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僕とユイちゃんの愛物語1

※ 画像はイメージです。文章・画像の転載は、厳禁です。

 これは僕とユイちゃんの許されない愛の物語である。

 僕は大学4年生。大学に通うため実家を離れひとり暮らしをしている。高校までは陸上部で短距離走を専門にしていたけど、膝を痛めたのと大学入学を機に、運動系のサークルに入るのをやめた。
 以前からアニメ制作に興味を持っていた僕は、イラスト研究会に入った。そこで、いろいろなイラストを描き続けて腕を磨いていった。特に、動物やキャラクターをデフォルメして可愛く描くのが向いていたようで、先輩や後輩からたくさん褒められて気を良くしていた。
 気の合う仲間と何度も飲みに行ったり、ドライブをしたり、楽しい学生時代だった。もちろん、彼女もできて、毎日、楽しく過ごすことができた。大学1年生の秋からつき合い始めて3年の夏に別れることになったが、今も良い思い出として残っている。
 そんな風に、充実した大学生活だったが、大学4年生ともなると授業の数も少なく、平日の昼に家で過ごすことも多くなった。就活もあり、友達と会うことも減り、飲みに行くきっかけも少なくなった。

 4年生の秋ごろ、近所のコンビニに買い物に行った。その帰り、僕は犬を連れた小学生の女の子と出会った。3・4年生ぐらいだろう。
 僕は、実家で犬を飼っていた。栗毛色で可愛い女の子のトイプードルで名前はマコ。よく僕になついていて、お風呂にもトイレにもちょこちょこついてきていた。
 最近、実家に帰っていなかったので、マコとも会えていない。その女の子が連れていた犬はまさしく栗毛色のトイプードル。一目見て、とても懐かしい思いがした。
 いつもなら、黙ってすれ違うところだけど、そのトイプードルがこっちに近づこうとしていた。
「だめよ!」
 女の子は、行かせまいとトイプードルのリードを引っ張っているが、小柄な割に力があるようで、ぐいぐいこっちの方に女の子を引っ張ってきた。
 僕は
「大丈夫だよ」
と言って、トイプードルをかまってあげた。
「可愛い犬だね。トイプードルだよね?」
「はい」
「僕も、犬を飼ってたから、慣れてるから、大丈夫だよ。同じトイプードル。この子は男の子?女の子?」
「男の子です」
「名前は?」
「ミルです。赤ちゃんのとき、ミルクをよく飲んでて、ミルクは長いから、ミルにしました」
「かっこいい名前だね。ミルくん!おりこうさんだね!」
と言って、ミルくんの頭をなでなでした。
「犬、飼ってたんですか?どんな犬?」
「うん。今は、一人暮らししてるから、一緒に住んでないけど、実家にいる 
 よ。同じトイプードル。そっくりだから、思い出しちゃった」
「なんていう名前?」
「うちは女の子でマコちゃん。一緒に遊ばせたら、楽しそうだなぁ」
「うん」
と言って、女の子は可愛い笑顔を見せた。
「じゃ、お散歩、がんばってね」
「はい」
 女の子は、ミルくんを連れて元気よく駆け出して行った。

 それから、数日後、また、コンビニで買い物をした帰り道、今度はランドセルを背負ったその子に会った。
 目が合った。女の子も、僕に気づいたようだ。
「こんにちは」
 お互いに声をかけ合った。
「今、帰り?」
「はい」
「ここの近くの学校なんだね。何年生?」
「4年生です」
「ふぅん、4年生にもなったら、勉強、難しそうだねえ」
「はい」
「あ、名前、聞いてなかったなぁ。なんていう名前?」
「アサギ ユイです」
「ユイちゃんか、僕はシンイチ。じゃ、またね。勉強とミルくんのお世話、がんばってね」
「はーい」
 お互い、ばいばい と手を振って別れた。
 あとから、思い起こすと、名前を聞いたりして、不審者と思われかねないけど、そのときは、なにげなく普通の会話として、聞いただけだった。
 ふ~ん、あの子はユイちゃんていうのか、可愛い子だな
というくらいの軽い思いだった。

