成功のカギは「従業員の声」。リサーチを活かした社内報づくりや想いをインタビュー!
近年、テレワークを含めた働き方の多様化が進み、社内コミュニケーションに関する課題を抱えている会社は少なくありません。マクロミルグループでは企業文化を醸成するための社内コミュニケーション活動を重視。グループ内における出来事の深掘りやビジュアルにこだわり、人と組織の魅力を社内外に伝えています。
マクロミルでは社内報アワードでグランプリ(※1)を受賞した「ミルコミ」を通して、グループ内のコミュニケーション活動の強化に努めています。今回はグランプリを取れた秘訣について、「ミルコミ」の編集者 広報・ブランドマネジメント部 池田牧子に話を聞きました。
(※1) ウィズワークス株式会社が主催する「社内報アワード」は、全国規模の社内報企画コンクールと、審査で決した優秀企画の表彰イベントから成る、年に1度の社内報の祭典。社内報「ミルコミ」は、2022年度経団連推薦社内報審査において、雑誌・新聞型社内報部門、季刊(単独社内報)の1位の作品に贈られる「優秀賞」を受賞。
社内報「ミルコミ」は従業員目線でグループの“リアル”を伝える
―社内報「ミルコミ」のテーマ、役割は何ですか。
「ミルコミ」は、「マクロミルの“リアル”を伝える」をコンセプトに発行している社内報です。マクロミルグループ内の出来事の裏側にあるエピソードや関わる従業員の思いを深掘りし、分かりやすく編集して伝えることで組織の魅力を社内外に伝えることを目的としています。
よりオープンなコミュニケーションを実現するために、創業20周年を迎えた2020年からWeb版社内報の社外公開を開始しました。人事・採用イベントや投資家向けイベント等の場では、紙の冊子版もお配りしています。また、制作にあたっては、従業員の自由な発想を大切にするために、企画から取材、編集、制作までの全工程を社内で行っています。
メインの読者である従業員に興味を持って読んでもらうためには、その声を集め反映することは欠かせません。そのための工夫をいくつか行っています。
双方向のコミュニケーションを大事にし、社内の風通しの良さを伝えたい
―「ミルコミ」の役割や目標を果たすため、大切にしていることは何ですか。
「ミルコミ」はグループの“リアル”な魅力について発信するメディアです。そのためには、読み手である従業員の声をしっかりと集めること、従業員のニーズに沿った視点で編集することが重要です。なお、声を集める際には「Questant(以下、クエスタント)」 を使用しています。クエスタントはマクロミルが開発したセルフアンケートツールで、社内コミュニケーション施策のために広報部門では頻繁に活用しています。
企画段階では、どんなことを取り上げて欲しいかをアンケートを通して聞く場合もありますし、次号で取り上げる特集テーマについて従業員がどう思っているのか、どのくらい理解度を示しているか、意識調査を行うこともあります。
例えば、そのアンケート結果を特集の冒頭に掲載することで、同じ目線の従業員がどう思っているのかが可視化され、自分ごと化して物事を捉えることで気持ちや感情が動くと考えています。また、自分が協力したアンケート結果をきっかけにすればテーマへの理解が深まりやすくなると思います。自分ごと化して興味をもって読んでもらえるように、従業員の声を聞くことに加えて、アンケート結果の活用方法にもこだわっています。
また、当社のCTO(最高技術責任者)が就任した際の所信表明の後の社内アンケートでは、従業員から「今後の期待が高まりました」「これからご一緒できるのが楽しみ」などの感想が寄せられました。なかには「CTOのお話をもっと聞きたい」という声を反映し、CTOに寄せられた質問に回答する企画を実施しました。
その際、当時はコロナ禍で10名前後が集合し話し合うということが難しかったため、紙面上で質問した従業員の顔と名前を出して紹介することでCTOと対話をしている感を出しつつ、聞き手と話し手の双方向性を大事に社内の風通しの良さを伝える工夫をしています。
―過去の大変だったことを教えてください。
アンケートを通して従業員からの「ミルコミ」に対する改善点として多くあがっていた点が、文字量の多さでした。毎回試行錯誤するポイントでもあるのですが、フォントサイズのアップ、ロングインタビューの際は画像を意識的に挿入、トピックスを分けて文章を短くしたり、内容が一目でわかるように見出しを入れたりするなど、文字量を減らす工夫を行っています。その結果、文字量に対する指摘は減っていますし、冒頭で紹介した社内報アワードでは「文字量を減らす工夫がうかがえる」と評価いただくことができました。
その他ですと、やはりアンケートの回答数を増やすことでしょうか。アンケートに答えてもらう人の気持ちになって質問文や回答項目を作成するようにいつも工夫をしていますね。例えば、回答しやすいけど一定の母数が必要な定量(※2)の質問を前述し回答を必須とする代わりに、回答の負荷となりやすいFA(※3)は問数を極力少なし、後述して任意回答とするなど気を付けています。また、回答時間の目安は最大で3分とし、所要時間を明示することで回答意欲の促進を図るなどもしています。
