受託開発の財務指標どこみてる?
こんにちは。エム・エー・ディー代表の高橋守です。
今回は、事業拡大を目指す受託開発会社が留意すべき財務指標についての話です。
1. 受託開発ビジネスの財務的な特徴
労働集約型の特徴
高い人件費比率
このビジネスモデルは専門的な技術者やプロジェクトマネージャーに依存しており、それに伴い人件費が主要なコスト要因となります。特に高度な技術を要するプロジェクトでは、高い人件費が発生しやすいです。スケールの難しさ
労働集約型ビジネスはスケーリングが難しいため、事業拡大には新たな人材の確保と訓練が必要です。人材の質と量がプロジェクトの成果と収益に直結します。
キャッシュフローの特徴
プロジェクトベースの収益
収益は主にプロジェクトの完了と納品に基づいています。これにより、キャッシュフローには時間差が生まれやすいです。遅延リスク
プロジェクトの遅延はキャッシュフローに直接影響を与え、企業の財務状況を圧迫する可能性があります。
プロジェクト管理の特徴
コスト管理
プロジェクトの予算を適切に管理し、予期しないコスト超過を避けることが重要です。収益性の評価
各プロジェクトの収益性を評価し、効率的なリソース配分を行う必要があります。
このような特徴から、事業拡大の際には以下のような課題が発生します。
2. 事業拡大の壁
人員増加のための採用とトレーニング
受託開発会社では、プロジェクトの規模と数を増やすために追加の人材が必要です。労働集約型の業種では、生産性やサービスの提供能力を高めるために直接的な人手が必要です。
必要運転資金の増加
人材を増やすと、それに伴う給与、トレーニングコスト、その他の関連コストが増加します。これにより、より多くの運転資金が必要となってきます。
キャッシュサイクルの長期化
新しいプロジェクトやプロジェクトの大規模化により、給与や運営コストが先行して発生します。また、外部委託先への支払いなどもあるため、キャッシュフローにギャップが生じやすくなります。
以上、受託開発会社が成長する際に直面する一般的な課題を上げました。これらに効果的に対処することが、企業の持続可能な成長と安定性を保証する鍵となってきます。
3. 管理すべき財務指標
➡ 売上高総利益率 (Gross Profit Margin)
売上から直接コスト(当社の場合は外部委託費)を引いたものを売上で割ったものです。高い売上高利益率は、外部委託管理が効果的であることを示し、人材増加によるコスト増を吸収できます。
➡ 労働生産性 (Labor Productivity)
従業員一人当たりの付加価値額であり、付加価値額を従業員数で割って示します。労働集約型ビジネスにおいてはこの数値を高める必要があります。
➡ 営業運転資本回転期間 (Working Capital Turnover Period)
事業を運営するために、売上高の何ヶ月分の運転資金が必要かを示します。特に人材増加の際には、十分な運転資金が求められます。
➡ EBITDA有利子負債倍率 (EBITDA-Interest-Bearing-Debt-Ratio)
企業の負債返済能力を評価する指標で、有利子負債をEBITDAで割って示します。受託開発会社が成長のために借り入れを行う場合、この比率に注意を払わねばなりません。
➡ 自己資本比率 (Capital Adequacy Ratio)
総資本のうち純資産の占める割合を示します。外部資金に頼るリスクを減らしながら成長を図るための指標として重要です。
➡ 労働分配率 (Labor Share)
付加価値に占める人件費の割合を示します。労働集約型ビジネスにおける人件費の割合と効率性を評価し、収益性と人件費のバランスを把握するために利用します。
これらの財務指数を適切に管理することで、受託開発会社は売上を増やしつつ、リスクを管理し、財務の安定性を保つことができます。
今後のnoteでは、これらの財務指標について、当社のKPI、ベンチマーク企業の参考値、上場企業の参考値などを踏まえ、受託開発会社のあるべき財務指標について記していきたいと思います。