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ばらばらの預言者(ft.『Prophets』)【Sandwiches #75】
さらさらしっとり、今日も涼やかな雨のふる東京・新宿です。新しい週がはじまり、とりあえず午前中から部屋の掃除やら皿洗いやら、無心で身の回りの片付け作業にあたっていました。やあ、雨音ちゅうのは、黙々とした時間に心地よいリズムをあたえてくれるもんですね。せっかくだし、とお昼からnoteを書くことにしました。
「楽曲紹介」シリーズ、今日は3rdアルバム『Circles』よりM6「Prophets」を聴いていただきましょう。
この「Prophets」はアルバム『Circles』の中でとりわけかわった雰囲気をまとったトラックで、四つ打ちっぽいビートの刻み方にくわえて、ボーカルの処理や歌の構成もなんだかトリッキイ。
ふだんは、ラップ、サビ、ラップ、サビ……なんて規則正しい順序でことばを紡ぐことの多いmaco maretsです。しかし「Prophets」はなんや、どこがメイン・パートかもよくわからんし、後半に至ってはひたすら同じフレーズを反復するような場面も出てきます。このあたりどうしても慣れないつくりかたで、曲が完成するまで霧をつかむような感覚が拭えぬままでした。
プロデューサー・アズマリキさんの制作ノートでもまさにその点について触れてくださっていたので、すこし長めですが引用させてください。
(前略)結局それが決まらず、あらためてマコマレッツひとりでデモを作っていた。彼が持っているボーカルエフェクターを使って、様々なアイディアの断片が散りばめられていて、それを聴いた時は新しいマコマレッツの要素があって、面白いと思った。ただマコマレッツ自身それらをまとめきれず、しかもポップ過ぎやしないかと危惧していたようで、お蔵入りしかけた。
主なボーカルはスタジオで録音したが、エフェクトが掛かった声やギミックは、デモのデータをもらった。そしてそれをエディットし、曲構成もミックスダウンしながら考えた。
構成も含めて最初からカッチリと作っていくのも良いけど、こういう「どうにでもなりそう」な曲は重要だと思う。
(No3 こちら側から見たマコマレッツ _ STUDIO75 覚書 より)
そう、アイデアとしてさまざまな要素をつめこんでみたものの、デモの段階ではそれがバチリと効果的に響いている実感もなく、上で言うところの「まとめきれ」ない状態であったのです。
そもそもなぜそうした試みに至ったかといえば、やはりかアルバムも3作目、前作よかほんのすこしでも表現の振り幅(ちいとうすぺらな表現ですが)をひろげたいという思いゆえのことでした。決まった構成の楽曲というのは、聴く者からすれば「ああ、おきまりね」という安心感こそあれ、なかなか新鮮な驚きをもたらしてくれぬ。
くわえてなにより自分にとって、前2作でもって繰り返し得た「maco marets」のレシピをそのままに再現するだけでは作品をつくる意味が感じられなかったのです。すこしだけでも、アップデートした感を得たかった。
そんでもって歌の構成をバラバラにしてみたり、はじめてオートチューンを採用してみたり(結局メインには使いませんでした。このあたりは次作にもちこしです)、いろいろ「やるだけやってみる」ことになったのでした。最終的にはアズマさんのおかげでなんとかクール&スマートなかたちに収まった、そう思っています。
ぜんたいのひんやりしたムード、とくに歌詞については、一昨日ご紹介したM5「Blu (CIFI pt.2)」と、このあとのM7「D.O.L.O.R.」をつなぐイメージで書いたつもりです(パート2にあこがれて(ft.『Blu (CIFI pt.2)』)【Sandwiches # 73】)。冒頭の「Wash」から「D.O.L.O.R.」まで、諦観の滲むなんちゃってデカダンなことばがひたすら積層してゆきますが、そのなかでも「Blu (CIFI pt.2)」と「Prophets」は余計なものをはぶいた無機質さ、無感情さがお気に入り。
「曖昧になっていた約束みたいに口だけの愛を 語っては交わす夜も ぜんぶがほんとうなんだよ」
なんてちとべたついた文字つらの歌詞もあるが、まあ、このあたりどのように聴かれるやろか。わたし個人としては、ダイエット・コークのような印象がひとつの理想であります。
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