クロック精度とタイムコード同期
※この記事は自分の覚え書きです。
この内容を実践して万が一トラブルが起きても、当方では責任を負いかねますのでご了承ください。
今度、音楽関係のイベントの舞台撮影があるので、その準備を進めています。
ミキサーはTASCAM MODEL16とSound Craft EPM6を使用する予定です。
EPM6はファンタム電源用で、舞台上に置いてあるバウンダリーマイク PCC160にファンタム電源を供給するために使用します。
EPM6の音声をMODEL16へ送り、ファンタム電源を使わないワイヤレスマイクなども含めてMODEL 16でミキシング・録音を行います。
EPM6の音声は会場内に拡声する目的で使用します。
それとは別に、天吊りマイクから音声をもらい、ZOOM F6で演奏の収録を行う予定です。
ここで問題になってくるのが、MODEL 16とZOOM F6でのクロック精度によるズレです。
要するに、タイミングを合わせて録音を行っても、長時間の録音になると徐々にずれることがあります。
高価な機材を用いればワイヤレスでぴったり合わせることができるのですが、できるだけお金を掛けずに手持ちの機材で合わせるためにはどうしたら良いか?が今回の内容です。
音声の同期
タイムコードを用いる
タイムコードはLTC信号を機器間で共有して、映像や音声のタイミングを合わせるためのものです。
詳しくは下記参照
ZOOM F6はタイムコード入出力に対応しており、高精度のオシレーターを搭載しています。この機能を活用することで、クロックのズレを防ぐことができます。
ZOOM F6は高精度なタイムコードを出力できるので、F6をマスタークロックとして、タイムコードを出力して使用したいと思います。
MODEL 16でタイムコードを受ける
MODEL16にはタイムコードを同期するための入出力端子はついていません。
それではどうすると良いかというと、
ZOOM F6のLTC信号(TimeCode OUT)をMODEL16のライン入力に接続し、MODEL 16で録音する際に、F6のLTC信号も同時に録音します。
ポスト処理で録音されたタイムコード音声を基準にMODEL 16とF6の音声を同期させます。
タイムコード同期はTENTACLE TIMECODE TOOLで可能です。
映像の同期
カメラの映像も録音した音声と同期させたい
カメラで別撮りで映像を撮影します。音声はF6やMODEL16の音声を利用したい・・・
そのような場合にも、先ほどと同じような問題が生じます。
カメラ内でもタイムコードを走らせられる機器はあるのですが、クロック精度が原因で長時間の撮影を行っていると、徐々に映像がずれてきます。
タイムコードを同期させる
単純な話し、先ほどと同じようにカメラでもタイムコードを同期させればいいのです。
業務器やハイエンド機であれば、タイムコードの入出力端子がついているので、タイムコードを受けることが出来ます。
F6からのLTC信号をそれぞれのカメラに入れればOKです。
タイムコード入力がないカメラについては、F6からのLTC出力をカメラの音声入力に接続し、LTC信号を音声トラックとして録音(録画)します。
先ほどのTENTACLE TIMECODE TOOLを使うことで、後処理で映像データのタイムコードを同期することが出来ます。
しかし、いくつかの注意点があります。
【注意点①】カメラのタイムコード同期
・カメラと、F6の設定でフレームレートをそろえておく必要があります(例:29.97fps)
・LTC信号の入力時に録音レベルに注意しなければいけません。信号レベルがあまり大きすぎると認識しない傾向がありました。(特にカメラはコンプやリミッターがかかってしまうため、音量レベルには特に気をつけた方がいいと思います。)
・クリップの最初にLTC信号がないとタイムコードを同期できなくなります。
【注意点②】録画データは細かくファイル分割を
LTC信号を音声入力でタイムコードを同期するカメラについては、クリップの先頭部分が正しいタイムコードになるだけで、映像全体がタイムコードシンクロするわけではありません。
つまり、いくらLTC信号で同期しても、長時間にわたる撮影になると徐々にずれてしまいます。
それを防ぐために、録画をノンストップで続けるのではなく、定期的(例:30分おきなど)に録画ファイルを分割するようにすると、クリップが分割されたタイミングで再び正しいタイムコードを取得することが出来るため、タイムコードが大きくずれるのを防ぐことが出来ます。
カメラによっては、「○分ごとにファイルを分割する」といった設定が可能なカメラもありますので、それを利用するといいでしょう。
また、ファイルを分割すると、途中電源が抜けてファイルが生成できなかった場合のデータ消失のリスクも減らすことが出来るためオススメです。
LTC信号の分配
F6からのLTC信号をミキサーやカメラなど、複数の機器に入力したい場合は、分配器が必要です。
LTC信号はアナログ信号なので、安価なアナログビデオ分配器を使用できます。
こちらの商品でタイムコード信号を分配できたという情報がありました。
何か手持ちの機材でできないかな・・・と考えて、うちにマスプロのAV分配器があるのを思い出しました。
こちらはコンポジット(RCA)の1入力・4出力のAV分配器です。
アナログビデオ時代に使っておりましたが、デジタルに移行したため、日の目を浴びることは無くなっていました・・・こんなところで活用できるとは!
