Public LABセミナー「スタートアップ・エコシステムが、社会を救う!?」
おはようございます、神薗まちこです。
3月28日に主催しているパブリックラボセミナーで、渋谷区で取り組んでいるスタートアップエコシステムのお話をしていただきました。この取り組みは街にスタートアップを呼び寄せて、経済的な潤いを作るということだけが目的ではなく、まさに公民共創で街の課題を解決し、魅力を引き出す取り組みなんですよね。
よくこういうお話すると、「渋谷だからできる」という話になるのですが、私は「渋谷じゃなくてもできる」を目指したいと思っているので、後半皆さんと一緒に議論した全国でどう広げられるか?といった話がとても印象に残っています。以下、一緒に入ってくれたインターン大学生の根本真帆さんがまとめてくださいました。(神グラレコは、板橋区議会の南雲さん)
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PublicLABセミナー「スタートアップ・エコシステムが、社会を救う!?」が3/28(月)の19:00〜20:30に渡って開催されました。
(Public LABセミナーは、党や地域もさまざまな自治体議員の政策勉強会として、週1回開催されているものです。)
今回はゲストとして
・渋谷区グローバル拠点都市推進室長 田坂克郎さん
・株式会社Haku代表取締役 松本友里さん
をお招きし、スタートアップとエコシステムをテーマにお話いただきました。
◯渋谷区が取り組むスタートアップエコシステムとは?/田坂さん
●渋谷区における取り組み
スタートアップの生まれやすい環境のサンフランシスコで過ごした経験を元に、イノベイティブな自治体としての渋谷区を構想し活動していらっしゃいます。
VUCAの時代に求められる自治体とは、イマジネーションと実験のプラットフォームであり、単なる行政サービスの提供者ではないという言葉が印象的でした。
現状日本のスタートアップ企業はガラパゴス化しており、イノベーションを起こすためには国際化推進が喫緊の課題だそう。
そのため、田坂さんはこの3年間で以下のように様々な事業を行っています。
ースタートアップビザを開始
ー日本のスタートアップの現状を知らせる英語のメディア作り
ー海外のスタートアップを支援する場所作り
ー当事者にアンケートを元にたくさんの問題をブラッシュアップ
ー企業と連携してコンソーシアム(みずほ銀行との連携など)
ー社会課題を解決するためのラボ作り
ー実証実験事業「innovation for new normal」取り組み
「世界と日本の思いを持つ才能が混ざり、イノベーションを生み出す場に」というビジョンを持ち、自治体のエコシステム構築に取り組んでいらっしゃるそうです。
●エコシステム構築のベースにある田坂さんの理念と経験
・今やったことが100年後につながる
日本人への差別が広く行われているような地域であるサンフランシスコで大地震が起こった時に、日本からたくさんの寄付金が集まったことがありました。それを踏まえて東日本大震災の時には逆にサンフランシスコから多くの寄付金が集まり、そこから「今やっていることが未来につながるのだ」と田坂さんは実感したそうです。
・日系アメリカ人の中で今でも残っている言葉「未来の子どもたちのために」
日系アメリカ人は差別に苦しみ奮闘してきた歴史があり、そういった方々の歴史を田坂さんはサンフランシスコで知ったそうです。彼らは、戦争中は強制収容所に入れられたり、白人兵にいつでも殺されるような状態で情報戦に関わったりするなど、日米の間で自分たちの権利のために闘い続けました。その歴史があるから今があるのだと、そう強く感じたそうです。
未来の子供たちのために、今、行動を起こしていくのだという考え方に大きな感銘を受けました。
●なぜ「自治体」に注目しているのか。
田坂さんはアメリカで生活する中で、いかに自治体が自立して機能しているのか、個の市民の意見が政治に還元されやすいのかについて実感したそうです。
何億人もの国民を、国家がひとまとめに動かしていくのでは個人が政治に組み込まれにくいのが現状です。そのためには国家から細分化された「自治体」の活動をより活発にし、市民により密接した政治の実現を目指していけると良いのではないかということで、自治体のエコシステム構築に取り組まれているようです。
◯IKOUが目指すインクルーシブなプロダクトとは?/松本さん
●IKOUとは
IKOUとは、誰もが利用できる製品を乳幼児向けに提供するインクルーシブブランドです。
