【製図試験】再現図を自己分析してみた②:記述・作図編
こんにちは、macoです。
令和2年の一級建築士の学科試験に独学3か月で合格し、その勢いで製図試験も突破。ストレート合格しました!
学科試験に3か月で合格したスケジュールはこちら。
製図試験にストレート合格したスケジュールはこちら。
※注意※
分析内容については私個人の独断と偏見を含んでいます。
私はプロの講師ではありません。ただの一受験者です。
ご理解の上、記事を読んで頂きますようお願いいたします。
この記事では、令和2年の一級建築士製図試験に合格した私の再現図について、試験当日を振り返りつつ、なぜ合格したのかを含めて分析していきたいと思います。
前回の読み取り・エスキス編に続き、今回は記述・作図編です。
読み取り・エスキス編を読んで頂いてからの方が、より分かりやすいと思いますので、是非前回の記事もご一読ください。
答案の再現図についてですが、教育的ウラ指導(以下、ウラ指導)が主催しているユーザープランニング(以下、ユープラ)に参加させて頂いていますので、ユープラ参加者の方はそちらで私の答案を確認していただけます。
ユープラ参加番号は「157」です。
記述
エスキスが終わってすぐに記述に入りました。
エスキス後に記述と作図、どちらを先にやるかは人それぞれだと思います。私は資格学校の指導に従って、エスキス→記述→作図の順番でやっていました。
作図→記述の方が不整合が起きにくいと思うのですが、未完を防ぐために記述→作図の順番にしていました。
記述はいつも40分程度で終わっていたので、本試験でも40分を目標にしていました。
試験当日は、緊張からかいつもより消しゴムを使う回数が多かった気がします。
体感的にはいつもより時間が掛かったような気がしたのですが、実際には41分で書き終わったので、いつもと同じくらいのスピードでした。
記述については、試験開始直後に記述用紙にも名前と受験番号を記入しておく手順にしていました。
その際に記述用紙を確認し、図を書く問題や解答欄のボリューム感をチェックしておきます。
課題文の読み取りの時にも、計画の要点等のところを読み、課題文中の気になる文言に赤線を引いておきました。
記述については、エスキス中に特にメモなどは書きません。
頭に浮かんでくる文章をひたすら書いていく感じです。
書き始めるとほとんど手が止まることはないので、一気に書き上げました。
■(1)個室の計画について
入居者の住みやすさについて聞かれていたので、個室内の内装や照明について書きました。
ここで内装や照明計画について書いたのは、図面上は表現できない内容を採点者に伝えたかったからです。
また、イメージ図として書きやすい居室内の回転スペースや手すりの設置についても書いています。
介護のしやさすさについては主に居室内のスペースやトイレの引き戸について書いています。
この「個室の計画」という問われ方に対して、私は個室内の計画のことだと読み取りましたが、個室の配置計画について解答している方もいました。
一見どちらとも取れるような文章ではありましたが、解答用紙にドットの方眼が打ってあったので、それを使って室内のイメージ図を書いてほしいのかなと思いました。
ユープラにアップしている再現図のイメージ図では、少しスケール感が適当ですが、本試験ではもう少しリアルに書いた気がします(多分)。
■(2)スタッフルーム・介護諸室の配置について
スタッフルームや介護諸室は管理用EV付近にまとめて配置していたので、それについて書きました。
また、セキュリティについては聞かれていませんでしたが、課題公表時にセキュリティに配慮することが言及されていたので、ここでセキュリティ強化についても書いています。
■(3)共同生活室およびデイルームについて
デイルームについては南西側に配置したので、南側は上部バルコニーで、西側はルーバーで日射を遮蔽すると書きました。
ですが、作図時にデイルーム西側の垂直ルーバーを書き忘れてしまい(多分)、図面と記述の不整合になってしまいました。
また、共同生活室は北側に配置していたため、日射遮蔽については書けませんでした。
試験元としては共同生活室は北側以外に配置してほしかったんだろうなぁと思い、一瞬「あ~やらかした」と思いました。
とはいえ、北側配置にした(自分なりの)根拠はあるので、エスキスを無理に変えるようなことはしませんでした。
記述では北側に配置することで採光は確保しつつ、熱負荷のない計画としたと書いておきました。
この共同生活室についての記述はファインプレーだったと思います。