(※2) 定量調査のことで、数値化できるデータを扱う調査手法。選択肢回答形式のアンケート調査などがある。取得したデータを数値化して分析することが可能となり、全体の構造や傾向が把握しやすい。
(※3) 自由記述(FA:Free Answer)のことで、アンケート調査における自由記述には、「言葉」で答えてもらうものと「数値」で答えてもらうもの。
従業員のニーズや意識を把握するには、インサイトの発掘が大切
―「声」を拾うことの大切さとは、どんなところにあるかを教えてください。
マクロミルはデータを生業とするマーケティングリサーチ会社です。広報としてもアンケートを通して特に定量と定性(※4)の2つの視点で従業員のニーズや意識を把握し継続的にインサイト(※5)を得ています。その情報を基にニーズに対して応えていくように努力しています。
定量データは、「クエスタント」でアンケートを作成すれば簡単に数値で測ることができるので、社内報に限らず、イベント、企画事の従業員の満足度を測る際にとても便利です。社内報の過去の特集記事において満足度を比較したり、改善点を見つけたりなど、継続的に数値で追っていくことはとても重要です。
また、「ミルコミ」発行後の感想を目的としたアンケート実施した際に、その定性情報からは想定通りの感想があれば、企画段階で想定していた読後感との答え合わせをすることもできます。
(※4) 定性調査のことで、グループインタビューなどの形式で言語情報を中心に収集して分析する調査手法。個人の意見の細かいニュアンスや、深層心理の情報を把握しやすい。
(※5) インサイトとは、直訳すると「洞察」、「本質を見抜くこと」を指すが、マーケティングにおけるインサイトとは「消費者インサイト」を指す場合が多い。
読後感と継続的に従業員の声を集めることが重要
―ミルコミ編集者が考える「社内報、成功のカギとは?」を聞かせください。
従業員が「ミルコミ」を読んだ後に、どういう気持ちになってもらいたいか?を毎回考えていますので、社内報で大事なのはこの「読後感」だと思います。例えば、経営層から発信された情報を従業員へ広く伝えたいという目的で記事を作成する時は、わかりやすく伝えることも重要ですが、一番はどう感じて受け取ってほしいか?を考えることが大切です。
グランプリをいただいた2023年の社内報アワードでは、「企画の意図と、紙面上の表現がマッチしている。」と評価いただきました。これは毎回、アンケート結果を参考にし、企画のねらいとした読後感を持ってもらうため表現方法を、編集部の一人ひとりが常に意識して試行錯誤してきた成果だと感じています。
こうしたアワードでの受賞や評価はとてもありがたいことですが、ミルコミの本当の成功とは、従業員にマクロミルグループの魅力や社会的価値を感じてもらい、この会社で力を発揮し続けたいと思ってもらうことです。毎年新卒・中途入社で新しく入ってくる方々も多くいる中、そのインサイトは変わり続けると感じています。引き続き従業員の声を収集し、求められていることに合わせて発信を行うことで、結果としてマクロミルグループが今以上に良い組織になっていくことに貢献していけたらと思っています。
番外編~クエスタントの便利な使い方~
―「クエスタント」の便利だと思う機能を教えてください。
以前「ミルコミ」Vol.168特集で、「マクロミルPHOTO CONTEST #私のとっておきの一枚」という企画をした際にアンケートを通じて従業員から個性あふれる画像をスピーディーに収集することができました。このようにパソコン以外のスマホやタブレットといったデバイスでも画像データの授受が簡単です。
また、アンケート結果画面上で集計も可能で、単純集計(※6)以外に、下の図のように入社年数ごとにクロス集計(※7)を行えるのも便利です。例えば、アンケート画面の右下のタブ[クロス集計]をクリックすると操作盤が表示されて、各質問の左に[ここに質問をドラッグ&ドロップ]という枠が表示されます。操作盤からその枠にアイテムをドラッグ&ドロップすることで、属性、(性別、年齢別)ごとにアンケート結果を分析できます。
その他、アンケートの回収中であっても、リアルタイムにアンケート結果を確認することができるので、経営層に一時報告する際にシェア用のURLを発行し共有することでアンケート結果の速報値を双方で把握することもできます。
(※6) 単純集計とは、質問ごとに、どれくらいの人がその質問に答えたのか(n数)と、その質問に答えた人達の回答比率(%)や平均値などを求めること。
(※7) 単純集計で明らかになった値を、性別や年齢、地域、他の質問などと掛け合わせて、よりデータを深掘りしていくことがクロス集計。
―本日はありがとうございました!
<写真撮影>
広報・ブランドマネジメント部 クリエイティブデザインユニット
柳川亜紀子
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