松本さんのお子さんが身体的にチャレンジを抱えて生まれてきたことをきっかけに、現状の社会に存在する「障害」に気づいたそうです。
・身体などの特徴によって子どもの空間が分離されている
・いわゆる健常者、障害者の両方が利用できるプロダクトを扱うブランドが存在しない
こういった問題に取り組むために、松本さんはIKOUを立ち上げました。
●スタートアップとしてのIKOU
渋谷区の実証実験募集サイトから「エントリー」をして、事業について簡単に書いて提出した後に、一度面談を行い、そこから適宜連携を取って実動へと動いていったそうです。
例えばIKOUさんは、渋谷区の子育て支援施設ネウボラにプロダクトを実証的に置いてもらう予定です。
●プロダクトと生活
松本さんは「プロダクトが人々の生活をも変えうる」と大学で学んだことで、生活をより良く変えていきたいという考えからトヨタ自動車に入社したそう。
そしてお子さんが生まれてから目の当たりにした社会の問題に取り組むため、多様な個性を持つ子どもたちが空間を共有して過ごしていけるようにと願い、事業をスタートさせたとのことです。
●IKOUのポータブルチェア
そういった理念の元、IKOUさんは日常に馴染むデザイン性、機能性を有する椅子を開発しました。
「家族全員でテーブルを囲めた」
「遠足の時にみんなと同じ目線でいられた」
そういった消費者の声があったように、まさにプロダクトが人々の心理や生活に良い影響を与える製品が生まれました。
IKOUさんはユーザーである子供たちとその家族の「気持ち」に高いプライオリティを置いているため、ユーザーテストなどのフィードバックを元にプロダクト開発を行なっているそうです。
また将来的には海外進出も視野に入れているとのことです。
●ユーザーを選ばない、あらゆる子供を歓迎する企業のシンボルへ
IKOUさんはスポーツスタジアムや災害時における活用、渋谷区ネウボラへの設置などを通してプラダクトを広め、また企業理念をエンファサイズしていっています。
🌟IKOUのクラウドファウンディングはこちらです。ぜひチェックして下さい!
◯パネルトーク
後半には、チャット質問をベースにディスカッションしました。
Q.費用は区持ちか企業持ちか?
A.渋谷区はお金を払っていませんが、神戸市は50万円、広島市は1200万円出したりと、自治体により異なるようです。予算が大きいと条件も付与されるよう。
Q.今までの商業振興との違いとは?
A.渋谷区の事業はスタートアップに特化しているので、スタートアップのエコシステムのための活動という点で違うとのことでした。
Q.エコシステムとはそもそも何なのか?
A.繋がり、続いていくイメージであり、世代が変わってもずっと循環するようなシステムがエコシステムであるそうです。だからこそ多様すぎて、取り組むべきことが多すぎるという側面もあります。
Q.日本は市場的には厳しいはずだが世界は何を期待して日本にやって来るのか?
A.人によって違いますが、社会的なインフラがとてもしっかりしている点が挙げられるそう。また、なんだかんだ言っても市場は世界的にも大きい方ですし、特に東京は都市そのものがインターネットのようだという考えもあるようです。
Q.東京以外の地方との連携はどう考えているか?
A.とても歓迎しているし、実際に田坂さんもそういった活動をしている。例えばコロナ渦で働き方が変わる中、起業の仕方を新しくできないかという考えの元、全国の様々な場所に拠点があるような、新たな形での企業ができればと考えているそうです。
その他にも、東広島市で行われているアリゾナ州立大学ビジネス校の広島大学への誘致とスタートアップ企業作り、教育とスタートアップ、また海外企業へのインセンティブを思い切って出したチリにて成功したスタートアップ事業の例や地方自治体とスタートアップ誘致のあり方など、実にさまざまな議論が展開されました。
◯執筆者感想
アメリカとは政治システムが大きく異なるためアメリカのような自律的な自治のあり方は難しい部分があるとは思いますが、それでも行政のパートによっては自治体への裁量が非常に大きい部分もあり、そういった所を中心に力を入れていけると良いのではないかと感じました。自治体が真に「自治」する団体になることで、個人がピックアップされやすくなり多様性が政治に反映されると、まさにインクルーシブな社会の実現への一歩となるだろうと思います。「ちがい」を「ちから」に変える渋谷区の自治のあり様に今後とも注目していきたいです。
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