地テシ:392 ゲキ×シネ「吉原御免状」が凄い!
いよいよ本日10月25日(金)から上映が始まりますゲキ×シネ「吉原御免状」は劇団☆新感線が2005年に上演致しました作品の再編集版です。実はね、先日に行われました関係者試写会に行ってきたのですよ。しかもDolby Cinema版ですよ!
Dolby Cinemaってのは、なんていうかほら、なんだか凄い映像と凄い音響で、なにやら物凄い映画体験ができるって触れ込みの、ほら、アレですよ。
で、見てみたら! やっぱりほら! 物凄いのよ! 映像がバーンッって! 音響がドーンッって! 凄いよね、Dolby Cinemaって! いや、通常版でも凄いと思うけど!
ま、よく判らないDolby Cinemaの説明はいいとしましても、まずは作品として面白かったのよ。いや、確かに自分も出ている作品だし、よく知っているはずの舞台なんだけど、さすがに約20年前の話です。ほとんど憶えていません。だからこそ新鮮に見られたのね。
初めのうちは、ああ懐かしいなあ、とか、みんな若いなあ、とか思いながら見ていたのですが、その内にそういったことをすっかり忘れて、普通に観客として見ちゃっていたのね。そう、一観客として見入ってしまっていたのです。
よく考えれば、私はこの作品を客席から見たことはないんですよね。そりゃそうだ、だって出てるんだから。いやもちろん稽古場でも劇場の舞台稽古でも見てはいましたけれども、全てが完成された状態を客席から見たコトはなかったのです。しかもすっかり忘れちゃってるしさ。でもだからこそ、一観客として新鮮に見るコトができたのです。
でね、見終わった後に「これは宣伝しておかなくては!」とか思っちゃったんですよ。そう、誰に頼まれたわけでもないのに、ゲキ×シネスタッフに頼まれたわけでもないのに、なんだか宣伝したくなっちゃったのね。ホントは週一のいつものBlogの冒頭でちょっと書けば良いやとか思っていたのですが、書き始めたらなんだか長くなっちゃったのよ。そんでこうなっちゃったのよ。
というワケでね、勝手に宣伝隊が参りましたよ! 推参致しましたよ! 推して参る!
まず、原作が凄い! 隆慶一郎さんの小説「吉原御免状」が原作なのですが、この隆慶一郎さんという人がまた面白い。脚本家として活躍した後、還暦を越えてから小説家に転向したものの66歳で急逝しました。わずか5年ほどの執筆期間中に当時最先端だった網野善彦さんの学説なども取り入れて、斬新で躍動感のある数多くの時代小説を上梓し、しかもそのどれもが面白いという驚異の作家さんなのです。私もほとんどの作品を読んでおりますが、どれもが読み出したら止まらない面白さなのですよ。
そんな隆慶一郎さんのエッセンスがギュッと詰まったデビュー作である今作は、色街である吉原を舞台としながら、その色街そのものの実態が主題となっているところがまた凄い。明らかに「髑髏城の七人」は「吉原御免状」の影響を受けていますよ。
その脚本も凄い! 隆慶一郎さんに影響を受けまくった中島かずきさんが、その代表作を脚色するというのですから気合いが入りまくっています。決して超長い作品ではないのですが、3時間の舞台にまとめるのはそれはそれは大変だったと思います。でも、ちゃんとこの小説の面白さを余すことなく伝える脚本になっているのですねえ。
そして演出が凄い! 自分の劇団の演出を褒めるのもどうかと思いますが、改めて見てみたら凄かったんだからしょうがない。鉄で作られた巨大なセットがゴウンゴウンと行き交い、立体感のある盆がグルングルンと回り、多彩なシーンがガランガランと移り変わり、ギュンギュンという間に魅せます。スピード感が凄い。でも、ピタッと止まった瞬間もカッコいいんですよ。
もちろん俳優陣も凄い! なにしろ堤真一さんが凄い! まさに松永誠一郎。原作で読んだ時のままの松永誠一郎がそこに居ました。清冽にして伊達。朴訥にして精悍。そして殺陣がまた美しい。ラストの大立ち回りには怖ろしいほどの凄みがあります。
さらに松雪泰子さんの妖艶さ、京野ことみさんの誠実さ、梶原善さんの闊達さ、古田新太の執拗さ、そして藤村俊二さんの飄逸さ。劇団員からアクション、アンサンブル、コロスまでもが過不足なく活躍しています。私も珍しく眼鏡を掛けていません。
それからゲキ×シネならではの話を書きますが、カメラワークが凄い! こんな素材も撮ってたんだという驚きと共に、新編集ならではのドライブ感に溢れています。演劇というのはやはり劇場でご覧頂くのが一番なのですが、これはもう舞台を素材にした映画のような作品になっているのです。
そしてまた音がいい! 毎度ゲキ×シネの音の良さには驚かされますが、今回もまた凄いんですよ。音声、音楽、効果音。相当にブラッシュアップされています。
なんだか自分の所の作品を褒めまくるのも気がひけますが、面白かったんだからしょうがないじゃないですか。終盤のクライマックスとかラストシーンとか、うっかり感動してしまいましたからね。
ええと、実を言いますと笑いどころはほとんど有りません。何しろ、あの橋本じゅんさんがひと笑いしか取っていません。それくらいに真剣に取り組んでいるということなのです。そして、だからこそゲキ×シネに向いている作品だと思うのです。
特に、最近のド派手な新感線しか知らない新しめのファンの方にも見て頂きたい作品になっています。もちろん歴の長い新感線ファンの方々や、単に時代劇が好きだという方々にもね。
通常版の上映は10月25日(金)から11月8日(金)あたりまで、Dolby Cinema版は11月22日(金)から12月5日(木)までの限定上映です。期間が短いし上映館も少ないのが残念ですが、ちょっとでも気になる方はぜひ映画館にお運び下さいませ。何故いまさらこの作品をゲキ×シネにしようとしたのかを感じて頂けると思います。
実はね、私だって何故いまさら20年も前の作品をゲキ×シネに? と疑問に思っておりましたよ。そりゃ思うでしょうよ。でもね! 映画館で見たら判りますって。なぜ今「吉原御免状」をゲキ×シネにしたのかって。ぜひとも映画館でお確かめ下さいませ。