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生活者の毎週の物価感・景況感・生活気分で2024年を振り返る
2024年は能登半島地震や南海トラフ地震臨時情報の発表、平均気温が統計開始以降で最高となるなど、災害や異常気象が多く発生しました。物価上昇も続き、コメが品薄・高騰した「令和の米騒動」は記憶に新しいと思います。また、インバウンド需要の増加やパリオリンピック・パラリンピックでの日本選手の活躍といった話題や、日本での衆院選、米大統領選挙など世界的な“選挙イヤー”でもありました。
そんな2024年の消費動向や生活マインドをウイークリー生活者定点観測調査「Macromill Weekly Index」のデータで読み解きます。
今回も、マクロミル・グローバルリサーチ・インスティテュート シニアフェローの熊谷信司が調査を分析、解説していきます!
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身の回りの物価は年間を通して上昇実感が継続。2025年初旬の予想も上昇
物価上昇が続いた2024年。生活者はどのように捉えていたのか見ていきましょう。【図表1】
「物価変動指数(対前月)」は前月と比較した物価変化で、「予想物価指数(2~3カ月先)」は2~3カ月先の物価変化です。
どちらも年間を通じて110前後で推移しており、これは生活者が年間を通じて物価の上昇を実感し、さらに今後も続いていくと見込んでいることを示しています。
少し詳しく見ると、「物価変動指数(対前月)」は3~4月から上昇傾向で、新年度からの多くの商品・サービスの値上げや円安進行が影響しました。物価上昇感はその後夏にかけてやや低下しましたが、米の値上がり実感がピークとなった秋や、野菜やガソリン代などが上昇した年末には再び上昇しました。「予想物価指数(2~3カ月先)」も同じ傾向で、年末はやや高めに推移しました。
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「物価変動指数」は前月と比較した物価変化、「予想物価指数」は2~3カ月先の物価変化について、それぞれ以下の点数を付与したときの加重平均値
「かなり上がった/上がると思う(120), 少し上がった/上がると思う(110), ほとんど変わらない/変わらないと思う(100), 少し下がった/下がると思う (90), かなり下がった/下がると思う(80)」
景況感、7月の株価高値記録と連動し上昇するも年末にかけて悪化
続いて、生活者の身の回りの「景況感」を振り返ります。【図表2】
「現況指数」(アンケート回答時の身の回りの景況感)は、円安と株価下落によって4~6月に悪化、株価が高値を記録した7月初めに再び上昇。7~9月の株価下落では4~6月の下落時より影響は少なかった、というのが円安と株価の視点で見た際の大きな流れです。
また、11月の石破内閣発足後の景況感は上下変動がありつつも、年末にかけて若干低下しました。
「先行指数」(2~3カ月先の景況感)は1~3月が特に高く、「現況指数」よりも5ポイント程度高い週も多くあったことから、景気の先行きが相対的に高めだったことが分かります。しかし、4月以降に大きく低下し、6月後半頃からは再び上昇しました。11月から年末にかけては再び低下し、2024年最終調査である12月第4週は39.6まで低下しました。2025年の年明け以降の景気が悪化すると予想する生活者が増加したことが分かります。
この指標は生活者の身の回りの景況感であり、国内の経済の動きのほかにも、家計の所得の状況や身の回りの物価の動き、あるいは世界(諸外国)の情勢など、さまざまな要素が影響していると考えられます。
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現在と2~3カ月先の景気意識において、以下の点数を付与したときの加重平均値
現況指数「良い(100),やや良い(75),どちらとも言えない(50),やや悪い (25),悪い(0)」
先行指数「良くなる(100),やや良くなる(75),変わらない(50),やや悪くなる(25),悪くなる(0)」
災害やスポーツイベントが「生活気分」に連動
最後に「生活気分」について2024年を振り返ってみましょう。【図表3】
Macromill Weekly Indexでは「1週間の気分」を8つの選択肢で測定しており、「うれしかった」「楽しかった」「落ち着いた」「わくわくした」の4つの平均値をポジティブ気分(水色棒)、「悲しかった」「腹が立った」「憂鬱だった」「不安だった」の4つの平均値をネガティブ気分(ピンク色棒)で示しました。ポジ・ネガ インデックス(赤い折れ線)は、ポジティブ気分からネガティブ気分を引いた差分です。
2024年元日に発生した能登半島地震によって多大な被害が出たことから、1月は不安や悲しみが上昇。例年の正月シーズンとは大きく傾向が異なる結果となりました。ゴールデンウィークと夏休み・お盆シーズンにかけては、例年通り「楽しかった」という気分が上昇し、ポジティブ気分が全体的に高まりました。しかし、夏には楽しい気分だけでなく、相次いだ台風や豪雨、そして8月8日に発表された南海トラフ地震臨時情報によって「不安だった」「憂鬱だった」などのネガティブ気分にも高まりが見られました。
当指標は、その他にもさまざまな社会の出来事や報道に応じた生活者の反応が見られます。2024年は明るいスポーツニュースが多く、パリ五輪が開幕した7月下旬以降や、大谷翔平選手の米大リーグ史上初の「50-50」を達成した9月下旬と、所属するドジャースが優勝を果たした10月下旬、そして、日本プロ野球で横浜DeNAベイスターズが日本一となった10月末から11月上旬などには、「わくわくした」が上昇し、ポジティブ気分全体の高まりにも好影響を与えました。このように、スポーツイベントと連動した動きが見られる1年間でした。
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「ポジティブ気分」=「うれしかった」「楽しかった」「落ち着いた」「わくわくした」の平均値
「ネガティブ気分」=「悲しかった」「腹が立った」「憂鬱だった」「不安だった」の平均値(グラフでは負の値で表示)
「ポジ・ネガ インデックス」=「ポジティブ気分」-「ネガティブ気分」
2025年も継続的に生活者の「今」を発信します
2024年は、災害、物価上昇や株価変動、所得の壁の議論、スポーツニュース、戦争・紛争など、生活や消費マインドに影響を与える出来事が多い1年でした。Macromill Weekly Indexでは、2025年も消費動向や生活者の気分・感覚などを継続的に調査し、速報性高くお伝えしていく一方、過去の蓄積されたデータとの比較や振り返りなども行ってまいります。2025年も、当調査結果に引き続きご注目ください。
【連載】Macromill Weekly Index 消費動向を読み解く
12月 生活者の毎週の物価感、景況感、生活気分で2024年を振り返る
11月 生鮮野菜・果物への値上がり実感が急上昇、3週間で10ポイント増加
10月 新内閣発足や衆議院選挙、政治関心が上昇の一方で景況感には影?
9月 コメ不足や豪雨による生活者の反応は?