地テシ:258 富士市の旧東海道@「神州無頼街」静岡公演ってば!
「神州無頼街」の東京公演まであと少し。タイムカプセル館の方もあと少し。今週は村木仁さんと逆木圭一郎さんのカプセルを開けたり開け損なったりしておりますよ。
次回が最終回。二年前のタイムカプセルも残り僅かです。お楽しみ頂ければ幸いです。
さて、前回は静岡公演で撮った富士山写真をお送りいたしましたが、いやあやっぱり初めての土地ってのは楽しいですねえ。舞台稽古も含めて約十日間の滞在でしたので、空いた時間などにフラフラとフィールドワークという名の散歩をしておりました。
色々と(私にとっては)面白いモノを見つけて、写真を撮りまくったりして、様々に(私としては)面白がっていたのですが、そんな中でも比較的伝わりやすそうな旧東海道に関するいくつかをご紹介したいと思います。
富士市と言えば東海道が通っている街です。古い街道が大好きな私としては旧東海道を楽しみたいじゃないですか。もちろん東京や横浜にも旧東海道はあるのですが、再開発が進んでいて往時を偲ぶことがかなり難しくなっています。
ですが、富士市辺りにはかつての東海道を彷彿とさせる空気感が残っていて、それがなんとも言えない風情を漂わせているのですよ。
一般的に旧街道というのは緩やかに蛇行しています。海岸線や山際など、地面の微妙な凹凸をなぞるように踏み固められたものが街道なので、若干曲がっていることが多いのです(ただし古代律令街道は除きます)。
首都圏ではその曲がりが消されてしまい、直線に引き直されているコトが多いのですが、富士市の旧東海道は微妙にうねっておりました。このうねりが良いのよ!
どうでしょうか。ちょっと伝わりにくいかもしれませんが、この微妙に蛇行しているのが旧街道っぽさを感じさせるのです。うねっていれば良いというワケではもちろんありませんが、江戸の昔から引き継がれたうねりだと思えば、これまた独特の感慨が湧いてくるってもんでしょ。
そんな旧東海道の脇に一里塚の石碑もありました。
一里=約4kmでして、江戸寄りの宿場町・吉原宿から約4kmのポイントにこの石碑は建っています。近年になって建てられたっぽい新しい石碑ではありますが、こういったマイルストーンを頼りに旅人たちは東海道を旅していたのですね。
古い街道といえば古い建築。鉄道や幅広い幹線道路などが出来ると人流・物流が変わってしまいますが、それ以前は街道がメインストリートでした。となると住宅や商家、店舗が街道沿いに建ち並ぶというワケです。
東京辺りではドンドンとそれらが立て直されて新しくなってしまっていますが、富士市の東海道では所々に古い建物が残されておりました。
左半分が古そうなのは簡単に判りますが、右側の二階部分のガラス窓の当たりも相当に年季が入っています。そして右側の一階部分は現代風に改築されているようです。この家屋は旧東海道に面していましたので、何かの店舗だった可能性もありますね。
静岡公演会場であったロゼシアターのすぐ南にも旧東海道が通っているのですが、この辺りには敷地の広いお屋敷がたくさんありました。立派な生け垣やブロック塀が設えられていて広い庭があって木造二階建ての家屋があるとか、広い敷地に母屋と離れが建てられているとか、庭に屋敷神の祠があるとか、まあとにかく立派なお家が多かったのが印象的です。
また、富士市と言えば製紙業です。豊富な水資源と木材資源を背景に近代製紙業が盛んで「紙のまち」とも言われています。旧東海道に面しても王子マテリア(旧王子製紙)の広大な工場があります。
で、この工場敷地の端っこ、幹線道路に面した部分にこんな看板がありました。
もちろん「王子マテリア専用道路」という意味なのでしょうが、「王子専用道路」と書かれてしまうと、なんとなく白馬に乗った王子様が優雅にお散歩しているようで可愛いですね。いや、想像したら絵が浮かんじゃって面白かったのよ。
旧東海道にはたくさんの宿場がありました。東海道中五十三次なんて言いますよね。富士市にはJR富士駅があり、駅前も発展しているので歴史が古いと思われがちですが、実は明治42年に富士駅が開業してから発展したエリアです。
富士市内の東海道宿場と言えば吉原宿でして、こちらの方が歴史が古くて江戸時代から栄えていました。といってもJR吉原駅の辺りではなく、少し内陸部に入った岳南電車の吉原本町(よしわらほんちょう)駅の辺りです。
沼津宿辺りから海岸線沿いを西進した東海道は、吉原宿の手前から急に内陸部に入り、暫く内陸部を通った後、次の蒲原宿の辺りからまた海岸沿いに戻ります。それはこの辺りが高潮に襲われやすい土地だったためのようで、吉原宿も二度の移転によって内陸部に移動していったのです。
ロゼシアターから旧東海道を東に向かうと、急に立派な商店街が現れます。この辺りが吉原宿。富士市駅前の商店街よりも店舗数も多く、この辺りの発展の歴史が感じられます。
吉原宿の名物と言えば「つけナポリタン」。え? つけナポリタン? ええ、私も知りませんでしたが、つけ麺のようにナポリタンを楽しむご当地グルメなんです。
地元の喫茶店「アドニス」さんが始めたところ人気となり、今では数十軒ものお店でちょっとずつアレンジされて提供されているんですって。
私が吉原宿に行った時にはタイミングが合わずに「アドニス」さんでは食べられませんでしたが、「トラットリア キクチ」さんでつけナポリタンを頂きました。
こんな感じで、スパゲティをトマトスープに漬けて頂きます。具もウインナーやタマネギ、ピーマン、マッシュルームとナポリタンの定番でして、漬けて食べると確かにナポリタンになるのです。いや、通常のナポリタンよりもケチャップ感が少なくて、トマトソースのコクが強く感じられてナポリタンよりも美味しいかもしれません。
帰りは吉原本町駅から岳南電車に乗ってJR吉原駅に出て、東海道線で富士駅に戻って参りました。岳南電車にも一度乗ってみたかったんだよね。
無人駅が多いので、乗車した時に整理券を取って、降りる時に精算するというワンマンバスのようなシステムです。二両編成の可愛らしい電車なんですよ。沿線に工場が多いことを逆手にとって「工場夜景電車」を走らせたりもしているようです。
そんなこんなの富士市旧東海道を巡る散歩。実は東海道以外にも富士市で見つけたちょっと面白いモノはまだいくつかあります。「神州無頼街」東京公演も始まってしまいますが、もう一週だけ富士市レポートにお付き合い下さいませ。いや、そんなに大した写真はないんですけどね。