グループ初のサステナビリティレポートを公開!発行人にその想いを聞いてみた。
2022年11月、マクロミルグループとして初となる「サステナビリティレポート2022」を公開しました。レポートでは、マクロミルグループの「的確な消費者インサイトの提供により、持続可能な社会の実現に貢献していく」という姿勢とともに、サステナビリティに対する基本方針とマテリアリティ、ステークホルダーに向けた様々な取り組みを紹介しています。
このレポートの発行に尽力した、執行役員で経営戦略室長の高橋亮(たかはし・りょう)に、マクロミルグループのサステナビリティへの取り組みやレポート発行に至った経緯について話を聞きました。
ポテンシャルの高さを魅力に感じ、マクロミルへの入社を決意
―マクロミルへの入社の経緯を教えてください。
外資系の証券会社に17年間在籍しており、その中でマクロミルと出会い、非常に面白い会社だと思いました。2014年、マクロミルはLBO(※)によって、東証一部上場を廃止していますが、この株式非公開化のプロジェクトに証券会社側の人間として携わりました。マクロミルがオンラインリサーチに特化して成長してきたストーリー、市場プレゼンス、将来に向けたポテンシャルの高さは魅力的で、再上場は遠くない将来に、必ず視野に入ると思いましたね。
実際に再上場のご提案を開始した中で、マクロミル側の人間として一緒にやりませんか?とお声がけをいただきました。当時のグローバルCEOであったスコットや、現在のグローバルCEOで自分と同じ年生まれの佐々木さんとも意気投合し、これは入社するしかないと心を決めました。
※Leveraged Buyoutの略。譲渡企業の資産や今後期待されるキャッシュフローを担保として、譲受企業が金融機関などから資金調達をして買収する方法
―入社後は、どのようなお仕事をされているのでしょうか。
マクロミルの再上場に向けたIPO(※)準備の責任者として着任し、過去の経験から同時にM&Aの推進役も任されました。他社ではあまり見ない形ですが、IPO後もIR部門とM&A統括の責任者という二足のわらじを履き、前者としては会社の目指している姿や方向性を伝えつつ、後者としては中長期的な見地を持って数々のM&A案件を進めてきました。
2022年7月からは経営戦略室の室長という立場で、より幅広い観点から会社が向かうべき方向を見定めていくことになりました。チャレンジングですが、とても面白く感じています。
会社に新しい方向性を生み出すためには、その方向性を決めることと同じくらい、それをどのように社内外に伝えていくかが重要です。そのため、経営戦略室の中に広報部門を取り込むことにしました。意思決定機能とその伝達機能の両方の機能を持った組織が実現できており、良い環境が整っていると思います。
※Initial Public Offeringの略。未上場企業が、新規に株式を証券取引所に上場し、投資家に株式を取得させること
―業務領域が広く且つ重要な役目を担われていますね。
社内では重要責務を担う役員であると同時に、ワイン通としても知られていますよね(笑)。
美味しいものを食べ、美味しいお酒を飲むことが最高のストレス解消策です。ことにワインは趣味の域を超えてきているかもしれません。ゴルフもしていたのですが、子育て中の土日の使い方の優先順位を考えたときに、ゴルフよりもワインをとりました(笑)。家族と過ごす時間を何よりも大切にしていますが、一人で過ごす時間も大切なので、今でも月に一度はワイン学校に通っています。ワインは人みたいなもので、時間と共に熟成して味わいや魅力が増していきます。そんなワインと向き合うのがとても好きで…と、話続けると終わらなくなるので、この辺でやめておきます(笑)。
事業の推進が、社会のサステナビリティへとつながっていく
―では本題に移って、マクロミルグループのサステナビリティの考え方について教えてください。
マクロミルグループがサステナブルな社会づくりに貢献している、と思う方は少ないかもしれませんが、実は私たちの事業そのものが、社会のサステナビリティ構築に直接的に貢献できていると考えています。
それには二つの軸があり、一つは顧客企業、もう一つは消費者です。世の中には様々な企業によって、あらゆる商品やサービスが生み出されています。ただ、本当に消費者が求めているものを的確に生み出せているかというと、必ずしもそうではない場合もあります。また、消費者はこういうものが欲しいと思いながらその思いが企業に伝わらず、出来合いのもので我慢していることも多いように思います。
その時に両者をつなぐのが、私たちマクロミルグループです。私たちは、自社で保有する消費者パネルから得られる多様なデータや的確なインサイトを、顧客企業に届けることを生業としています。マクロミルグループを通じて、消費者が本当に求めているものを顧客企業に伝えていくことで、消費者が本当に欲しいと思っている商品やサービスが提供されるようになります。そうすると顧客企業は売れないものを生み出すといった無駄が無くなっていく。消費者も本当に欲しいものがないために、似たものをあれこれと買うといった無駄がなくなっていく。
私たちが事業を推進していくことで、こうしたムダ・ムラ・ムリの削減が広がっていくと考えており、これをあらゆる業界、あらゆる産業で進めることができます。これが、私たちの事業の推進が社会のサステナビリティの構築に直接的に貢献できると思う理由です。マクロミルグループが存在する社会的意義はここにあると考えていて、私たちはこれを「価値創造モデル」と呼んでいます。
―マクロミルグループとしてサステナレポートを発行するに至った理由を教えてください。
世の中に対してこのモデルを訴求しようと、アニュアルレポートに掲載して情報発信を開始しましたが、それだけでは不十分だと思っていました。折しも、東証のプライム市場への移行に際し、環境領域に関わる取り組みを開示することが求められ、また、同時に社内においても、そうした機運の高まりを感じました。そこで、マクロミルグループが社会の持続可能性に貢献できていることを前面に押し出したレポートを作りたいと思い、サステナビリティレポートを発行することにしました。
