地テシ:397 旧公衆衛生院の夏の思い出
先週開催され、私も急遽呼び出されて参加した「エミちゃん祭り2024」では数多くのご来場の皆様と出演者たちとで牧野エミさん天国デビュー丸12年を祝うことができました。私なんかね、当日参加に加えてビデオメッセージでもダブルでお祝いすることができましたからね。ただまあ、その場にいるのに自分のビデオメッセージが流れて自分も一緒に見るってのは、どうにもこそばゆい感じでしたけどさ。
さて、例によってフィールドワークという名の散歩に勤しんでいるオフの私ですが、道や街を楽しむだけでなく古建築を愛でるのもまた目的の一つです。実は「バサラオ」の福岡公演と東京公演の合間にも訪ねた古建築があるのです。そこそこな長さの合間が頂けましたので、前々から気になっていた建築を観に行ってきました。
それが白金台駅(東京メトロ南北線・都営三田線)近くにある港区ゆかしの杜、いや港区立郷土歴史館、いや旧公衆衛生院なのですよ! まあ取りあえずこちらの写真を見て!
どうです! ド迫力でしょう! 昭和13年にアメリカのロックフェラー財団からの援助を受けて建てられた国立公衆衛生院は内田祥三(うちだよしかず)の設計。当時の喫緊の課題であった公衆衛生の技術者を養成するための施設です。
内田ゴシックとも称される骨太で重厚な造りは国立公衆衛生院にふさわしい威容を誇っていましたが、2007年にその業務を終えて様々な改修工事を施した上で2018年から港区の公共公衆施設「ゆかしの杜」として再始動しました。そしてこの建築の大部分は港区立郷土歴史館として利用されており、入館すれば内部も思う存分見て回ることができるのです。
まあとにかく重厚です。ヨーロッパの城塞を思わせるような高さと厚さ。ですが、内部は大きな窓の教室や高い吹き抜けなどがあって、思ったよりも開放感があります。数多くの実験室や立派な図書館、そして300人以上も収容できる講堂があり、しかも最上階には女子寮までがあって、まさに教育と訓練に特化された施設だったのです。
最近では古建築が見直されて保存の動きも多くなってきておりますが、外観だけが保存されて内部は全く新しく作り直されるケースが多いのです。まあそれはそれで有り難いコトではあるのですが、この旧公衆衛生院では可能な限り内部までもが保存されており、それでいて耐震性やバリアフリーにも配慮したという、相当に高度な技術が使われているようです。おかげで細部に至るまで当時の姿を楽しむことができるというワケです。
ちなみに、夏の真っ盛りに港区立郷土歴史館に行ったのは令和6年度夏休み企画展<おとなも学べる>「発見!探検! 江戸のまち 〜江戸時代の地図で港区めぐり〜」が開催されていたからですね。
江戸時代の切り絵図を元に、港区をいくつかのエリアに区切って解説していました。当時は写真がありませんでしたから浮世絵などで名所を紹介しており、しかも同じ場所の現代の写真なども付与されていたりして判りやすく展示されていました。
子供さん向けの夏休み企画ではありますが「おとなも学べる」と書いてあるとおり、大変タメになる企画展でした。しかも私は古地図好きですからね。これは行って見ておきたかったのです。
古地図も楽しめて、古建築も楽しめて、こりゃ暑い中でも行った甲斐がありました。実を言いますと、公衆衛生院のすぐ隣には対になるように建てられている東京大学医科学研究所もあるのですが、時間が無かったのと、無関係の者が入っちゃっていいものかどうか判らなかったので、そちらには行っていません。こちらも同じコンセプトで内田祥三が設計したモノですので、いつか機会があったらこちらも訪れてみたいものです。
ちなみに港区ゆかしの杜は地下鉄白金台駅のそばですが、目黒駅から歩けば以前にもご紹介した東京都庭園美術館や国立科学博物館付属自然教育園の前を通ります。この目黒から白金のあたりは旧三田上水跡を探したり、東京初の食肉処理場である「白金屠場」を探したりと、何度も往復した場所でしたので旧公衆衛生院は気にはなっていたのですよ。
港区に興味は無くても、古建築に興味のある方は一度訪れてみるのは如何でしょうか。常設展示も面白いよ。