老齢厚生年金 配偶者加給年金の返納?
厚生年金加入期間が240月以上ある方が原則65歳到達以降、老齢厚生年金額に配偶者加給年金が加算される場合があります。配偶者加給年金は給与における扶養手当に相当するものです。
令和3年度の配偶者加給年金額は特別加算を合計して年額390,500円(32,541円/月)です。結構大きな金額になります。
配偶者加給年金は年下の配偶者が原則65歳到達まで加算されるものですが、支給停止になる場合があります。(厚年法46条6項)
支給停止になる場合の例として、加給年金の対象配偶者が、
① 厚生年金被保険者240月以上加入改定による老齢厚生年金を受けられるようになった。
② 障害厚生年金、障害基礎年金を受けられるようになった。
つまり配偶者が上記の年金を受けられる間は加給年金の支給が停止されます。
よく問題となるのが上記①となる場合です。
例えば、妻が60歳到達により発生する厚生年金被保険者期間240月以上の老齢厚生年金を請求をしなかったとします。同時に65歳に到達した夫の老齢厚生年金に加給年金が発生しました。
本来であれば、妻が厚生年金240月以上加入の年金を請求すれば夫の加給年金は支給停止になるはずですが、未請求の場合は年金を受けていないので、本来停止されるはずの配偶者加給年金が夫の厚生年金に加算され続けることになります。
その後、夫は70才になると、65歳から5年間配偶者加給年金が加算されており、総額は約200万円程になります。その妻が65歳で遡及して請求手続きをする場合、受給権発生の60才に遡って厚生年金240月以上加入の老齢年金を受け取ることになります。
つまり妻は過去5年分の特別支給の老齢厚生年金を受け取ることになります。
そうなると、本来は支給停止であるはずの、夫にこれまで加算されていた配偶者加給年金5年分を返戻する必要が生じてきます。先程も述べた通り、返戻額は5年間分で約200万円になります。
そのような場合、年金事務所から返戻の必要があると告げられて簡単に納得できる方は少ないのではと思います。
年金事務所でも配偶者加給年金の条件について説明があると思いますが、年数が過ぎると忘れてしまうものです。
本来であれば妻が60歳受給権発生した時に遅滞なく請求するか、何らかの理由がある時は加給年金不該当届を提出するべきでした。
年金事務所が詳しく教えてくれなかった、年金事務所側で停止をするべきであるという意見があるのもよくわかります。法令に添うと職権で止められないのかもしれません。
60歳から65歳までの特別支給の老齢年金は請求を遅らせてもメリットはないので、トラブル回避のためにも早めの相談・手続きをお勧めします。
また、繰上げ請求についてですが、厚生年金被保険者期間が240月以上ある配偶者が繰上げ請求をすると加給年金も停止になるので注意が必要です。
*R4.4.1より加給年支給停止のルールが変更予定です。(厚労省R3.8.6通知第 二の6)