中等度難聴、補聴器、そして…
(トップ画像は、私の使っている補聴器。耳に掛けるタイプ。黒いところが耳穴に入る。大きさがわかりやすいように、一円玉を一緒に写しています)
1.耳が聞こえない!
多分、40歳代半ばのことだと思うのだけれど、こんな事件?があった。
ある日、熱っぽかった私は、体温計で熱を測っていた。当時、まだ出始めたばかりの電子体温計、「テルモの考える体温計」というやつ。今では当たり前だけど。
1分で測れるというので、脇に挟んで待っていたのだけれど、なかなか鳴らない。そのうちに、台所にいたカミサンが一言。「鳴ったよ?」
え、全然聞こえなかった。私、耳聞こえない?
そういえば、私がテレビを見ていると、カミさんがいつも音量を下げる。やっぱり、聴こえてないのか…。
ということで、耳鼻科へ行った。
難聴らしい。
医師曰く、片方の耳は(どっちか忘れた)中耳炎の後遺症、もう片方は原因はわからない、とのこと。中耳炎って、多分小学校くらいの頃だよ。その頃から聞こえなかったのか?
私の難聴は、両方とも高音が聞こえない。小学生の頃、片方の耳が高音が聞こえない難聴になっていたけれど、もう片方の耳が聞こえているので、子供だったこともあり、気がつかなかったのだろう。
原因がわからないと言われたもう片方の耳も、思い当たる節がある。
20代前半だったと思う。当時、オーディオに凝るのが流行っていた。アンプはONKYO、チューナーはSONY、プレーヤーはマイクロ…という感じである。ある時、高音が聞こえなくなった。ツイーター(高音用のスピーカー)が壊れたのかと思い、交換してみたことがある。両方交換したのか、片方だけだったのかよく覚えていないが、結果はあまり良くならなかったと思う。
思えばこの時、壊れていたのは、ツイーターではなく、私の耳だったのではないか?そう考えると納得がいく。もともと片方の耳は高音が聞こえなかったのだ。そこにもう片方の耳も高音が聞こえなくなったのだから、完全に高音が聞こえなくなったのだ。
おそらく突発性難聴だろう。だとすると、この時すぐに病院へ行っていれば治った可能性はあるのだ。そう考えると、知識のなさが悔やまれる。
2.補聴器の片耳装用
そして、その後のいきさつは覚えていないけど、54歳の時に、「中度難聴になってわかったこと」と題して、こんな日記をmixiに書いている。
=====
日記、久しぶりのような気がします。
なんか、な~んにもやる気がしなくって・・。
更年期障害かも(笑)
さて、「難聴になって」と言ったところで、私の場合気がついたら難聴だった、と言うパターンだから、厳密に言えば違うんだけどね。
で、いくつかわかったことがあります。今日はその一つを紹介。
難聴ですから、当然、人の声が聞き取れない事があるんです。
大勢で話している時、二人で話している時、いろいろですけどね。
最初の頃は聞き返すんですけど、カミサンとか娘とか、鬱陶しいらしく(当然ですが)、怒ったように繰り返したりします。そうでなくても、大きな声で繰り返されると、聞いている方には怒っているように聞こえます。
そういうことが度重なると、聞き返すのが怖いし、悪いような気がするし、
何となく面倒で、もう聞き返さなくなってしまいます。
3人以上ならそのままやり過ごし、二人の時は聞き取れているようなフリをします。
ですから、時々とんちんかんな答えをしたり・・・。
多分、こうして周りとコミュニケーションが取れなくなっていくんでしょうね。
私の場合は、その前に補聴器、使い始めました。
まだ効果のほどはわかりませんが、確実に以前よりは聞こえています。
正常な人と同じとは行かないまでも、異常ではない程度に聞こえているわけですから、私の今の目標は、
「聞き取れなかったら遠慮なく聞き返すこと」
です。しかし、いったん身についた習慣はそう簡単には変わりません。
きょうも、「あ、しまった」と思ったことが何度かありました。
ま、気長に頑張ります。
=====
(2009.10.21 mixi 原文のまま)
「聞き取れなかったら聞き返す」当たり前だよね。その「当たり前」ができてなかったの。
思えばテレビの音量もそうだ。みんながいる時は、私に合わせるとやかましいだろうと、家族に合わせていると、自分は聞こえないので、みんなの会話に参加できない。コミュニケーションは取れなくなるよね。
このときは、医者の紹介で、リケンで補聴器を買った。より聴こえない右耳だけに補聴器をつけた。補聴器って、すごく高いの。多分、このときに買ったのは25万円くらい。だから片方だけ。
この手の補聴器って、設定項目がたくさんあって、合わせるのが大変。例えば、聴力を、低音から高音まで、何段階かに分けて調べて、補聴器をそれに合わせるのだけれど、でも、1週間くらいして、例えばキンキンしすぎるとか、聞こえにくいとか、いろいろ不都合が出てくるから、再調整する。これの繰り返し。落ち着くまで、3ヶ月くらいかかったかな。
