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アメリカペット事情

紹介します。こちら、私たちの愛猫「もなか」6歳。今日は、このもなかと私たちの出会いを振り返ってみたいと思いますが、それには、欠かすことのできない、アメリカの犬猫ペット事情から。

少なくとも、私が知る大半の人は、犬または猫、もしくは犬と猫を飼っています。多頭飼いもあたりまえ。日本と比べたら、家のサイズが大きいし、賃貸物件だとしても、ペット可(犬種制限&ペット前金&ペット料金の加算などがあることも)であることが多いのは、大きな理由のひとつなのでしょう。

さて、そんな「家族の一員となっている」犬猫ちゃんたち、いったいどこから来たのでしょう。おそらくは、そのほとんどが、SPCA(Society for the Prevention of Cruelty to Animals 動物虐待防止協会)と呼ばれる、動物の保護施設だと思われます。訳あってShelter(シェルター 収容所)に行きついた犬、猫を、Rescue(レスキュー 助け出す)し、Adopt(アダプト 引き取る)、する、という流れになります。ちなみに、アメリカにもペットショップは存在します。でも、ペットショップで売られているものは、あくまでもペット用品。魚や亀、モルモットなどの小動物は購入可能なお店もありますが、ケージの中で買い手を待つ子犬、子猫の姿はありません。お店によっては、獣医さんが常駐していたり、トリミングコーナーがあったり、しつけ教室があったり、セルフサービスのペットのお風呂場があったり、まさに、ペットとその飼い主さんたちのためのお店です。パンデミック前は、ペットショップ内にSPCAのアダプションコーナーが併設していることもよくありました。私たちも、“もなか探し”を始めた当初は、ペットショップのアダプションコーナーまわりからスタートしたものです。

2015年の夏に、ベイエリアからサクラメントへ引っ越してきて、生活も落ち着いてきた秋ごろ、私たちの“もなか探し”が始まりました。猫探しではなく、“もなか探し”。というのも、「もなか」という名前が先に決まっていたからです。お月様を見ながら出勤する車内、まだ見ぬ私たちの猫に思いを巡らせていたある日、ポーン!と頭の中に投げ込まれてきたのが「もなか」という名前でした。なので、私たちの猫の名前は「もなか」。

さて、“もなか探し”にあたって、私たちは、ペットショップのアダプションコーナーで、知識とイメージを増やすことから始めました。ペットショップに設置される、SPCAの出張サービスの場合、ほとんどが生後数ヶ月の子猫でした。「もなか」という名前こそ決まっていたものの、猫種はもちろん、毛色なども含め、特定の希望はなかったので、いろいろな子猫を見ながら、まずは「猫を飼う」ことのイメージを膨らませました。私は子供の頃、犬を飼っていましたが、猫は未経験。サクラメントへの引っ越し前に数ヶ月ほど住んでいたおうちで、近所の野良猫のモコちゃんと仲良くなり、「猫もありだなぁ」と思うようになりました。旦那さんにとっては、鳥と鯉と金魚を除いては、人生初のペットです。休日のアダプションコーナー巡りを続ける中、担当する店員さんとゆっくりと話をする機会がありました。その店員さんが「〇〇のSPCAにも行ってみたら?この前、猫を借りに行ったときは、オレンジ色の猫もいたわよ。初めての猫だったら、子猫子猫ではなくて、もう少し大きくなった猫もいいかもね」などとアドバイスしてくれました。なぜ、その店員さんが“オレンジの子”と口にしたのかは分かりませんが、なんとなく印象に残ったのを覚えています。

そして、次のお休みに、緊張しつつ、初めてSPCAへ行きました。猫のアダプションを考えている、と伝えると、担当してくれたおばさまが、まず最初に子猫の部屋へ連れて行ってくれました。いわゆる乳児の部屋。かわいい子猫がいっぱいです。今思い返しても、実はあまり覚えていないのですが、要するに「もなか」はそこにはいなかった、ということなのでしょう。続いて、案内されたのが、もう少し大きくなった猫の部屋。正確な年齢幅を忘れてしまいましたが、イメージとしては、幼稚園児から小学生みたいな猫たちの部屋です。乳児たちは、それぞれのケージに入っていましたが、幼稚園児たちは、広めに区切られたいくつかの小部屋を共有していました。その部屋に入って、目に飛び込んできたのが「もなか」でした。この子が例のオレンジの子かな?と思ったのと、小さくてかわいい顔をしている割に、随分と立派な髭だなぁ、と思ったのが忘れられません。ちなみに、もなかはその部屋の中では、生後9ヶ月と最も幼い方で、いわば、幼稚園の年少児。少し大きめの猫たちの中で、どこか緊張している様子でした。もなかに興味があることを伝えると、担当のおばさまが、私たちをもなかがいる部屋へ入れてくれました。旦那さんと係りの人が話をしている後ろに、私ともなか。私の足元に一生懸命スリスリするもなか。そんなもなかを抱き上げて、「うちにくる?」と私。もなかを下すと、「じゃぁ、抱っこしてみましょうか。椅子に座ってもらって、膝の上に猫を乗せるわね」とおばさま。私ともなかは、もう抱っこは済みましたが、、、と思いながらも、言われるままに再抱っこ。ちなみに、最近でこそ変わってきましたが、もなかは抱っこがあまり好きではありません。何があってシェルターの幼稚園ルームへ行きついたのかは分かりませんが、根底に人間不信を持たざるを得ない何かがあったのだと思います。そう考えると、あの時の足元へのスリスリアピールと、私に抱っこを許したことは、もなかとしては、相当頑張ったんだな、と思えてならないのです。私の膝の上のもなかに「一緒におうちに帰る?」と旦那さん。これが、私たちのもなかとの出会いでした。