記述でしっかりと北側配置についても触れておいたので、北側配置にした説明(言い訳ともいう)ができたと思います。
■(4)耐震計算ルートについて
この問いは記述用紙で見たときに、初出題が来たな~と思いました。
そして正直、答えはわかりませんでしたwww(構造専攻してたんですけどね、、、)
見た瞬間に「分からないから適当に〇をつけて解答しよう」と決めました。
初出題の問題では差が付かないことは知っていたので、ルート2に〇をつけ、記述もいつもどおり書きました。
試験後、私が書いたのはルート3の内容だったと知り、理解が足りてなかったなと反省しました。
■(5)車寄せの屋根について
鉄骨造で計画し、吊り材で躯体に固定して強度を保ってうんぬんと書いた記憶があります(ユープラに提出した復元図より、もう少し書いていた気がします)。
ただし、エスキスの倍コマで車寄せの屋根を書き忘れたせいで、屋根のサイズが図面と不整合になってしまいました。
また、車寄せ屋根とバルコニーが干渉していることに気づかず、こちらも図面と不整合になってしまいました。
ただ、車寄せ屋根についても初出題だったので、差はでないと思っていました。
なお、図面にも鉄骨造で計画した旨の補足を書いています。
■(6)地盤・基礎について
地盤条件を踏まえた基礎構造や基礎底面のレベルについて過不足なく書きました。
埋め戻し部については表層地盤改良を採用しました。
これについても図面に補足を書いています。
■(7)インフルエンザ・ノロウイルス対策について
こちらも初出題でした。
建築設備については換気について書いています。
インフルエンザ、ノロウイルス対策として換気が効果的ということは知っていました。
ノロウイルスの消毒の仕方なども知識としては知っていたのですが(一応、2児の母なので)、建築計画や設備計画と結びつくのは換気くらいしか思い付かず。
建築計画については解答できませんでした。入口で消毒すると書こうかと思ったのですが、建築計画の内容ではないと判断し、やめました。
ユニットの入口に手洗い場をつけたりすると良かったということを試験後に知りました、、、
■(8)空調設備について
空冷ヒートポンプを採用したので、それについて書いています。
あっさり書いて終了です。
記述まとめ
記述については、初出題についてはミスもありましたが、全体的には良く書けた方だと思います。
そもそも記述では、もし分からない問題がでた場合は、最初から捨てると決めていました。
答えの分からない記述に悩んで時間を使うより、作図やチェックに時間を回す方が良いと考えていたので、特に迷いもありませんでした。
この決断ができたのは、過去問をチェックし、今まで出題されたことがあるかどうかを判断できたからです。
私はエスキスも作図も遅かったため、記述を早く仕上げるのが絶対条件でした。
初出題が有りながらも普段通り約40分で書けたので、及第点だったと思います。
令和2年のランクⅠ答案とランクⅡ答案を自分なりに比較・分析してみましたが、プランニングという意味ではランクⅡの方も十分に力量があると感じました。
ではどこで差が付くのか?
個人的には、記述の内容だと思っています。
プランニング的に微妙な答案だったとしても、記述に説得力というか、伝える力がある答案はランクⅠに残っているように感じました。
実力の拮抗しているランクⅠとランクⅡの僅差の中で、ランクⅠに残るためには記述力も必要だと感じました。
作図
作図についてはこちらの記事で紹介した手順でやっていきました。
作図の予定の時間配分と実際の時間配分がこちらです↓
本番の作図中はさすがに細かく時間を計測できませんでした。
作図3時間経過した時点で室名が半分程度残っていたので、焦ったことを覚えています。
■⑤柱型
手順⑤で柱型を書き終わったときに、1階の利用者用階段の前が狭いことに気付きました。
ここで利用者コアのスパンを6m→7mに変えた方が良いかと一瞬考えましたが、柱の書き直しや面積計算をしなければならず、そんな時間はないと判断しました。
利用者階段の向きを変えると廊下が通らないし、法的にアウトな数字ではなかったので、そのまま進めました。
ここでスパンを変えていたら、床面積がオーバーすることになっていたので、やらなくて本当に良かったです。
ただ、試験中はスパンを変えた方が良かったんじゃないかと何度も頭をよぎりました。
■⑦コア(丸特)
⑦の手順でコアを書いたあとに、人荷用EVのサイズは2m×3mでは小さいのではないかと不安になりました。