このとき思ったこと。調節は難しい。だって、私は正常な人がどう聞こえているのかわからないし、リケンの技術者は、私がどう聞こえているのかわからない。
3.補聴器、壊れる
その高価で手間のかかった補聴器、全然防水が効いてない。一度、補聴器をつけたままシャワーを浴びそうになって、ヒヤッとしたことがあった。
その後、お風呂に入る時は気をつけていたけど、基本、家にいる時も補聴器はつけていた。ある時、補聴器が故障して修理に出したんだけど、どうも、浸水して故障したらしい。話を聞いていると、風呂上がりにつけていたのがいけないらしくって、お風呂上がったばかりは耳の中が湿っていて、補聴器が水分で故障するらしい。
そんなこんなもあり、電池代もかさむので、家では補聴器をつけなくなった。家族はあきらめているし、怒鳴るような口調は避けてくれているようだ。テレビの音声は、家族に合わせて音量が調節してあるので、半分くらいしか聞き取れない。なので、バラエティー番組などのテロップは重宝している。
こういうエピソードもあった。私は、仕事の都合上、セミナーとかにもよく参加していた。あるセミナーに参加した時、その最中に誰かの携帯が鳴った。「ピピピピ」という甲高い音である。右後ろから聞こえた気がして、振り返ったが、立ち上がって出口に向ったのは、左後ろに座っていた人だった。補聴器で調整したおかげで、右の耳だけ良く聞こえるようになっているため、脳が高い音が右から聞こえたと判断したのだろう。
4.そして、両耳装用へ
補聴器の寿命は5年と言われている、とリケンで聞いていた。ちょうど5年くらいたったところで、今の仕事である、調剤薬剤師に転職することになった。接客業で、耳が遠いではやってられない。これを機に、両耳装用にし、ついでに補聴器も新しくした。
防水の補聴器もあるそうだけど、その他機能があまり良くないので、防水のない補聴器にした。50万円の出費である。仕事の道具だと思って割り切った。
最初からつけているので比較はできないが、多分、聞き返す頻度は下がっていると思う。でも、コロナ禍でマスクの人が増え、以前に比べれば聞き返す頻度も増えた。患者さんから「聴こえてます?」と言われた時は、難聴を非難されている気がしてやるせなくなった。患者さんは私の難聴を知らないので、そんなつもりがないのはよくわかっているけれど。
両耳装用は、片耳装用に比べてはるかに自然に聴こえている。それでも不便なことは幾つかある。
5.両耳装用は快適だけど…
電話の時、右利きの私は左手で受話器を取る癖がついている。右耳だけの装用の時はよかったけど、両耳装用になってから、左耳で電話を聞くとかなり聞きにくいことが分かった。「耳から少し離して」って言われたけど、離してもよく聴こえない。しょうがないので、電話を取る時は(もちろん、かける時も)一旦、左耳の補聴器を外している。
イヤホンやヘッドホンをする時は、当然、外さなければならない。音楽なんかを聞くと、左耳の方がよく聞こえるので、音が左に寄って聞こえる。これは気にならないことも多い。余談だけど、右耳だけで聞くと、音質的に聞けたものじゃない。単に音が小さいというだけではないことがよくわかる。
体温計も普通のでは間に合わない。体温を測ろうという時に、補聴器をつけていないことは多いはず。カミさんが「音が大きめ」という体温計を買ってきてくれたが、やっぱり聴こえなかった。私が以前に買ってきた「老人用」という体温計なら聞こえる。
その辺りのことは考えられているんだろうけど、やっぱり耳に異物を入れていることには変わりがない。少し耳が痒くなったり、ヒリヒリ、までは行かないけど、異物感があったりする。スピーカーの部分に耳垢が詰まって聴こえなくなることもある。定期的な掃除も必要だ。
6.やっぱり補聴器さまさまです
この辺りは閑静とした住宅街で、緑も多く、秋になると鈴虫やコウロギなどがやかましいくらいに鳴く。仕事から帰って車から降りて、今日もやかましいなあ、と思いながら、くつろぐために部屋で補聴器を外すと、急に静寂が訪れる。補聴器の威力を実感する瞬間。
不便なこともあり、面倒なこともあり、高価でもあり、正常な人のようには聴こえないけど、でも、今の私には手放せない。普段から外に出ているような生活をしている間は、使い続けるだろうと思う。
後は、防水の効いたいい補聴器があるといいなぁ。もうちょっとスムーズにBlueToothと繫がるといいなぁ。今の補聴器は改善されているのかな?
それから、「聞き取れなかったら聞き返す」、お陰様で今はかなりできています。まだ時々スルーするけどね。