老齢厚生年金と高年齢雇用継続給付
高年齢雇用継続給付・・雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の一般被保険者が、原則として60歳以降の賃金が60歳時点に比べて、75%未満に低下した状態で働き続ける場合に支給されます。金額は最高でその月の賃金の15%相当額です。
つまり60歳以降に給与が大幅に減額になった場合、一定の割合で雇用保険から補填される給付といえます。
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前回、厚生年金に加入して在職中の方は、報酬と年金との調整が行われる制度を説明しました。
実は、報酬と年金との調整のほか、ハローワークから支給される高年齢雇用継続給付との調整も行われます。
制度上、同じ趣旨の給付が重ならないように調整されているとはいえ、さすがに調整が2段階もあると何か悔しいと思うのは多くの方が抱く感情ではないでしょうか。
ちなみに、厚生年金に加入せず、短時間の労働をしている場合は調整の対象になりません。この辺りは「在職老齢年金」と同じです。
年金との調整は高年齢雇用継続給付を受けた月ごとに調整されますが、最大で標準報酬月額の6%が受給する年金額から調整されます。
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例:標準報酬月額200,000円 年金月額50,000円 (*ここでは高年齢雇用継続給付の月額は考えません)
200,000(標準報酬月額)×0.06(調整最大値)=12,000
つまり、50,000(年金月額)-12,000(調整最大値)=38,000(調整後の年金月額)
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高年齢雇用継続給付は全額支給されて年金が調整される仕組みです。
調整最大値より雇用継続給付の月額金額の方が大きいので、高年齢雇用継続給付を受けてマイナスにはなりません。
しかし、先に行われた在職老齢年金により実際に受け取る年金額が大幅に少なくなった場合は差引により年金が全額停止になる可能性もあります。
H4.4月から在職老齢年金の法律改正が行われ、報酬による年金の停止計算が緩和されますが、高年齢雇用継続給付との調整は現行のままです。
調整は合理的に行われているといっても人間ですからなんとなく悔しい思いは残ります。受給手続きによって初めて調整を知ってガッカリされる方もいますから、国のわかりやすい広報は大いに必要なのではと思います。
こんなところから不信感が大きくなって年金制度が誤解されますから。
次回は退職後に受けるいわゆる失業手当(基本手当)と年金の調整について見ていきたいと思います。