4月のベスト本 『ハリケーンの季節』
今月のベストは「ハリケーンの季節」でした。
文学ジャーナリスト賞[メキシコ]受賞、国際文学賞[ドイツ]受賞、国際ダブリン文学賞最終候補、全米図書賞翻訳文学部門候補、ニューヨーク・タイムズやガーディアンなど有力紙誌による年間ベストブック選出などなど、めちゃくちゃ評価されている作品です。
またなんと言っても、今年の日本翻訳大賞の最終候補作品(5月中旬に大賞の発表あり)でもあります。
日本翻訳大賞という賞はとても興味深く、作品そのものの評価ももちろんあると思いますが、それ以上に、翻訳の凄さ素晴らしさを評価する賞です。
私は日本翻訳大賞にノミネートされたというXのポストでこの作品を知ったのですが読んでみてその文体に驚きました。
改行が一切なく、びっしりと文字が埋まっていて、文学作品としてはかなり異例な作りです。
この作品は紙媒体で読むことにとても意味があると感じます。
物語の内容は
舞台は現代のメキシコのある村。
その村で女性の死体が見つかる。
その女性は村人から「魔女」と呼ばれ、村から隔絶した生活を送っていた。
その女性はどのように生きてきたのか。
なぜ殺されなければならなかったのか。
魔女に関わりのある5人の視点からの語りにより、その女性の生活がそして、メキシコ社会が浮かび上がる
というものです。
大雑把に言うと「羅生門スタイル」の作品です。
この作品の魅力はいくつもありますが
一つは上記の文体にあります。
改行が全くない独白であり、文章間での表現方法の違いにより、会話部分と思考部分とが描き分けられていたりと、翻訳の素晴らしさも堪能できます。原語でどのように書かれているのか興味がわきます。
内容もメキシコらしい暴力とマチズモとが渦巻く、汗のヌメヌメした生々しい感じが伝わってきます。私はメキシコの人はこの作品を読んでどのように感じたのだろうかと「アメリカン・フィクション」的な視点で考えもしました。
さらにもう一つ素晴らしい点として、この本の翻訳者は、cinemactif関係者のお母様であるということです!
訳者のあとがきにはその人の名前も!
ぜひ確認してみてください!
日本翻訳大賞を是非とって欲しい!