夢の途中 #第5夜
初めましてのみなさまも、おなじみのあなたもこんにちは、MAKIです。
さて、前回の更新からひと月が経ってしまいました。師走の候、いかがお過ごしでしょうか。
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わたしが出遭ってしまったその夢は、
かつて、恋い慕う方に求めていたオンナである価値を最大級に実感の出来るもので、わたしはその世界に瞬く間にのめり込んでいきました。
働きすぎる日本人がその是非を問うことになって久しい昨今、
わたしときたら本業の休みの日にはほぼ全夜顔を出し、常連のお客さまと愉しく飲み交わし、初めましての方と色気とユーモアのある会話に花を咲かせ、それはそれは充実した日々でした。
特定の恋人がいない寂しさは、
週に数時間、カウンターのなかで過ごすひとときがすべて埋めてくれました。
これまで、男のひとに負けないように、張り合って、強がって、弱みを見せずに生きてきたつもりだった20代を憂うのでした。
オンナだと認めて、あきらめて、堂々と、弱くてお茶目な自分を見せれば、ひとはかわいがってくださるし守ってくださることを知りました。
それは、とある街の、小さな小さな路地の古びたスナックのなかだけの話のようで、実は社会の縮図なのだなぁと悟るのです。
それから、
わたしの手に取るもの身に付けるものは瞬く間に変わっていきました。
身体のラインがわかるタイトスカート、
普段よりワンサイズ小さいトップス、
大ぶりのイヤリング、
ピンク色のチーク、
深紅のルージュ、
あの頃、あざとさを全面に出している女性たちをどこか蔑んでいたわたしが見たらたいそう驚くだろうクローゼットに様変わりしたわたしの人生は、日に日に満たされていくのでした。
醒めない夢ならいいのに。
まるでカウンターのなかの自分がほんとうのわたしのようで、いつだって夢の途中にいたのです。
これまでわたしを愛してくれていた男のひとたちに出来なかった素直でかわいい女の子な振る舞いを、カウンターのなかにいるわたしという人格が20代の自分を償うように体現することとなるのです。
つづく