療(オフライン診療)、特に診療所(クリニック)における資格確認を見てみましょう。
対面診療(オフライン診療)での資格確認
診療所(クリニック)に出向いた際、対面する医師の資格を確認したことがあるという人はほとんどいないと思います。そこには、医療機関が開設・運営されている以上、そこで働く人が医師であることは、信頼できる誰かが医師資格を確認しているはずという暗黙の前提があります。では、私たちは何を信用しているのでしょうか。
医師個人の開業と資格確認
医師が個人として診療所を開設しようとする場合、原則は、その診療所の管理者は臨床研修(医師法第16条の2第1項)を修了した医師(臨床研修等修了医師)である必要があるため(医療法第8条)、開業時に、保健所による臨床研修修了登録証(≠臨床研修修了証)と医師免許証の原本確認が行われます。
例えば、東京都の診療所の開設手続を見てみると、管理者や診療に従事する医師について、「医師又は歯科医師の臨床研修修了登録証の写し及び免許証の写し」が要求されています。
【提出書類】
1. 診療所(歯科診療所)開設届
2. 管理者の医師又は歯科医師の臨床研修修了登録証の写し及び免許証の写し
3. 管理者の履歴書
4. 診療に従事する医師、歯科医師の臨床研修修了登録証の写し及び免許証の写し
5. 業務に従事する助産師・薬剤師・歯科衛生士等の免許証の写し
6. 土地及び建物の登記事項証明書
7. 土地又は建物の賃貸契約書の写し
8. 敷地の平面図
9. 敷地周辺の見取り図
10.建物の平面図
11.エックス線診療室放射線防護図
12. 診療所(歯科診療所)への案内図
なお、法律上は、臨床研修修了登録証の写しの提出があれば、医師免許証の写しの提出は不要です(医療法施行規則第4条第1項)。臨床研修を修了したことは医籍に登録されますし(医師法第16条の6第1項)、臨床研修終了登録証の交付主体と医師免許証の交付主体は同じ厚生労働大臣(同条第2項、第6条第2項)なので、両方を提出させることは意味がないように思われます。
臨床研修修了登録証と医師免許証
医療関係者以外の方が臨床研修修了登録証や医師免許証を見る機会はほとんどないと思いますが、どのような書面なのでしょうか。
まず、医師免許証ですが、以下をご覧頂けると分かるとおり、医師の氏名、生年月日と医籍の登録番号の記載があります。また、医籍に登録された日も医師免許証に記載されています。一方、都道府県の記載はあるものの、いわゆる本人確認の3点セットの1つである住所の記載はありません。
次に、臨床研修修了登録証ですが、基本的に記載事項は変わりません。
従って、氏名と生年月日で特定される人物が医師免許を持っていることまでが、医師免許証又は臨床研修修了登録証で確認できることになります。ただし、特段の偽造防止の技術的な措置はとられていないため、提示された医師免許証等の原本であるかを確認するのは困難です。記載事項のほとんどは医師等資格確認検索で得られる情報であり、当時の厚生労働大臣や医政局長の氏名は公知ですので、偽造は比較的容易と思われます。
従事している人物と届け出られた医師の同一性
以上のとおり、診療所で診療にあたる医師の資格確認は保健所が行っており、私たちは保健所の確認を信用していることになります。しかし、保健所は、医師として届け出られた者の資格確認は行っていますが、現に診療所で診療行為を行っている者が届け出られた者と同一であるかという「本人確認」は行っていません。
そして、私たち患者も「本人確認」は行っていません。次回は「本人確認」を巡る、対面診療とオンライン診療の違いを見ていきたいと思います。
(つづく)