ピルを飲んでいたころの話。 #第2夜
初めましてのみなさまも、おなじみのあなたもこんにちは、MAKIです。
生命力というのか執着というべきか
いまは迎えられないと頭で理解していながらも
カラダはそんなわたしを嘲笑うかのように
ちゃっかり準備を続けていたりして
大切なわたしの可能性たちよ
サナギにさえなれなくてごめん、と
オンナとしての執念を肌で感じる今日この頃、
あなたにおかれましては、
糊の利いたビジネスコートを羽織る季節になっても、相変わらず踝の見えるスーツの着こなしで毎日をやり過ごしていることと拝察いたします。
さて、
そんなわたしが低容量ピルを服用していたのは
26歳から3年間。
いま思えば、
婚活市場で売れに売れるはずの時代でした。
海外旅行にいくあいだに
生理を被せたくなくって
婦人科で中容量ピルで調整したときに、
来月以降も、と相談したことがはじまりです。
花ざかりを迎えたわたしは
いついかなるときにも
蝶になる覚悟を持って生きているフリをして
恋人に迷惑をかけないように
そう表向きで思いながら
その事実を恋人にすら伝えず
同じベッドで先に目覚めては
毎朝同じ時間に服用して、
寸分も狂うことなく訪れる月経を
きっと彼はわたしを健康体と疑わず
思っていたことでしょう。
その一方で、
恋人以外との関係が活性化していたのも事実で
誰とも万が一のことがないように
細心の注意を払いながら
蝶になる覚悟だなんて大それた決意もなく
ふわふわと生きていたのを
今となってはもったいなく思ってみたりして。
本来は避妊のためだけの薬ではないのだけれど
わたしの生きてきたオンナの人生のなかでは
切っても切り離せないのも事実なものですから
ここぞとばかりに吐き出してしまうわたしを
ひとは愚かだと笑うのでしょう。
それとも万が一のなにかが起きてさえいれば
いまとはまったく異なる人生も待っていたのだと
パラレルワールドの向こう側に
想いを馳せてみたりするのです。
つづく