遺族年金 事実上婚姻関係の妻はどうなる?
今回は遺族年金の請求者について見ていきたいと思います。
夫が亡くなるとその妻が遺族年金を請求する場合が多いです。
そこで遺族厚生年金を請求する妻の場合を想定します。
厚生年金法第3条2項に、「この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。」と規定されています。
また、厚生年金法第59条において、「遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母であつて、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持したものとする。」と規定されています。
つまり、事実婚(いわゆる内縁)の妻であっても生計維持要件があれば遺族年金は請求できるということになります。ちなみに、審査において事実婚関係にあると認定される必要があります。
そこで問題となるのは、亡くなった事実上婚姻関係にあった夫に、法律上の婚姻関係にある妻がいる場合です。
戸籍上の妻と内縁の妻がいる場合ですね。
この両者とも、亡くなった夫に生計維持されていた場合、「原則として法律上の婚姻関係にあるものが配偶者要件に該当するというべきである。」という最高裁の判例があります。
つまり、戸籍上の妻が優先されるということです。
さらに、「重婚的内縁関係にある者が配偶者要件に該当し得ると言えるのは。法律上の婚姻関係が実態を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して近い将来解消される見込みのない場合、すなわち、事実上の離婚関係にある場合に限られるというべきである。」(最高裁判所昭和58年4月14日第一小法廷判決・民集37巻3号270項、最高裁判所平成17年4月21日第1小法廷判決・民集216号597項参照) と記載されています。
つまり、本妻と内縁の妻が遺族年金の受給権について争いになった場合、法律上の婚姻関係が事実上の離婚状態であるか否か、を争点とされます。
お互いに主張がある場合は裁判になる場合が多いでしょう。この主張を個別具体的に判断されることになります。
①別居の経緯、②別居の期間、③婚姻関係を維持ないし修復するための努力の有無、④別居における経済的依存の状況、⑤別居後における婚姻当事者間の音信・訪問の状況、⑥重婚的内縁関係の固定制等の諸般の事情を総合的に考慮して判断すべきであると解されています。
いろいろな判例がありますが、裁判においてはどちらかに決着がつくわけで、遺族年金について、本妻と内縁の妻とで年金額を半分ずつ分け合うというものはありません。
どちらにせよ、第三者的視点で見ると喜ばしい気分になれるものはありません。いろいろな事情があったとしてもきちんと法律的に整理をしておくべき,ということになるのでしょうか。
判例については今後も勉強していきたいと思います。