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Get a new position - Challenges by Ms Thandeka

テンデッカちゃんは面接に受かって、高級ステーキハウスで働くことになった。母屋で面接の練習をしていたときの緊張した面持ちから一変して、彼女はとてもうれしそうに、高級ステーキハウスのメニューを手に大家さんと帰ってきた。

これまでレストランで働いた経験のない彼女は社員ではなく、研修生として採用された。3ヵ月の研修期間中にいつでも自分で合格できると思ったタイミングで試験を受けて、試験に受かったら正式採用という条件だった。試験回数は2回まで。2回とも不合格だと高級ステーキハウスでのキャリアは残念ながらそこまでということになる。マネージャーの話しだと早い人は3週間くらいで合格レベルになるらしい。

研修生にサラリーは出ない。仕送りを待っている村の家族のためにも無給というわけにもいかず、大家さんが最大3か月間の彼女のサラリーを彼女に支払う。勤務時間は朝11時から21時までだったり、14時から23時までだったり曜日やシフトによって異なり、途中昼休みが1時間。週休一日。乗合タクシーで約1時間半かかる彼女の自宅から毎日通うのは時間的にも厳しいだろうし、少しでも彼女が新しい仕事に集中できるようにと、高級ステーキハウスの近所にある大家さんの自宅に住むことになった。つまり、テンデッカちゃんは私の隣の部屋に引っ越してきた。家賃は無料。

村の高校を卒業して、村に仕事がないため町の工場で働いて収入を得て、収入は一向に上がらず、そこからもう一歩踏み出そうとすると、そのためには資金が必要で、その資金にアクセスできるかどうかで人生の選択肢は全く異なる。今回大家さんが負担することにした金額は家賃収入の機会損失も含めて毎月ZAR10,000(≒JPY80,000)くらい。その3ヵ月分だと彼女の工場勤務の時のサラリーの約半年分にもなる。自己資金で作ろうとしたら気が遠くなるほど時間が掛かる。個人の努力では限界があると思わざるを得ない。

驚くのは、彼女が働いていた工場は南アフリカでもトップクラスの大手リテーラーの下請けとして肉加工製品を卸している会社だったこと。グローバルブランドの社会的責任や途上国での労働力搾取等が問題視される中で、もしかすると彼女の工場でも同じようなことが起こっていたのかもしれない。

テンデッカちゃんの挑戦は続く。

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