こちら、うちへ来た当初のもなか。細っ!

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ちなみに、もなかのシェルターでの名前はSprite(スプライト)。飲み物のスプライトかと思いきや、妖精を意味する単語なのだそうです。いい名前ですが、もなかはもなかということで、新たな名前で新生活をスタート。シェルターでアダプトを待っている猫たちは、必要なワクチンの接種や避妊手術も済んでいて、「いつでも行けます!」状態。お持ち帰り用の段ボールに入ったもなかの重みが、今でも忘れられません。うちに来た初日こそ、ベッドの下にたてこもっていたもなかでしたが、その年の冬には暖を求めて、私や旦那さんの胸の上にいそいそと乗ってきたりもしていました。もなかがうちにきて、もうじき丸6年になりますが、今にして思うと、もなかが私たちに本当に心を開くまでには、5年近くかかったようにい思います。根強い警戒心が解けるには、それなりの時間が必要だったのでしょう。赤ちゃんの頃に、何があったのだろうなぁ。でも、そんなもなかの、初めて会ったあの日の行動を思うと、ありがとう、頑張ったね、としか言葉がありません。「この人たちのおうちの子になる!」という確信が、もなかの中にもあったのかな。

ちなみに、シェルターには成猫の部屋もあります。私のお友達は、サクラメントへ引っ越してきて、家具よりも先に猫を求めてシェルターへ行ったそうです。そして、家族一致で「この子だね」と決めたのが、10歳を超える黒猫ちゃん。品がある人懐っこい子でした。新しい家族との幸せな7年間を過ごし、ほんの数ヶ月前に家族に見守られて旅立ちました。

先日、この猫好き一家から「子猫の里親をしているから、見においでよ」と連絡をもらい、生後数週間の子猫を見に行ってきました。聞くところによると、里親制度は人慣れしていない子猫がアダプトされやすくなるように、子猫のうちに多くの人間に触れさせるためのボランティアだそうです。私たちが見に行った時には、すでに里親生活1週間が経過した頃で、何の問題もない、ただただひたすらかわいい子猫になっていましたが、里親開始当初は、うんちまみれで、小さいくせに歯をむき出して「シーッ!」と抵抗していたそうです。赤ちゃんの時期に人間への警戒心を解く、というこの過程が、もなかにはなかったのだろうな。

今では甘えたいときに甘え、遊んでもらいたいときに遊んでと言い、一人でいたいときには構ってくれるなと言い、いたってのんびりと暮らしているようにお見受けするもなか。もし、私たちがアダプトした猫が黒猫だったとしても、やっぱり「もなか」と名付けたのだろうか?と時々思います。もなかには、「名前と毛の色が合っていて良かったねぇ」と言うのですが、きっと、もなかがもなかであって、うちの猫になる、ということは運命だったのでしょうね。日本へ帰った時、私の叔母に「あのぉ、なんだっけ、あずきちゃん?」と間違われ、それがおかしかった旦那さんは、今でも時々、もなかを「あずきちゃん」と呼んでからかっています。

うちに来たときは、細くてシュッとしていたのに、気が付いたら立派なたてがみをまとい、ぽっちゃりちゃんになっていたもなか。しばらく会わなかったお友達から「こんなに足短かったけ~?」とか言われてしまうもなか。いまだに人が苦手で、お友達がもなかを見に来ても、ベッドの下から出てこないもなか。もなかは、今ではうちにはなくてはならない存在です。もなかの存在に、これまでどれだけ救われてきたでしょう。うちに来てくれてありがとう。あの日に頑張ってくれてありがとう!長生きするんだよ。

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