 それから、さらに数日後、また、僕はユイちゃんに会った。
 その日は、午前中に、大学での講義があった。まっすぐ帰るのもつまらないので大学の近くの書店に寄った。そこで、数冊、イラストの描き方の本を買った。今までと違う手法の描き方を始めてみようと考えていた。
 その後、電車とバスを乗り継ぎ、家の近くのバス停から、ぶらぶら歩いていた。
 向こうから、ユイちゃんが、歩いてきた。
「ユイちゃん、こんにちは」
 前に会ったとき、せっかく名前を教えてもらったので、名前を呼んであいさつした。
「こんにちは」
 ユイちゃんから、元気な声が返ってきた。
「どこ行くの?」
「友達と遊ぶ約束してたけど、ママとお出かけっていっちゃった」
「そっか。今から、帰るの?」
「うん」
「じゃ、僕のとこ、おいでよ。可愛いイラスト、見せてあげる」
「イラスト?」
「うん。お兄さん、大学でイラスト描いてたんだよ。ユイちゃんみたいに小学生の子が喜ぶような可愛いイラストが得意だなぁ。見に来る?」
「うん」
というわけで、ユイちゃんは初めて僕の家に遊びに来た。

 部屋に入ったユイちゃんは、壁のあちこちに貼ってある僕の自信作を眺め回していた。
「どうかな?」
 僕は、少し、照れながら聞いてみた。
「うん、かわいい!」
 ユイちゃんは、壁のイラストを次々と見ながら、こちらを振り向きもせず答えた。かなりイラストに興味を持ったみたいだ。
「こっちは下書き」
と言って、スケッチブックを見せた。下書きや練習、ラフデッサンしたものに混じって、割としっかり着色して見栄えが良いものもあった。
「わー、すごーい!」
と無邪気に喜んでくれるユイちゃんを見て、とても可愛いと思った。
 ふだん、小学生の女の子と会話する機会なんて、全くなかったから、すごく新鮮な感じがした。
 自分も小学生のときがあり、女子とも話したことがあったけど、こんなに純粋だったっけなぁ、なんて考えたりしていた。
「パソコンにもあるよ」
と言って、デジタルイラストの画集のフォルダを開いた。
 これまでに描きためたイラストを次々と提示していった。
「わー!すごーい!」
「あ、これ、かわいい!」
「あ、ミルみたい!」
と何度も感嘆の声をあげてくれた。
 僕も、気分が良くなっていろいろなタッチのイラストを見せていった。
「ジュース飲む?」
「え?いいです」
「遠慮しなくていいよ」
 グラスにオレンジジュースを注いで氷を入れ、テーブルに置いた。
「どうぞ」
「いただきます」
と言ったものの、ユイちゃんは、なかなか、飲もうとしない。
「あの・・・飲まないんですか?」
「ん?・・・僕?僕は飲まないよ。ジュースは来客用。友達が来たときにあげるために置いてる。僕はコーヒーとかビールかな。あと、僕はシンイチだけど、お兄ちゃんとかお兄さんって呼んでくれたらいいよ。シンくんとか、シンちゃんでもいいけど、呼びにくいでしょう?」
 ユイちゃんは、少し、照れくさそうに
「お兄さんは、絵を描くお仕事?」
「僕は、まだ大学生。絵を描く仕事ができたらいいなぁ。もし、アニメとか作ったら、見てくれる?」
「うん、見る!」
と笑顔で答えてくれた。
「じゃ、お家の人が心配するから、もうそろそろ帰った方がいいんじゃない?」
「うん・・・もうちょっと見たい」
と言って、まだ、イラストをあれこれ見たり、おしゃべりをしたりして過ごした。
 あまり、家に帰りたがらない様子に、少し、あれ?と思った。
 18時を回ったので、さすがに、家に帰るように促して、その日は帰らせた。

 ユイちゃんが帰った後、テレビを見ながら、夕飯を済ませた後、ぼんやりユイちゃんのことを思い出していた。

 ユイちゃん、可愛かったなぁ・・・。また、遊びに来たらいいのになぁ・・・。

と思っていた。
 何度も顔を合わせるうちに、いつのまにか、ユイちゃんが、自分の頭の中に入ってきているのを感じていた。
 自分は、普通に学生時代に女の子とつき合ってきたし、恋愛も楽しんできた。ロリコンなんて変態だ、と馬鹿にもしていた。
 けれど、こうして、実際に小学4年生の女の子と接してみると、その純粋さに衝撃を受け、なんて可愛い存在なんだと思ってしまっていた。
 小学4年生のユイちゃんに、心を持っていかれてしまいそうになってるのを、気をつけないとな・・・と思った。ユイちゃんに、恋心なんて、そんな馬鹿な。それは、恥ずかしいことだし、第一いけないことだ、そう自分に言い聞かせようとした。
 しかし、そう思えば思うほど、よけいに、ユイちゃんのことを思い出してしまうし、思い出すとまた会いたいなという思いが高まってきてしまうのだった。

