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サンクコストという泥沼から脱出しよう

サンクコスト(Sunk Cost)とは、すでに支払われていて取り戻すことができない費用のことを指します。サンキューのThank ではありません。決してありがたい費用ではないのです。

「サンク(Sunk)」という言葉は「沈む」「沈んだ」を意味し、過去に費やされたお金や時間、労力が回収不可能であることを示しています。この概念は、お金だけでなく、時間や労力も含まれます。ビジネスや経済学において、サンクコストは意思決定に影響を及ぼす重要な要素です。

サンクコストの起源と普及

サンクコストの概念は19世紀の経済学者たちによってすでに議論されていましたが、特に重要な役割を果たしたのは以下の経済学者たちです。

  1. ポール・サミュエルソン: アメリカの経済学者ポール・サミュエルソンは、サンクコストの概念を一般に広めた人物の一人です。彼の著作や教科書は、多くの経済学者やビジネスマンに影響を与えました。

  2. リチャード・セイラー: 行動経済学者リチャード・セイラーも、サンクコストの影響について詳細に研究し、その普及に貢献しました。彼はサンクコストが人々の意思決定にどのように影響を与えるかを示し、行動経済学の重要な要素として位置づけました。

サンクコストの特徴

  1. 過去の費用: サンクコストは過去に発生した費用であり、現在や未来の意思決定に影響を与えるべきではありません。

  2. 回収不能: 一度支払われたサンクコストは、どのような手段をとっても回収することができません。

  3. 感情的な影響: 人々はしばしば「もったいない」という感情に囚われ、サンクコストに関して非合理的な決定を下すことがあります。これは「サンクコストの誤謬」と呼ばれます。

サンクコストの例

  1. つまらない映画: 映画のチケットを購入し、見始めたが映画が面白くなかった場合、その見た時間とチケット代金はサンクコストです。この場合、「もったいない」と感じて最後まで見るのではなく、映画を途中でやめて他の有益な活動に時間を使う方が合理的です。

  2. プロジェクト投資: 企業が新しいプロジェクトに多額の資金を投じたが、そのプロジェクトがうまくいかないと判断された場合、その投資額はサンクコストとなります。「これまでの投資がもったいない」と感じるかもしれません。また、メンツというのも泥沼化する要因です。プロジェクトを続行するかどうかは、これ以上の投資が利益を生むかどうかで判断するべきです。

  3. 株式投資: 購入した株が大きく下落した場合、その購入費用はサンクコストとなります。多くの投資家は「もったいない」と感じて損切り(売却)を躊躇しますが、将来の見込みが悪い場合は、損切りして資金を他の有望な投資先に回す方が合理的です。

  4. 時間と労力: 長時間と労力を費やしたプロジェクトや関係がうまくいかない場合、その時間と労力はサンクコストです。「これまでの努力がもったいない」と感じるかもしれませんが、今後の見込みが良くない場合は、そのプロジェクトや関係を見直すことが重要です。

  5. 賭け事: すでに賭けたお金はサンクコストです。「負けを取り返そう」としてさらに多額のお金を賭けるのではなく、冷静に次の行動を考えるべきです。

サンクコストから逃れる術

  1. 認識する: まず、サンクコストが存在することを認識します。これにより、過去の費用にとらわれず、現在の状況を冷静に判断できます。

  2. 感情を切り離す: 「もったいない」という感情を認識し、それが意思決定に影響を与えないようにします。

  3. 未来志向の判断: 現在と未来の利益やコストに基づいて判断を下すことが重要です。過去の費用にとらわれず、最も合理的な選択をします。

  4. コストと利益の分析: 各選択肢のコストと利益を比較し、どちらが将来的に有益かを分析します。

まとめ

サンクコストは、すでに発生して取り戻すことができない費用です。「サンク」という言葉が示す通り、これらの費用は「沈んで」おり、回収不可能です。「もったいない」と感じる感情は自然ですが、意思決定を行う際にはサンクコストを無視し、現在と未来の状況に基づいて合理的な判断を行うことが重要です。サンクコストから逃れるためには、感情を切り離し、未来志向で判断することが求められます。

参考図書


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