サーキュラーエコノミー型企業3社をマーケティングトレースしてみた
2020/4/11、「新しい経済のありかた サーキュラーエコノミーの最新事例をトレースしよう!」と題したオンラインイベントを開催しました!
SDGsの達成目標が10年後にせまった今、国内外の企業や団体がどのように社会課題に取り組み、顧客を巻き込んでいるのかを知り、社会課題のマーケティングを学ぶことを目的としたイベントです。
このイベントは、私たちmorning after cutting my hair,inc.とマーケティングトレースの黒澤友貴さん(@KurosawaTomoki)との共同主催により実現しました。
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マーケティングトレース*としては初めてのオンラインイベント、私たちとしては初めてのマーケティングトレースイベント…! どうなることかと緊張していましたが、申し込みは定員満員となり、感想を聞いている限りではそれぞれに新しい発見や学びを得てもらえる充実したイベントにすることができたようです。
ご参加していただいたみなさま、本当にありがとうございました!
マーケティングトレースとは
*マーケティングトレースとは
成功企業の裏側にあるマーケティング戦略を、言語化・図解してトレース(分析)し、最後は「自分がCMOだったら?」を考えるトレーニング(マーケターの筋トレ)のこと。
詳細はこちら
企業の戦略やマーケティングについて、調査からフレームワークを使った外部環境分析、競合調査、ターゲット、企業の成功要因…などについてまとめ、「自分ならこの企業をどうやってもっと発展させるか」を考えるという一連の流れを行っていきます。
サーキュラーエコノミーとは
今回のイベント、社会課題×マーケティングトレースの第1回のテーマは、ヨーロッパを中心に取組みが進んでいる「サーキュラーエコノミー*」。
大量生産・大量消費・大量廃棄の経済から脱却し、持続可能性を高めつつ大きな経済効果も期待されているサーキュラーエコノミーですが、COVID-19による様々な活動の自粛が世界各地で求められているなか、限られた資源を活用して経済を円滑に回していく仕組みからは今まさに学べることも多いはずと思い、第1回目のテーマとして選びました。
*サーキュラーエコノミーとは
大量生産大量消費の経済や、公害と環境汚染により注目された3Rの経済からさらに発展した「資源の枯渇と不可逆的発展による循環型経済」のこと。
主な特徴は以下の5タイプにわけられるといわれており、今回はこのタイプに当てはまる特徴的な企業をターゲット企業として選びました。
1. サーキュラー型のサプライチェーン
(再生可能な原料を使用)
2. 回収とリサイクル
(廃棄前提だったものを再利用)
3. 製品寿命の延長
(修理、アップグレード、再販売)
4. シェアリングプラットフォーム
(保有しているものを貸して収入を得る)
5. サービスとしての製品
(顧客は所有せずに、利用に応じて支払う)
今回のターゲット企業はこの3社!
❶Signify
SaaSならぬLaas(Light as a Service)を展開するオランダの照明製品・システム・サービスの企業。
❷Fairphone
全てのパーツをユーザーが組み立て分解・修理できるスマホを販売する企業。ビジネスの透明化にも注力しており「エシカルなスマホ」と呼ばれる。
❸MUD Jeans
工場でのリサイクル可能なジーンズの販売・回収をおこなう企業。ジーンズのサブスクビジネスも行い、循環型のビジネスモデルを実現。
今回のイベントでは、各企業に5〜6名ずつを配置して、それぞれ40分間の個人ワーク、その後グループで代表者を決めて全体に発表するという流れで進めました。
本来はもっと時間をかけておこなうマーケティングトレースですが、今回はオンラインのイベントということもあり、集中力の持続時間や各自の経験値などを考慮し、この時間で区切るショートver.でおこなっています。
それでは、40分という短い時間で各チームがまとめたマーケティングトレースワークシートをもとに、イベントの中で出た意見などを少しご紹介していきます。
01.Signifyをトレースしてみた
「Signify」は、オランダに本社を置く照明の製品・システム・サービスを提供する企業。
これまでの電球・照明を提供するビジネスとは異なり、「明るさ」を提供して照明インフラの運用を担うSaaSならぬ、Laas(Light as a Service)を展開している。
Light as a Serviceは、IoTプラットフォームを用いて電力消費を抑えるシミュレーションを提供しながら、削減できた電力料金の額に応じて報酬を得るというビジネスモデル(Pay-by-the-Lux)。
建物だけでなく、街全体の照明管理も統括しておこなうことで交通整理や治安改善にも貢献が期待されています。
|40分で整理したワークシートはこちら! (参加者 大多和さん作成)
|見えてきたSignifyの特徴
・物売りだと高いが、サービス売りと解釈することで価値を出している特徴がある。
・顧客価値へのフォーカス「照明体験」。
・もともと電球や照明をおろしていたサービスだが、「照明(モノ)を売る」ではなく「明るさを売る」という発想が面白く、新しい。その思い切った転換が最大の特徴とも言える。
|もしも自分がCMOだったら
正直サイトや記事を読んでも「何をやっているのか」がわかりにくい。WEBなどを含め、社名・サービスとしてのブランド統一をして発信していくと良いなと思った。
▶️BtoBメインであれば、直接説明する機会が多いのでWEBはそこまで重要ではないという考え方もできるかもしれないけれど、どうか?