 その翌日、家でテレビを見ながら、大学のゼミで提出しなければならないレポートの下書きを思いつくままに、メモしていた。
 すると、ピンポーンとチャイムが鳴った。
 出てみると、ユイちゃんが、照れくさそうに立っていた。
 遊びに来たのだ。白いワンピースで手には子供用のキルティング生地の手提げかばんを持っていた。
「やぁ、遊びに来たの?」
「うん」
 まさか、ユイちゃんが自分から遊びに来るとは思っていなかったので内心嬉しく思った。昨日、ユイちゃんに恋心を抱くことについて考えていたので、少し、焦った感覚もある。
 ドギマギしてることを気づかれないよう平気な素振りで部屋に招き入れた。

「自由帳、持ってきた」
と言って、ユイちゃんがノートを出した。
 女の子らしいキャラクターの表紙のノートだ。
「見せて」
と言うと
「ダメ!」
と言うので、手を引っ込めたら
「いいよ」
と笑いながら差し出す。
 僕は、もう、手玉に取られてるのか?そんなことを思いながら、ノートを手に持った。
 ノートを開くと、女の子のキャラクターを模写した絵がたくさん描かれてあった。可愛い服を着てる女の子の絵やモコモコのマスコットなど。色鉛筆で色も綺麗に塗られていた。
「うわぁ!すごい上手!」
と大げさにほめると、ユイちゃんは、嬉しそうに、恥ずかしそうに、にっこりと微笑んだ。
 やっぱり、ユイちゃん、可愛いな、と思った。

 そして・・・だんだん・・・ユイちゃんをぎゅぅっと抱きしめたい、という願望を抱くようになった・・・。

 一通り自由帳を見せてもらった後、オレンジジュースをグラスに入れて運んだ。ユイちゃんが気を使わないように、今日は、僕の分も入れてきた。
 ジュースを飲みながら、しばらくの間、おしゃべりを楽しんだ。
 楽しい会話の合間に、ユイちゃんは母子家庭であること、父親は交通事故で亡くなったこと、母親は看護師で夜勤の日はいないこと、そんな日は、ミルと二人で過ごすこと、そんなことも、話してくれた。
 それで、昨日、なかなか家に帰りたがらなかったのだ。

 切なくて、愛おしく思えて、ますます、ユイちゃんを抱きしめたくなった・・・。

 おしゃべりを終え、ジュースを飲み終えたので、グラスをキッチンに運んだ。
「アニメでも見る?」
 ユイちゃんは、アニメが好きなようなので、サブスクのアニメをパソコンで見せてあげようと考えた。さっき見せてもらったユイちゃんの自由帳に描かれていたキャラクターのアニメも、たしか見られるはずだった。
 テーブルの上のパソコンを操作していると、ユイちゃんが、ちょこんとひざに乗ってきた。
 ユイちゃんが本来持っていたであろう人懐っこさ、甘えん坊な面を見せてきた。僕に心を開いてきている証拠だろう。
 ユイちゃんも、僕に、好意を抱いている、そう思った。

 しばらく、ひざにユイちゃんを乗せたまま、いろいろなアニメを見るのを
好きなようにしておいた。
 僕は、ユイちゃんの後ろから、ユイちゃんに覆いかぶさるように一緒にアニメを見ていた。ユイちゃんの髪の淡い香りがたまらなく良かった。
 両腕は、ユイちゃんの腰に回していた。
 ユイちゃんの顔のすぐ横に僕の顔を近づけて話しかけた。
「おもしろいね・・・」
「うん」
 ユイちゃんは、振り向きもせず、答えた。アニメが映るパソコン画面に夢中だった。
 僕の頬が、ユイちゃんの頬に触れる。ユイちゃんは、イヤがる様子も顔をはなす様子もなく、アニメに見入っていた。
 少しの間、頬を触れ合わせたまま、アニメを一緒に見ていた。
 ユイちゃんの頬は、やわらかく、みずみずしく、弾力があった。
 いつまでも、こうして頬をくっつけていたかった。頬にユイちゃんの肌を感じていたいと思っていた。

 アニメを見るのがひと段落したので、僕はユイちゃんをひざからおろした。本当は、もっと抱きしめていたかったけど・・・。
 その後、ユイちゃんが自由帳に絵を描くのを見たり、絵の描き方をアドバイスしたり、おしゃべりしたりして過ごした。
 それからしばらくして、ユイちゃんは帰っていった。