一瞬迷いましたが、リネン室と場所を交換して書き直すことにしました。
結局3m×3mで書き直し、時間をロスしてしまいました。
■⑧内外壁(開口部の丸防)
⑧の手順で内外壁を書き進めていきましたが、2・3階の玄関やスタッフルームについて詳細を詰めていなかったため、思ったよりも作図で時間が掛かってしまいました。
■⑪断面図
手順⑪の断面図は普段から15分~20分で書いており、本試験でもそのくらいの時間で書けました。
また、本試験当日、会場にてウォームアップとして断面図を1枚書いたのですが、この練習で書いた断面図が本試験で書いた断面図と似ていて、すんなりかけました。
断面図の室名の文字入れは手順⑬でやっているのですが、平面図とは関係ない文字入れ(塔屋、設備スペース、基礎の補足、吹き抜けの丸特、吹き抜けの採光・通風、バルコニー)はこのタイミングで0.7mmのシャープペンで書いてしまいます。
バルコニーの文字入れだけ先に終わらせたのは、模試で断面図のバルコニーの文字入れを忘れたことがあったからです。
本試験でも忘れそうだったので、バルコニーだけは先に文字入れを済ませておきました。
しかし、このバルコニーの文字入れをしたことで安心してしまい、試験終了間際まで断面図の室名を記入し忘れていることに気づきませんでした。
残り2分の時点で断面図の室名は真っ白だったわけですが、この手順⑪の時点で吹き抜けの丸特などをきちんと仕上げておいたおかげで命拾いしました。
■⑫外構
外構を仕上げているときに、水勾配を書くのを忘れてしまいました、、、
令和2年では要求図書にスロープについて言及されていたため、スロープを付けなかったとしても水勾配を書くのを忘れたらヤバイだろうなと思い、課題文にもマーカーを付けていたんですが忘れてしまいました。
水勾配についてはいつも書き忘れてしまっていたので、気を付けようと思っていたのですが、練習で出来ないことはやっぱり本番でも出来ませんでした。
■⑬家具・文字
もともと什器の書き込みと文字入れが非常に遅いので、本試験でもかなり時間が掛かりました。
課題文に「多機能便所」と書いてあることに終盤で気づきましたが、すでに多機能トイレと書いてしまっていて、直している時間がありませんでした。
断面図の室名は残り2分で書けるだけ書きました。
この時、咄嗟に、主要な室名から優先して記入し、廊下やトイレは後回しにしました。
右上から順番に室名を書いていったら、主要な室名を埋めることができず、未完扱いで不合格だったかもしれません。
血の気が引いて手がぶるぶる震え、それでも何とか主要な室名は記入することができたと思います(室名が合っていたか、読める字だったかどうかは不明)。
また、試験官が答案用紙を回収していく直前、面会ラウンジを面会コーナーと書いてしまっていることに気づき、メンタル崩壊しました。
作図まとめ
作図でもいろいろとミスがありました。
①建築面積の計算式ミス
②管理ゾーンの廊下が芯々2m
③ゴミ保管庫欠落(EV移動した際に欠落した模様)
④1階利用者用階段の扉前が狭い
⑤車寄せ屋根の寸法4000を記載していない(多分)
⑥面会ラウンジ→面会コーナーと書いた(平面図、断面図とも)
⑦多機能便所→多機能トイレと書いた(3階の平面図のみ多機能便所)
⑧上部バルコニーと書いたか不明な箇所が数か所
⑨水勾配を書いていない(スロープも書いていない)
⑩断面図の室名未記入(2・3階の多機能便所、1階の廊下等)
⑪断面図の室名は時間がなく殴り書きになってしまったので書いた室名が合っているか、判別できるかが不明(未完扱いの可能性有)
⑫断面図の基礎梁なし
あと10分でもチェックする時間があれば、ミスのうちのいくつかは拾えたと思います。
特に、②と⑩・⑪はランクⅣ案件だと感じていました。
結果からすると、断面図は主要な部屋名等が書いてあったことで未完扱いにはならなかったようです。
管理側廊下の芯々2mについても令和2年の試験では減点で済んだようでした。
これから製図試験を受ける方にお伝えしたいのは、こんなミスでも合格できたということではありません。
令和2年はこのミスでも合格した人がいるというだけで、令和3年以降はまた採点のポイントが変わるので、このミスならしても大丈夫という捉え方は危険だと思います。
ただ、合格者も完璧ではなく、ミスしながらも合格していると言うことを頭の片隅に入れておいてください。
細かいミスよりも、もっと大きなところで勝負は決まっていると思います。
令和2年製図試験の合否を分けたポイントはどこだったのか?