LTC信号はLかRどちらかに入っていればいいので、タイムコード信号をこちらの分配器にいれれば、LR×4ch=実質8分配が可能になると思われます。
【追記】
上記の方法を試したところ、F6のTC信号は白ピン(L)からはTCに認識できず、赤ピン(R)からはTC認識しました。
そこで、ステレオミニをモノラル変換し、モノラルでLR両方に分配して入れたところ、LRどちらからでも認識するようになりました。
ただし、カメラによっては入力レベルを最低にしても入力過大になるため、間に下記のような物を噛まして信号を減衰させた方がいいです。
私の所有するカメラですと、
GH5M2は-20dB程度の減衰器が必要(なしでは適正レベルにできない)
GH5Sは減衰器なしでも-20dBの減衰があっても適正レベルの範囲内にできる
FZH1は-40dBの減衰をかけないと適正レベルにならない
という感じでした。
ただし、HC-X2については、Time code IN/OUTがついており、マスプロの分配器からピンで出してBNCで変換してつないであげるとF6とのタイムコード同期が可能になるのですが、減衰をかけるとタイムコードを認識しなくなってしまいました。
LかRどちらかだけ減衰をかけて、使い分けるもいいかもしれせん。
電源ノイズの問題
気をつけないといけないのが、タイムコードを分配器でつないだ際に、分配器やカメラなどの機器の電源を共通にしてしまうと、グラウンドループが発生し、タイムコード信号に干渉する可能性があります。
タイムコード信号も強い信号なので、もしかしたら問題なく使えるかもしれませんが、念のため確認したほうが安心だと思います。
もし、TC信号を読み取れないなどの問題があった場合は、個別に電源を用意するか、バッテリーを使用すると解決すると思われます。
タイムコード信号をワイヤレスで送る
PA卓の近くにカメラが近くにあれば簡単に信号をもらえるのでいいのですが、少し離れた位置にカメラがあるとそこまで線をはわすのも大変になります。
そこで考えたのがワイヤレスでTC信号を送るという方法です。
下記の機器を用いてやってみます。
実験してみたところ、正常に動作し、ズレは2フレーム以内に収まりました。
ステレオでLTC信号+ミキサーから音声を送る
LTC信号はLかRのどちらかに入っていれば問題なく認識するので、もう一方にミキサーからの音を入れておくと、万が一LTC信号を認識しなかったときにタイミングを合わせるための保険になります。
私は舞台袖のPA席から離れたカメラに、LTC信号とミキサーの音声をワイヤレスで送ってカメラで録音しようと思っています。
もしLTC信号がうまく認識しなかった場合でも、ミキサーの音声を使えばタイミングを合わせるのが容易になりますね。
LTC信号をラインやワイヤレスで送るのは問題ないのか?
FFさんからも教えていただきました。規格的には、特に問題なく使えるそうです。
なるほど、「レベルメーターなら-10VU、PCMピーク0dBからだと-35dBくらい」なので、やはり音量はあまり大きくない方がいいんですね。
実は昨年、何度も実験してできることを確かめたのですが…TC信号は映像データに含まれていたものの、実際ソフトでタイムコードを変換したところ、うまく認識せず失敗に終わってしまいました。
そのときは原因が分からなかったのですが、今考えると恐らく過大入力の状態でワイヤレスで送ってしまったことが原因だったんじゃないかな?と思います。
今回は上記のような方法で基本有線で、カメラの位置が遠い箇所だけワイヤレスでLTC信号を送ってトライしてみようと思っています!
以上になります。
(あまり参考になる方はいないとは思いますが、)どなたかの参考になれば幸いです。