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地テシ:380 「アレンジャー・ロールパズリングの旅」のオススメ

 劇団☆新感線「バサラオ」東京公演は8月8日いっぱいまで追加席を抽選で販売中ですよ!

 抽選ですから急がなくても取れる可能性がありますので、どうぞ落ち着いてエントリーして下さいませ。つまり、宴にまだ間に合うってコトさ!


 さて、前回の粗筋は「福岡公演にSwitchを持って行ったんだけど、いくつか新しく買ったゲームがなんとなくグッとこなかったでござる」でしたね。いや、面白いんだけどさ、こうググッと引き込まれないってんですか。まあこちらも舞台初日近辺でバタバタしておりましたからねえ、気分が乗りにくかったのもあったかもしれませんけど。

 そしたら丁度、7/11〜24に「Nintendo Switch インディーズゲーム セール」ってのが行われておりましてね、作品によってはかなり安くなっていたのよ。しかも名作や話題作が厳選されているカンジです。その内のいくつかは既に買っていたのですが、「欲しいものリスト」に入れたまま忘れちゃってたモノやら全くノーマークだったモノやら、気になるゲームが安かったのでこちらもいくつか買ってみました。

 いわゆる「倉庫番」の進化形で、ボックスの中に入っていける入れ子構造が更に複雑なパズルを生み出す「Patrick's Parabox」

 「ここにゲームはない!」と言い張るプログラムを躱して、なんとかゲームを始めようとしている内に、それ自体がゲームになっているというバカバカしさが楽しい「There Is No Game: Wrong Dimension」

 さすがに厳選されているだけあって、どれもハマれる面白さです。インディーズゲームらしいシンプルさと斬新なアイデアで、小粒ながらインパクトのある作品たちです。
 これらのゲームを少しずつ進めていたのですが、去る7/25に気になる新作が発売されて、スグにダウンロードしてプレイしてみたら、これがまたシンプルでローファイ、なのに新鮮な面白さを感じさせる名作だったんですよ。そして、他のゲームを差し置いてついついプレイしてしまい、そしてもうすぐエンディングっぽいトコロまで来ちゃったって話を書きたいと思います。ようやく本題かよ!


 そのゲームの名は「アレンジャー・ロールパズリングの旅」。パッと見はオールドスタイルのロールプレイングゲームのようですが、実は床が動きます。床が動く? ええ、動くんです。
 くだくだ説明するのも面倒なので、まずはこちらの動画をご覧下さい。

 こんなカンジなんです。マップは正方形のグリッドに区分けされており、主人公であるジェマの乗った列と行、つまり十字方向にスライドしてしまうのです。町の人に話しかけようとしても、同じラインに乗ったままだと町の人も一緒に動いてしまうので、いつまで経っても話しかけられません。ですので、隣のラインに移動してから近づいていくコトになります。

 行く手をモンスターに阻まれても、地面に落ちている剣を移動させて当ててやれば倒せます(モンスターは動きません)。移動してしまう床は反対側とループで繋がっているので、壁で阻まれて進めない場所でも、反対側からループすれば大丈夫。そう、移動も攻撃もパズル風になっているのです。
 見た目はロールプレイングゲーム、でも操作はパズルゲーム。それが「ロールパズリング」たる由縁です。

 例えば、床のスイッチを踏むと扉が開くんだけど、自分が動いちゃうと扉が閉まっちゃう。そんな時には岩を移動させてきてスイッチの上に置いてから進めば良いのです。
 でも、スイッチが3つくらいになるとややこしくなります。次の岩を誘導している間に前の岩がズレちゃったりするのね。だって動くと床が動いちゃうから。そこで色々と頭を捻る必要が出てくるってワケです。
 ほら、4×4マスの枠に1から15まで数字の書いてあるパネルがあって、スライドさせながら数字を揃える「16パズル(スライドパズル)」ってのがあるじゃないですか。そうそう、あんなカンジ。
 あと、コレをこっちに置いといてから、アレをそっちに移動させるってのは「倉庫番」っぽくもありますかね。

