喪失から始まったもの

イギリスのポストパンクの代表といえばニューオーダー、マガジン、フォール、なんて挙げていけばキリがないけど。
面白いのは最初で唯一のパンク(そんな事はないと思うけど便宜上ね)セックスピストルズの空中分解で全てを(ジョニーロットンの名前すら)失ったジョンライドンが起こした次のアクションがポストパンクというジャンルの最初のバンドPILで、また、カリスマ的なフロントマンを失った中から再起したニューオーダーがその後大ヒットしたり、ポストパンクは喪失から始まったもの、あるいは、何かの喪失を抱えている人が惹かれる音楽なのかもしれないと思って。
話は変わって、昔宝島かなんかのインタビュー記事でパンクを通ってないバンドは信じないみたいな話を、日本の、バンドブームの中心にいたバンドの人が言ってて、まあ熱量の話というか、多分1963年くらいの生まれの人が、初期衝動がパンクじゃなかったら何なのよ、って話だと思うけど、海外の90年代のぐしゃぐしゃなロックシーンで台頭していたバンドの多くも幼少期パンクロックの嵐を体験した人が多かった気がする。80年代なんかは、嵐のど真ん中にいました、みたいな人がピストルズを見て、ジョニーロットンに死ぬほど焦がれた人がバンドを始めて…みたいな逸話を全部のバンドが持ってて、もう、全員そう、みたいに思ってたけど多分そうじゃなくて俺の観測範囲が狭かったんだろうし、ハードロックやポップスからバンドを始めた人かほとんどだろうけど、でもイギリス人はみんなクラッシュ好きだったでしょ、って今でも信じてる。
1977年頃に、もしロンドンにいたとしたら自分は今すごい渦の中にいると思ったろうし、マンチェスターで、ベルファストで、エジンバラで、ニューキャッスルで、あらゆる場所で世界が変わるんじゃないかと感じたかもしれない。それがあれよあれよという間にセックスピストルズはもう居なくなって、クラッシュは嘘くさいアメリカのバンドになってしまって、時代は全然良くならない、俺の生活は最低のまま、狂騒から取り残された人達の、おい、どないしてくれんねん、っていうのがポストパンクの本質だったような気がする。
スコットランドのパンクロック以降と言えばエクスプロイテッドと、それとアズティックカメラがいる。何で突然スコットランドというとこのアズティックスの歌詞がとてもポストパンク的で、怒りに任せるのではなく、しかしとても身近な事を歌うポリティカルソングなので無理矢理ねじ込みました。
"Faces of Strummer that fell from your wall
And nothing was left where they hung"
ジョーストラマーのポスターが壁から剥がれてる、その後に貼るものは何も無いというね、ほろ苦い喪失感(少年のそれ)は、通過儀礼というか、青春の蹉跌のそれ。ネオアコのレビューに、よくほろ苦いなんてあったけど、この歌詞のこの一節がほろ苦いんで、他はそんなでもなく難しい分数コードを使ってサラッとしたポップスみたいに歌うから、タイトルのWalk out to winterがなんかロマンチックな響きに聞こえるけど、冬の時代に向かって進んで行こうというプロテストソングで、凄く胸にくる。「君は食糧配給を待つ失業者の列で凄く怒ってる」「君は行き詰まって立ち止まり、何故だろうと考えてる」「この世代もいずれ壁にぶつかるだろう、でも僕は怒りはしない、ギアをいれてここから抜け出そう」と。なんだ、世界は全然良くなってないじゃないか。ロディフレイムはプロテストシンガーでビリーブラックと近い人かもしれないね。全然関係ないけどビリーブラックはダイヤルハウスがあるエセックス州の人ですね。
あとエクスプロイテッドのビックジョンダンカンはグッバイミスターマッケンジーでギター弾いてます。
まあ、何をつらつらと書いてるかと言うと。次のTシャツのコマーシャルですよ。秋頃にそんなTシャツを発売した時は、トチ狂ったわけでなく、ちゃんとパンクの続きとしてやってますよという話。

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