 それから数日の間、ユイちゃんは、毎日のように遊びに来た。
 僕の新作を見せたり、ユイちゃんの絵を見たり、アニメを見たり、おしゃべりをしたりして、過ごしていた。学校でどんなことがあったか、お気に入りのキャラクター、好きなアイドルのことなど、たくさん教えてもらった。
 ときおり見せるユイちゃんの笑顔に、ますます心を持っていかれていた。
 そして、そのうち、ユイちゃんも僕に好意以上の思いを持っていることを感じていた。もちろん、こんなに遊びに来るのだから、好意を持っていないことはないだろうとは思っていた。しかし、ユイちゃんの言動の端々から、僕のことを好きと思っている様子がうかがえた。
 ある日は、部屋の中に招き入れた途端、僕に抱きついてきた。そのまま、僕はゆいちゃんを軽くハグした。
 またある日は、ユイちゃんが手を握ってきた。キッチンでオレンジジュースを入れているとき、横に立って、自然な感じで手を握ってきたのだ。
 小学生の女の子が、お兄ちゃんのような存在に甘えているだけとも受け取れるが、僕は、ユイちゃんの思いを受け止めたいと考えていた。
 そもそも、僕自身が、ユイちゃんのことが大好きになっていた。
 ユイちゃんと愛し合いたいと考えていた。

 その日、ユイちゃんは淡いピンクの生地にキャラクターの絵が小さくプリントされたTシャツに薄い水色のチェック柄のスカートをはいていた。
 またパソコンでアニメを見たいというので、前にしたように、僕がイスにすわりユイちゃんをひざに抱っこした。
 ユイちゃんの髪から良い香りがする。
 また、ユイちゃんの頬に僕の頬をすり寄せる。くっつき合った僕とユイちゃんの頬。やわらかく、すべすべの感触が伝わる。
 アニメの音声だけが流れている。僕は、ユイちゃんにくっつけていた頬を下にずらしていった。ゆいちゃんも何かを感じていたはずだが、じっとしていた。
 ユイちゃんの唇の端と僕の唇の端が、触れあった。ユイちゃんの体がピク!と反射して力が入ったようだった。僕は、そのまま唇をユイちゃんの唇に重ねるよう置いていった。ユイちゃんは、イヤがることもせずされるままになっていた。
 僕は、ユイちゃんの頭を右手で支え、しばらく、そのまま唇を重ね合わせたままにした。ユイちゃんの唇は、とても小さくて、やわらかく、弾力があった。僕は、唇を重ねたまま、少し、口を開け、舌の先を伸ばした。舌をねじ込むことはせず、ユイちゃんの唇を舌の先でなぞった。舌の先に感じるユイちゃんの唇は、やっぱり小さくて、はかなげだった。やわらかくて、可愛くて、とても愛おしかった。
 そっと唇をはなした。ユイちゃんの目を見た。少し、驚いたようでもあり、はにかんでいるようでもあった。
「ユイちゃん、可愛いね。・・・びっくりした?」
「うん。でも、気持ち良かった」
とユイちゃんは、にっこり笑った。
「もう一回、しよっか・・・?」
「うん・・・」
 僕は、ユイちゃんを抱きかかえるようにして、唇を近づけていった。
 ユイちゃんは、目を閉じて、顔を少し上に向ける。
 その可愛い表情を見ながら、僕は、また、ユイちゃんとキスをした。
 僕は、ユイちゃんをとても愛おしく思っていた。
 ユイちゃんの背中に腕をまわした。まだ成長途中の華奢な身体・・・。
 力を入れたら壊れてしまいそうな身体を抱きしめたまま、キスをした。
 しばらく、その時間を大事にした。長い時間だったのか短い時間だったのか、わからなくなっていた。
 顔をはなし、見つめ合った。お互い、微笑み合い、また、キスをした。
 このまま、離れられないくらい、僕は、ユイちゃんのことが大好きになってしまっていた。いつまでも、こうしていたいと思っていた。
 あえて、唇と唇を重ね合わせるだけのキスにしたが、それでも、こんなにも心が燃え上がるものとは、思わなかった。
 この日は、ここまででとどめておいた。これ以上、進んだらどうなってしまうか、こわかった。
 それからしばらくして、ユイちゃんが帰る時刻になった。
 玄関で、ユイちゃんと僕は約束をした。
「今日のことは、僕とゆいちゃんだけの秘密にしようね」
「うん」
「じゃ、バイバイ」
「バイバイ・・・」
 ユイちゃんは、恥ずかしそうに手を振り、玄関を出た。

(続く)

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