誕生日に、家族を思ふ
先日、29歳になった。何人かの友人たちから、おめでとうって連絡をもらって、ほくほくしている。
連絡をもらわなかった人の中にも、その日に、わたしのことを思い出してくれた人がいるはず。たぶん。たとえば、Facebookの通知とか何かで。ちょびっとでも、思い出してくれてたら、うれしい。
とうとつに、家族のはなしをしたい。
わたしには、妹がいる。わたしが長女で、2人姉妹。妹は、ずっと実家に住んでいるので、長いこと離れて暮らしている。わたしは大学から県外に出てしまったので、少し申し訳ないような気も。
次女っていうと要領がいい、っていうのが通説のようだけど、彼女はなんだかちょっと見てられない。少し引っ込み事案で、自分が何をしたいとか、明言することはない。大学や就職で、進路も相当に悩んでた。でも、ただ、ひたすらに優しい。いいやつ。
彼女は先日、「お誕生日おめでとう」とLINEを送ってきてくれた。ケーキの写真を添えて。おめでとうは嬉しいけど、離れて住んでるし、なんなら今は地球の裏側やし、そのケーキは、わたし絶対食べられへんやん?
そういえば、3年前の誕生日にも、ケーキの写真を送ってきてた。しかも、ろうそくもささってた。わたし、その時も実家おらんかったよね。誰がろうそく吹き消したん?てか、本人(わたし)のいない誕生日会が恒例行事になってんの?え?
うちの母も、連絡をくれた。うちの母は、バイタリティがある。少し天然なところもあって、でもなんだか、この人には一生かなわないなと思う。
わたしが高校生の時、母はガンになった。さいわいにも、早期の発見だったので命は助かった。治療を続けて、元気になって、事務のパートの仕事を始めて、で、55歳を過ぎてから、唐突に、その会社で正社員として働きだした。そんなこと、ある?あと、この前ダイビングがしてみたいっていうから、試しに体験ダイブに連れて行ったら、はしゃいで3本も潜っていた。わたしよりも元気。そんなこと、ある?
母も、「おめでとう」ってLINEをくれた。「頑張ります!」ってスタンプを添えて。「頑張れ」じゃなく、「頑張ります!」って。母、何を頑張るねん。あえてつっこまない。
父。IT系のツールがすごく苦手。スマホもだめ。おそらくPCもダメだと思う。50代なのに、らくらくフォンやし。地銀に勤めていて、今は子会社へ出向中。仕事にプライドを持っている人だけど、そろそろゆっくりしたいともぼやいていて、ゆっくりしたらええやん、とわたしは言っている。まあ、しないんだろうけど。情にあつくて、てか暑苦しい。酒を飲んで、10時前には寝る。朝日が昇る前に起きる。寝れないらしい。ザ・昭和のガンコ親父。
父は連絡をくれない。毎年そう。でもたぶん、おめでとう、って思ってくれていると思う。
妹は、わざわざ家族のグループラインにおめでとうってメッセージを送ってくれてた。個別だと、父が見られないから。一応、グループには入ってるんだよね。
うちの家族は、優しい。
離れていても、海外にいても、何があっても、最悪、あそこに避難できるっていう、わたしの居場所だ。
いや、本来だったら、そうじゃない。
社会人になって、自分でお給料をもらって、一人暮らしを始めたとき。自分の足でやっと立てた気がしてた。実家なんか頼らなくても、これからは自分で生きていくんだって。すこし、興奮した。
でもその一方で、結婚して、苗字を変えることになったとき、あぁ、わたし、もう実家の家族とは別の世帯なんやって、悲しくなって、泣いた。
へんなの。矛盾だらけだ。
そして今、結局、実家は、わたしの心の避難所になっているみたいだ。へんなの。
でも、そういうものなんかな。
夫と、そういう家族になれたらいいな、なんてめずらしく思った、29歳の誕生日。
ただ、それだけ。