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きっとこの時のために、あなたにあげたんだ


 
 それは宝塚を卒業してからちょうど1ヶ月後の、2020年、4月22日だった。
 私はここで書き始めた、おっかなびっくり。

 新たな名刺よりも先に作ったのは、「note始めましたカード」だった。
 お世話になった方々へのお手紙に同封したり、お会いした時に渡すための、小さなカード。
 noteを始めたお知らせなんて大袈裟だとも思ったが、私にとってはまさしく大ごとだったのだ。
 ささやかなメッセージカードなら良いかも、と考えた。
 宝塚にいた時に千社札を作ってくださったお店にお願いすると、快く作ってくださった。
 その薄みどり色のカードが出来上がった時、なんだかむくむくと力が湧いてきた。
 新しいことが始まるんだ。
 それは、卒業の後のぼんやりとしていた日々に訪れた、初めての実感だったかもしれない。

「note始めましたカード」の右下あたりに、ちょっとした空間があった。
 文章の隙間が、ぽかりとあいている。
 私は突然、何年も前に友達がくれたスタンプを思い出した。
 なかなか使う機会がなくて、ずーっと部屋の抽斗にしまってあった、縞々のハリネズミのスタンプだ。(縞々のハリネズミって何!?と言われると説明が難しいのだが、とにかくそういうスタンプなのだ。)
 整理整頓の苦手な私にしては珍しく、失くさずに保管していた。
 金色のインクを使ってカードの空白にぽんと押してみると、誂えたように収まるではないか。
 不思議というより、無性に嬉しくて友達に伝えると、彼女は得心して言った。
 「あのスタンプはきっと、この時のために、あなたにあげたんだな。」

 たった一人でもここに来てくれる誰かがいるなら、書きたい。
 まだまだ文章は下手くそだし、正しいかどうか分からないことばかり。
 それでも自分を鍛えて、少しずつ進んでいきたい。
 
 数年後「ああ今日のためだったんだね。」と言えるものが、今の私にあるだろうか。
 
  友達は、言った。
 気を利かせた冗談ではなく、真を見つけたという眼差しで。
 「今日のあなたのために、私は縞々のハリネズミのスタンプをあげた。」
 なんて。なんて、格好良いんだ。

 1年前、勢いで作っちゃった「note始めましたカード」。
 それを受け取ってくださった方と、もっともっと多くの方々が、このnoteを読んでくださった。
 このカードを送ることが出来なかった場所にも、縞々のハリネズミはとことこ歩いて行ってくれたみたいだ。
 薄みどりの小さな紙を手に取って見返すたび、私の世界が新しくなった4月22日を思い出す。
 「note始めましたカード」は、私の所信表明のようだ。

 
 貴重なお時間を費やして、読んでくださる皆さまに、心から感謝しています。
 皆さまのおかげで、1年も書くことが出来ました。
 有難うございます。
 これからも、宜しくお願いします。
 






読んでくださり、本当に有難うございました。 あなたとの、この出会いを大切に思います。 これからも宜しくお願いします!