地テシ:289 大阪市立電気科学館の想い出の巻!
さあ! いよいよ来週の11/26(土)は「薔薇とサムライ2」のライブビューイングですよ! 日本全国に加えて台湾の映画館でも実施されるってんですから凄いよね! 舞台の感動をもう一度とか、劇場には行けなかったけど見てみたいとか、様々なニーズにお応えする企画ですので、是非ともお越し下さいませ。
さて、去る11/8は皆既月食で、天気が良かったために全国のかなりの範囲で観測することができました。しかも同時に惑星食(今回は天王星)が起こるのは442年ぶりということで、かなり話題にもなりましたね。
まあ、明るい街中では天王星なんて肉眼ではほぼ見ることはできないのですが、なんとなく話題性もあって注目を集めていました。
丁度休演日だったもんですから、私もチラッと外に出て、欠けつつある月や赤く輝く皆既月食を楽しみました。
街中でも、ちょっと開けた角や公園などに人々が集まって空を見上げているのが面白かったですね。やっぱり天体だとか星空だとかというのは何やら浪漫があって心惹かれるものなのです。
都市では街明かりが眩しすぎてなかなか星空を見ることは難しいのですが、たまに田舎の方に旅行に行った時などに満天の星空を見るとテンションが上がるんですよね。
そんな貴重な満天の星空をいつでも見られる場所と言えば? そう、プラネタリウムです。私もプラネタリウムが大好きでして、といっても何年かに一回行く程度だし、しかも途中で必ずウトウトしてしまうのですが、まあそのウトウトも込みで楽しんでしまうのです。
中でも好きな演出がありまして、投影が始まって暫くしてからの、街明かりや明るい月を消してみましょう、という瞬間。それまでにもかなりの星々が見えているのに、邪魔な光を消した瞬間に驚くほどの数の星空が現れるじゃないですか。あの瞬間がね、好きなんですよ。
そこまで見たら、まあ個人的には満足してしまって、そんでもってウトウトしてしまうというワケです。まあね、傾斜の大きな椅子、暗い室内、ゆったりとした音楽と音声。そりゃあ寝ちゃうよね。
そんな私にとって一番想い出深いのが、かつて大阪の四ツ橋にあった「大阪市立電気科学館」のプラネタリウムなのです。
私の母方の実家が大阪市内にあり、子供の頃に盆や正月などで訪れる度に、おじさん(母の兄・弟)や従兄弟のお兄ちゃんにねだって電気科学館に連れて行ってもらうのがお気に入りでした。
大阪市立電気科学館というのは昭和12年(1937年)に開館した、日本で最初にプラネタリウムを導入し、電気の仕組みや応用が学べるという日本初の科学館です。通常の博物館のように単に展示物を並べるだけではなく、電気の原理や応用技術、そして最新技術などを、実際に使ってみたり操作してみたりすることによって楽しく学べるという、体験型の施設だったことが日本初の科学館と呼ばれる由縁です。
最上階の「天象館」には大きなドームのプラネタリウムが設置されており、そこで小一時間ほどの投影を見てから下の階にある「電気館」をゆっくり下りながら、様々な電気に関する展示を楽しむのがお決まりのコース。
最近のプラネタリウムでは一方向を向いた階段状の構造が多いですが、当時のプラネタリウムは真ん中に巨大なアリのような投影機があり、それを囲むように同心円状の客席が配置されていました。学芸員さんがその季節ごとのテーマで語りながら、矢印が投影される懐中電灯で星々を指し示したりしながら解説してくれました。
電気館では手回し発電機でランプを灯したり、テレビ電話でおじさんと話したり。中でも人気だったのが「透明人間の部屋」というもので、部屋のドアや冷蔵庫の扉が自動的に開閉したり、電灯やラジオの電源がオンオフしたりしまして、部屋に帰ってきた透明人間の生活を見るコトができるという展示でした。子供心にこれがどうにも不思議でずっと見ていたような記憶があります。
それほど大好きだった電気科学館も年齢が上がるごとに足が遠のき、高校生の頃にはパッタリと行かなくなってしまいました。そして惜しまれながらも平成元年(1989年)に52年の歴史に幕を下ろします。
そうか〜、20代前半までは稼働していたのか〜。今思えば大人になってからも行っておけば良かったな。
ところが! そんな後悔を吹き飛ばすように、電気科学館の後継となる「大阪市立科学館」が同じく平成元年に開館したのですよ! まさしく入れ替わりとして継続されたのです。これからも大阪の科学少年は大興奮できるってもんですよ。
実は私も新しい科学館が開館して暫くしてから一度行ったことがあります。ただ、かつての電気科学館への思い入れが強すぎて、今ひとつ楽しめなかったんですよね。何が悪いというワケではないのですが、なんとなく小綺麗にまとまってしまっているような気がしていたんですよね。いや、もちろん無い物ねだりなんですけど。
だもんで、今回の大阪滞在中に改めて科学館に行ってみようと思い立ちました。場所は中之島ですから、劇場からだって歩いて10分もかかりません。よし、行こう!