サステナビリティへの取り組みは、一部の部門だけで行えるものではなく、全社的な関与・検討が必要です。そのため、全社的な部門横断組織として、サステナビリティ委員会を立ち上げました。委員会メンバーには、管理部門や広報部門、IR部門をはじめ、営業部門からも参画を求め、全社的な取り組みとして進めていくことにしました。
2021年の秋にこの委員会を立ち上げ、一年後のレポート発行を目指しました。まずは海外も含めて、様々な業界の企業がどのような取り組みを行い、どのような発信をしているのか、幅広く調べるところから始めました。その上で、私たちがこれまでに取り組んでいること、今後取り組むべきことを検討し、全体的なストーリーも組み立てていきました。必要なあらゆるデータも揃えてドラフトを作成し、取締役や執行役、執行役員の皆さんなどからの様々なアドバイスも取り入れ、作りあげました。
―レポートを発行するにあたって、何か気づきはありましたか。
サステナビリティへの取り組みに、非常に多くのエネルギーと時間、そしてコストをかけている企業がこんなにもあるのかというのは大きな気づきでした。自分が担当ではない立場だと、なかなか気づけなかったと思うのですが、いざ自分がリードしてレポートをまとめる立場で見てみると、圧倒されましたね。
一方で、マクロミルグループは、事業を追求することが社会のサステナビリティ構築につながるという考えを、改めて強くしました。事業の拡大を追求しながら、社内外に丁寧にコミュニケーションを行っていくことが、私が直接的にできることだと思いました。
人材こそが最も重要な資源、データネイティブな発想を持つ人材が強み
―マクロミルグループとして特に注力している取り組みを教えてください。
マクロミルグループのサステナビリティにおいて、顧客企業と消費者が車の両輪だとすると、これを走らせるエンジンは「人」です。人材こそが最も重要な資本であり、人的資本に対しては、特に注力して取り組んでいます。
そのポイントは三つあり、一つ目は「多様性」です。社会に対してよりクリエイティブな発想を求められる中、社員の多様性は欠かせません。多様性をいかに高めていくかに今までもフォーカスしてきましたし、今後も続けていきます。
二つ目は、「新たな付加価値の醸成にチャレンジするカルチャー」です。多様性に加え、このチャレンジするカルチャーを作り出すことで、既成概念にとらわれずに物事を変えていけると思います。
三つ目は、「データネイティブ」です。先の二つはマクロミルグループではなくても満たすことができると思いますが、データネイティブは私たちだからこそのポイントです。
マクロミルの主力事業であるリサーチビジネスにおいては、リサーチ結果からインサイトをいかに読み解くか、そのデータをどのようにハンドルするのかが重要となりますが、そのプロセスにはノウハウが必要です。いま世の中でDX化の流れが強くなっていますが、この本質は「データに基づく意思決定」を加速することにあり、データを扱うノウハウなしでは進められないものだと思っています。DX化の流れの中で、一般的には、データを集めて何かを導き出すことは新しい取り組みなのかもしれませんが、リサーチビジネスを20年行ってきたマクロミルグループにとっては、継続してやってきたことです。
すなわち、マクロミルグループにはデータに長く携わってきた人材、いわば「データネイティブ」な社員が多く在籍しており、それが私たちの強みだと思っています。社員のデータを取り扱うスキルを高め、経験を蓄積していくために、度重なる研修を実施し、ノウハウを身につける場の提供を手厚くしており、今後もその取り組みを加速させていく方針です。
サステナビリティの取り組みは、アップデートし続けていくことが重要
―サステナビリティの取り組みを社内に浸透させていくために、どのようなことをされているのでしょうか。
この取り組みは一部の人だけ行えばよいものではなく、全社員が意識して取り組んでいく必要があります。「レポートを発行したから読んでおいてね」という話ではなく、社員が自分ごと化し、日常化していくことが重要で、それが実現できるコミュニケーション方法を考えていかなければなりません。社員が自分ごと化できると、さらに誇りを持って仕事ができるようになると思いますし、仕事のモチベーションの向上にもつながっていくと思います。
具体的な施策として、例えば毎日社員が閲覧するWeb社内報の中で定期的に特集を組み、社員からのフィードバックがあればそれをさらにまたハイライトしていくような循環を生み出したいですし、その様子を社外にも発信していきたいと思います。
―今後マクロミルグループとして、サステナビリティへの取り組みをどのように推進していくのでしょうか。
マクロミルグループが事業を推進していくことは、社会の持続可能性を高めることに直接つながっている。これを社内外の多くの人に知ってもらうことが最初に目指すべき方向だと思います。その第一弾がサステナビリティレポートの発行であり、このインタビューのようにレポートの発行に関わる情報発信は、まさに目指すべき方向に沿ったものです。
社外の方から、「サステナビリティレポートを見たよ」と声をかけていただくことも増えたのですが、私たちが世の中に放ったメッセージから、どういったフィードバックがあるのかを把握することも必要です。得られたフィードバックを踏まえて、今後も継続して取り組むべきこと、変えていかなければならないことを確認したいと思います。
また、世界中でこうした取り組みが加速している中、他社の施策やその変化にもキャッチアップし続ける必要があります。まもなく、来期に向けた第二期のサステナビリティ委員会をキックオフする予定ですが、改めて世の中の動きを調べ、その変化や発展を踏まえて、マクロミルグループとしての取り組みをアップデートしていきたいと思います。この取り組みこそ「サステナブル」に続けていくべきだと思うので、全力で挑戦していきたいですね。
―ありがとうございました!