▶️確かにBtoBメインではあるものの、それにしたって調べた時にあまりにわかりづらかった。「何をやっているのか」の見せ方は、最低限意識して打ち出す方が良さそう。
02.Fairphoneをトレースしてみた
「Fairphone」は、オランダに本社を置くスマートフォンメーカーです。
全てのパーツをユーザー自身が組み立て・分解し、欲しい機能だけ付属させたり、必要なパーツや壊れたパーツだけを取り寄せて修理をすることができます。
また、壊れたパーツや使われなくなったスマホ(他社製品も含む)も回収し、リユース・リサイクルをも徹底。
生産地の大きな紛争の原因ともなっている鉱物等は極力使わず、鉱物生産から組み立てまでの工程をサイト上に公開するなどビジネスの透明化も推進しており「エシカルなスマホ」と紹介されることが多い企業です。
|40分で整理したワークシートはこちら! (参加者 Kasuyaさん作成)
|見えてきたFairphoneの特徴
・修理しやすいモジュールに特化したスマホ
・ユーザーコミュニティを形成した参加型の売り方が特徴的
・自分たちのライフスタイル・思想を踏まえたスマホを通じたコミュニケーションが成り立つ
・買い替え前提ではなく、ずっと使い続ける前提の商品・サービス。
・「なぜこのカスタムをしたか」の思考の過程がそれぞれのオリジナルになり、アイデンティティの表明になる。
・こだわるところはこだわりたい・それ以外はどうでもいいという人の嗜好にフィットしたのかも。
|もしも自分がCMOだったら
そのコミュニティ経由で「大事な人に贈る」文化やキャンペーンを推せたらいいなと思った。チーム内で、社用携帯などのBtoB向けもいいんじゃないかという意見もあって面白いなと思った。
03.MUD Jeansをトレースしてみた
オランダ発のジーンズブランド「MUD Jeans」。
これまで購入から1年足らずで捨てられてしまうことも多いジーンズを、工場でのリサイクルが可能な素材を用いて販売。
また、ジーンズのサブスクリプションモデルでのサービスも展開しており、ユーザーは1年間のリースののち返却するか買い取るかを選択することができる。
使用済みのジーンズはすべて回収され、また工場で新しいジーンズとして生まれ変わるなど、循環型のビジネスモデルを実現している。
|40分で整理したワークシートはこちら! (参加者 SPODIGIさん作成)
|見えてきたMUD Jeansの特徴
・1年間リースのデニム販売が特徴的なサービス
・サステイナブルレポートなどの発信もしっかりされている
・アンバサダー制度が特徴的
・リサイクルデニムはあくまで自分たちの世界観を表現する「メディア」として活用しているのではないかと感じた。メッセージを受け取った人がすぐに行動にうつしやすい価格・サービス設計が特徴でもあると思った。
|もしも自分がCMOだったら
世界的認知を高めるためにもサッカーチームのスポンサードを取り入れたり、コロナの状況を絡めると、ズボン・マスクを医療関係者や不足している人々に提供するなどもできそう。
▶️リサイクルジーンズの布地が「いつ使われていたものなのか」までトレースして、そのストーリーごと届けられるなど、「ストーリーを尖らせきる」というのもできるかも。
▶️ジーンズのサブスクモデルだと競合も多く、最近はファストファッション大手もリサイクルなどに取り組み始めている。本質としては環境配慮への徹底・ビジネスモデルや企業の取り組みの透明性の徹底にキーがありそう。何ができるだろう…?
さいごに
当初は実際にみんなで会ってマーケティングトレースをすることで、その場の空気感や連帯感が生み出せたり(相談しやすかったり)、イベントの前後での雑談が実は学びを深めることに繋がると思っていたので、今回急遽オンラインでの開催になったことは少し残念でした…。
しかし!
オンラインだからこそ「同じタイミングで、同じ情報を全員で得ることができる」ことや、google driveやzoomを全員で同時編集することで、「今、誰がどんなことをしているか」がよくわかるというメリットも体験することができてよかったです!
なんとなく、「オフラインミーティングの方がたくさんの情報を得られる」と思いがちですが、「実は今この人が何をやっているかわかりづらい」ということもあるし、オンラインだと喋るのが苦手でもチャットで意見を言えたりといった、それぞれの良さを再認識することもできました。
マーケティングトレースをすることで、さらに社会とビジネスのつながりや、その企業のことをより知れたり、今回で言えば社会課題について身近に感じることができたり、企画した私たちもすごく楽しかったです!
参加された皆さんからも、第二回も参加したい!もっと予習してから参加したい!などたくさんのご意見ご感想をいただけたので、第二回の準備にもう取り掛かろうと思います◎
ご参加頂いた皆様、ありがとうございました〜!
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本企画は、弊社morning after cutting my hair,Inc.とマーケティングトレース会を企画運営されている黒澤友貴さんとの共同企画で開催しました。