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デザイン思考の”その後”を考える

元IDEOの石川 俊祐さん、野々村 健一さんのお2人と、京都芸術大学の早川 克美さんによるトークセッション「デザイン思考の”その後”を考える」に参加しました。

昨年くらいから、「デザイン思考は失敗だった」「デザイン思考はさしたるインパクトを残せなかった」とか、「デザイン思考は期待外れ」なんて記事が良く目につくようになって、専門学校でデザイン思考を教えている僕は心がざわざわしてました。
ただ、その記事などを読んでいると、どうも違和感が。数ある〜思考の一つなのに

  • 世界を変えるはずだった(世界はそんなに単純じゃないんじゃ?)

  • イノベーティブでない(元々イノベーションのためじゃないよね?)

  • コンサルは具体的な成果は出さない(具体的な成果を出すためのチーム作りなんじゃ?)

  • 対してアート思考は!イノベーティブ思考は!(思考が対立する構造って意味わからん。適材適所じゃ?)

などなど、僕にとってはちょっとピントがずれてるような内容で、ずっとモヤモヤを抱えていました。
そんなところへこのセッションのお知らせが。
これは聞くしかない!ということで久々に東京でのデザインセミナーに行ってきました。


東京のセミナーって感じの素敵な会場。久々で少し萎縮したw

先に結論

デザイン思考に対する(世間の)誤解や終わるみたいな論調を鮮やかに覆す気持ちの良いセッションでした!

セッションを聞いて自分なりにまとめたことを書いていきたいと思います!

デザイン思考への誤解

  1. デザイン思考を取り込むにあたり、日本向けチューニングが必要。ユーザーの持っている答えを見つけると言われたりするが、日本企業の場合そもそもビジョンを持っていないため答えがないことも多い。
    また、必ずしも企業のビジョンと個人(チーム)のビジョンが合致している必要もない。

  2. 日本の企業文化として、試作→失敗に対する許容が大変低い。デザイン思考は答えが無く、探索・探究的な開発に適しているため、そもそも成功率が低い。対して論理的思考での開発などは論理を積み上げていくため失敗が少ない。

  3. 日本企業の開発に対する時間軸は非常に短い。
    3〜4年、下手すると1年くらいで結果を求められるので探索・探究してる場合じゃない。このようなプロジェクトとは相性が悪い。
    あと日本企業にはやらない理由を考える天才がたくさんいる(by野々村さん)

  4. そもそも「思考」なのでIDEO日本が撤退するからと言って終わるわけがないし、そもそもIDEOの所有物ではない。実はIDEO Tokyoは世界中のIDEOの中でもかなり業績が良かった。しかしIDEOの今後の方向性と日本の潮流に差が生じてきたため整理されたとのこと。

デザイン思考の本質

  1. デザイン思考の本質は5つのステップ、などではない。見て、感じて、想像して試す。という、例えば子供には当たり前のような考え方で「新しいもの(≠真新しいもの)」を作る考え方。IDEOメンバーはステップなどには固執していなかった。

  2. 使い所としては、答えが無い時、リソースがない時、迷っている時。そのような場合に探索的なステップ踏むためにある。経営者と話すと理解が早い。実は日本は元々そういうフェースで開発することが多かったから。
    企業の第二創業期や、会社の100年後を考えるといった長期的な開発とは相性がいい。
    (※すぐプロトタイプまで持っていくという考え方と、企業が100年後を考えるフェーズが僕の中ではうまく関連づけられなかった。)

  3. 企業の成果を出すためのフレームワークでは無く、個人やチームの意識をアップデートするためのもの。伺った事例では企業内のチームビルディングに効果的に使われたことで、個人が問いを立てられるようになり結果的にチームがドライブした。さらにチーメンバーが移動した先などでもそのマインドを伝導できるとのこと。

山田夏子さん伊藤佑美さんによるグラレコ。分かりやすい!

デザイン思考のこの先

  1. 世界的に答えのない時代に入っていることは(野々村さんの)経験的にも明白。その中で探索・探究的に企業の方向性を探っていかなくてはならないので、デザイン思考は必要。

  2. 今後の流れ(望むべき方向性?)としては、デザイン思考が当たり前のように使われていくことで、デザイン思考をもてはやすフェーズは終わり、ベーシックな考え方になっていくことで、デザイン思考という言葉すら無くなっていくようになるのが良いのでは。様々な思考が有機的に統合されていくことが求められるのではないか。

まとめ

セッションを通して、デザイン思考は個人の考え方をアップデートさせるものという印象を強く持ちました。学生にデザイン思考を教えるにあたり、マインドセットとして、この考え方をベーシックにして欲しいという気持ちでやっているので、方向が間違ってなかったと確認できてホッとしました。

僕の質問もグラレコしていただいた

おまけ

IDEOが企業とコラボした事例の中で、チームビルディング初期に問いを立てる際、最も効果的だったのが、一緒にチョコを食べたこと。体験を通じて気づきを得た(まさに腹落ちw)というのがとても印象的でした。
また、AIが普及していく中でますます身体性が重要になっていくんじゃないかというお言葉があり、納得しまくりでした。

ちなみに学生にはいつも、とにかく質問しろ!1番に質問しろ!と口酸っぱく言ってるので、先生ちゃんと1番に質問しましたよw

ファシリテーターの早川さんは大学の先輩でもあり、デザイン教育という分野での大先輩。これ以前にもデザイン思考への誤解について話していたりしたので、終わった後、これからも自信もって教えていけるね!と喜び合いました。石川さん、野々村さん、そしてこのイベントを教えてくださった早川さん、本当にありがとうございました!

記事を書いてて検索してたら石川さんのデザイン思考についての記事を発見。こちらも納得感あふれる内容です。


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