そうそう、この楕円形のフォルムです。懐かしいですね。何十年振りでしょう。この日も課外学習らしき大勢の小学生たちが訪れていました。
中に入ったらまずはプラネタリウムを予約しましょう。子供たちの課外学習限定の時間帯もあるので注意して下さい。
プラネタリウムの時間が来るまでは館内を見て回りましょう。各フロアには数々の展示がなされています。電気科学館時代と同様に体験型の展示が中心でして、見て触って楽しめるようになっています。時節がら多人数が触るものには抵抗も感じられますが、館内の至る所にアルコール消毒液が用意されていますのでご安心を。
例えば滑車の展示。定滑車や動滑車、組み合わせ滑車を引いてみると、同じ重さの重りでも引き上げやすさに違いが感じられます。
ハンドルを回転させて遠心力を発生させて水面の変化を体感できる装置では、遠心力の何たるかを実際に体験できます。
そして、やはりありましたよ、自力発電機の数々。こちらはサイクリング式の発電機。重いペダルをグイグイ漕げば、それに応じた発電ができます。日頃手軽に使っている電気というもののありがたさが感じられる重さです。
このような体感型展示ばかりではなく、パネルによる豊富な展示も目を引きます。
また、科学館ならではの実物展示も様々に用意されています。化学好きには堪らない、実物を使った元素周期表とか。
その裏側には、それらの元素を使った製品の例が展示されていたり。
他にも色々な展示がありましたが、長くなるのでズラッと羅列しますよ。
そうこうするうちにプラネタリウムの時間になりました。電気科学館では最上階にありましたが、科学館では最下階である地下にあります。
そして、そのプラネタリウムの前には、昔の電気科学館で使用されていた投影機の実物が展示されていたんですよ!
ドイツのカール・ツァイス社製の、昭和12年の時点で日本では始めて、世界でも25台目のプラネタリウム投影機です。これ一台で8900個の星々と全惑星と太陽と月とかを投影でき、しかも地球上のどの地点の星空でもどの時代の星空でも投影できるってんですから、全くもって物凄い機械です。それが約100年前の機械なんですから凄いですよね。いまだに原理が判りません。
旧プラネタリウムとの再会を楽しんだら、現プラネタリウムに入りましょう。こちらは最近主流の一方向(というか軽く湾曲した扇状)に向いた階段客席。椅子もゆったりしていて快適です。どうやら今年の2月に客席がリニューアルされたのだそうですよ。
投影機も2018年度にリニューアルされたコニカミノルタプラネタリウム株式会社製で、様々な機能を追加した特注品だそうです。形状はこちらも最近主流の球体型で、客席階段に埋まるように設置されているためにほとんど視界を妨げません。
それよりも嬉しかったのは、プログラムが学芸員さんによる解説で進行されていたことです。そう、かつての電気科学館時代のように! 最近のプラネタリウムではコンピュータ制御された投影と録音音声で進行することも多く、いや、それはそれで楽しいのですけれども、やっぱり昔懐かしい生音声による解説の方がグッときますよね。
なんとなく少年時代に戻ったような気分になりながら、しかし当時よりも明るくクッキリした星空を眺められて大満足でした。まあ、やっぱり途中でちょっとウトウトはしたんですけどね。
プラネタリウムを出たら、もう一度館内を見て回りましょう。いや、あまりにも展示内容が多かったもので、まだ途中までしか見られていなかったからさ。
いやあ、しかしやっぱり楽しいわ。何時間でも居られちゃう。以前来た時にはそれほど面白いとは思わなかったハズなのですが、いや、改めて来てみれば存分に楽しめました。
大阪市立科学館として再開されてからもう30年以上が経っていますが、展示内容も何度かリニューアルされているようですし、これからも大阪の科学好き少年少女たちの心を掴んで離さないことでしょう。できる限り長く稼働していてほしいものです。
あ、そうそう。館内にはかつての電気科学館についてのパネル展示もありました。子供の頃に楽しんだ私のような人々にとっては懐かしく思い出される内容でした。
その内のいくつかだけご紹介しておきましょう。
ちなみに、旧電気科学館が建っていた四ツ橋の同じ場所には、現在では「ホワイトドームプラザ」というビルが建っているのですが、このビルがかつての電気科学館を彷彿とさせるデザインになっているのがニクイですね。
角の丸みとか屋上にドームがある所とか。ま、このドームがどのように利用されているのかは判りませんけど。
そんなこんなの電気科学館の想い出と、新しい科学館の体験記。いやあ、改めて行ってみて良かった。美術館も博物館も資料館も楽しいんだけど、科学館にはそれとは違った独特の喜びがあるよね。科学の楽しさと不思議さ、体験型ならではの面白さ。そういった浪漫がたっぷり詰まっているもんね。
皆さんも科学に餓えたら、そして童心に返りたくなったら、お近くの科学館に行ってみて下さい。あと、ウトウトしたくなった時とかにもね。
って、そんなまとめかい!