試験終了後に、自分は不合格になるだろうなと思った理由が大きく2つありました。
一つは断面図の室名が全部記入できなかったため(しかもかなり殴り書きだった)、未完扱いになる可能性があること。
もう一つは管理側の廊下の幅を有効1.8m確保しなかったことです。
課題文でやりなさいと言われていたにも関わらず、有効1.8m確保しなかったので、リゾートホテルの時の北側客室と同じ扱いになるだろうと思いました。
今回、私を含め、管理側の廊下を芯々2mで計画した方も合格していますが、それは多くの受験生が管理側を芯々2mで計画したため、その受験生をすべて不合格にしてしまうと合格者があまりにも少なかったからだと考えています。
一級建築士の製図試験は相対評価で合否が決まるため、その年に受けた受験生の出来によって採点のポイントが変化します。
令和2年は、課題文でやりなさいと言われていたことを守れていなくても減点で済み、合格できた人もいたということですが、課題文で言われたことを守らないのは本来であれば致命傷だったと思います。
では、令和2年の製図試験において、合否を分けたポイントはなんだったのでしょうか?
私はユニットのゾーニングが勝負を決めたと思っています。
ランクⅠ、ランクⅡの図面には、ゾーニングが曖昧なものはありませんでした。
ゾーニングが曖昧なもの(ユニット間を利用者が自由に行き来できるようなもの)はランクⅢ以下の印象です。
令和2年の試験においてはユニットのゾーニングを外す=不合格だったのではないでしょうか。
ミスがありつつも満遍なく課題文の要求を満たしているものがランクⅠ、ランクⅠよりも記述が弱いものやミスがより多いものはランクⅡ、室の欠落やゾーニングが曖昧なものはランクⅢ、法規アウト・未完等はランクⅣという印象を受けました。
たまにランクの理由がはっきり分からないものもありましたが、本番では書き洩らしたものを再現図では書いてる、室名の間違いに気づいていないなどがあると思っています。
ユープラに掲載されている再現図はあくまで受験生の記憶をもとに再現されており、実際に提出した図面ではないため、検証にも限界があるという認識でいます。
ユープラの検証も細かいところではなく、大枠(令和2年でいうとユニットのゾーニング)で見てみることをおすすめします。
細かいところをチェックする能力は、自分の図面をチェックするときに遺憾なく発揮していただければと思います。
令和3年以降の製図試験はどうなっていくのか?
個人的な想像でしかありませんが、令和3年以降も製図試験は難しくなっていくと思います。
平成30年に問題用紙がA2になり、課題文の文章量は増えていく一方です。
また、法規に対する採点も非常に厳しいですし、構造や設備についての知識も必要です。
令和2年の試験を受験してみて、試験元から「あなた一級建築士の学科試験合格したんですよね?じゃあこのくらいは当然知っているでしょう?もちろん理解できてるよね?ん?」と問われているように感じました。
記述の耐震計算ルートの問いはまさしくその一つで、学科の文章問題なら暗記で解けても、それが実際はどういうことなのかを理解出来ていないと、この問いには答えられなかったと思います(残念ながら私は理解できていなかった一人)。
今後は、資格学校が教えてくれることだけをやっていても、対応できない課題が増えていくと思います。
資格学校で教わる内容はすべて出来た上で、そこからさらに建築的な常識や一級建築士として最低限身に着けるべき知識を持っているよね?と問われるような形になっていくのではないでしょうか。
最後に
2回に分けて、令和2年製図試験の私の再現図について振り返りを兼ねて分析しましたが、いかがでしたでしょうか?
こちらの記事で紹介したように、試験終了後は号泣しながら帰路につきました。
いつも出来ないことは本番でも出来ないし、あの試験会場の独特の雰囲気や緊張に負け、いつも出来ていたことすら出来なくなってしまいました。
本試験中のちょっとした気の緩みが命取りだということを身をもって痛感し、悔いの残る図面となってしまい、試験後はずっと落ち込んでいました。
資格学校の添削でもC評価だったため、合格は難しいだろうと思っていました。
結果としては合格だったわけですが、なぜ合格することができたのかを自分なりに検証をしなければ終われないと思いました。
合否発表後は、有志で行なっているユープラ検証会にも参加させてもらい、自分の図面とも向き合いながら、自分なりに分析を進めてきました。
この記事を書くことによって、私の一級建築士試験はやっと終わりを迎えられそうです。
私の考えが合っているのか、それとも間違っているのかは分かりませんが、この記事が今後の受験生に少しでもお役に立てば嬉しいです。
試験に関する情報は今後も発信していきますので、引き続きよろしくお願いいたします。
あなたの合格を心より応援しています!
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