 ギミックとしては床が動くだけですが、それに加えて様々な仕掛けも出てきます。筏に乗ったりワイヤーで移動したり一緒に動いちゃうお邪魔キャラが出てきたり。多彩な展開で飽きさせません。しかも新たな仕掛けに徐々に慣れさせていくレベルデザインも見事です。
 一つ一つは小さめのフィールドに区切られていますから、面クリア型のパズルのような構成になっています。ある程度進むと中ボスっぽい敵も出てきて、それまでのパズルの集大成みたいな解法を求められます。これがまた良いアクセントになっているんですよ。

 ジェマはその能力が故に街に居づらくなり、街を出ることにします。そして外の世界で様々な悩みを持つ人々と出会い、その解決に力を貸すことになります。どうやら人々のネガティブな感情が集まって《よどみ》となり、道を阻むモンスターとなっているようです。ところが《よどみ》から人々を守ってくれているハズの《守りの巨像》の様子がおかしいようです。
 じゃあパズルのようなフィールドを進んで《守りの巨像》の謎を解きに行こうじゃありませんか。

 そんなワケですから、外の世界にはネガティブな気持ちを持った人や謎めいた人が多いのですが、ジェマの明るく前向きな性格がそれを打ち消しています。グラフィックもポップでカラフル、とってもカワイイ。
 街を出たジェマは旅をしながら様々な人々と出会います。ちょっと不思議な人々を助け、そしてそんな人々に助けられながら進むうちに《よどみ》や《守りの巨像》の実態に気付いていき、いつの間にやら人生の意義を探るような大冒険へと展開していくのです。でもジェマはいつも前向きに挑んでいくのが頼もしいのですよ。親友もできちゃうしね。

 そして音楽がまたイイんですよ。ゆったりとしたリズムで生楽器を多用したローファイなカンジ。南国的だったりアーシーだったりするトコロがジャック・ジョンソンなどのサーフロックっぽくもあります。

 そんな音楽や、要所で挿入される手描きコミック風のグラフィックなど、インディズゲームらしい手作り感のある素敵な造り。パズルの難易度もそれほど高くなく、しばらく悩んだ後でパッと閃く感覚も上手く設定されています。

 ただ、こちらもインディーズらしくボリュームは短め。7/25に発売されたばかりなのに、もうラストダンジョンっぽいところに辿り着いてしまいました。ていうか、東京に戻ってきてちょっとプレイしたらクリアできてしまいましたよ。調べてみたらどうやら8〜10時間ほどでクリアでできるそうですから、まあそんなものかもしれません。
 とはいえ、床が動くという一点に集約したシンプルなパズル、旅先で出会う奇妙な人々、温かみのあるグラフィックと音楽。小粒ではあってもしっかり楽しめる作品になっています。

 実はこの作品は、数多くの名作インディーズゲームを作ってきた人々が集まって作られた新しい会社「Furniture & Mattress」の第一作目なのです。手練れらしくシンプルながらも楽しいゲームに仕上がっています。なんていうか、手堅い。緩急を心得ているというカンジです。
 日本語へのローカライズも丁寧で、ポップなノリも登場人物の奇妙さも良いカンジで移植されています。会話の文字の出方が可愛かったり、「…」の応酬で面白いリズムを作っていたりと、なんとなくユルめのノリでノンビリ楽しめますよ。


 「アレンジャー・ロールパズリングの旅」はSwitchとPS5、Win、Macで発売されていて約3000円。パズル系がお好きな方にはもちろん、手軽に楽しめるちょっと変わったゲームをお探しの方にもオススメです。
 ちなみに、意外にあっさり終わっちゃったので二周目に挑戦しているのですが、二周目ならパズルもサッサと解けると思うじゃない? でも、どうやって解いたか忘れちゃって、またしても苦戦したりする場面も多いのが面白いトコロ。いや、面白いっていうか、自分が不甲斐ないだけなんですけどね。しょぼん。