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住むとこ変われば、名前も変わる?!
私の名前は「まちこ」です。漢字にすると「麻千子」。ちなみに、タイトル上の写真は、私の母が、花文字作家の正木美香さんに書いていただいて、アメリカへ送ってくれたお名前色紙。素敵です。
さて、日本にいる間、正直に言うと、私はこの「まちこ」という自分の名前があまり好きではありませんでした。というと、ちょっと誤解がありますね。クラスのほとんどの女の子の名前が「〇〇子」であった私の世代、その中において、少数派だった二文字の名前や、「子」なし名前には憧れたものでした。
ところが、ここアメリカで暮らすようになって、私の名前が、様変わりしました。英語では、私の名前は「Machiko」となります。これが、ここでは、めっぽう難しい名前なのです。私の名前は「まちこ」ですが、英語になると「まちこ」になります。「まちぃこ」(笑)。大した違いはないのではないか、と思うかもしれませんが、これがなかなか大した違いで。
実際ににあったシーンをひとつ紹介しましょう。何回か顔を合わせた人に「What's your name? (お名前は?)」と聞かれたので、「まちこ」と答えました。無反応。あの~、名前行ったんですけどぉ。。。と思いつつ、念のためもう一度「まちこ」。表情変わらず、パチパチっと軽い瞬きを2,3回。あのー、聞いてますかー、と言いたいところですが、私はこの現象に慣れつつあったので、三度目は「まちぃこ」。「あー、『まちぃこ』ね。よろしくね!」。(軽くため息。。。)
前に働いていたベーカリーでは、唯一の日本人という、それまでにないアウェイな環境だったこともあり、「まちぃこ」に抵抗を感じつつ、そういうものなのかな、という気持ちと、ま、どっちでもいっか、という気持ちで、自分でも「まちぃこ」を受け入れつつあったある日、オーナーとこんな会話がありました。ちなみに、このオーナーは、急場では誰よりも働き、スタッフからもお客さんからも、とことん愛され、休日はポルシェのレースでブンブン言わせている、という、これはまぁ、たいしたおばちゃんです。
オーナー:「みんな、あなたの名前の、『まちぃこ』が難しい、難しいっていうのよね。『まちぃこ』のどこが難しいのかしら」
私:「本当は『まちこ』なんですけどね」
オーナー:「え?何?今、何て言った?『まちこ』なの?『まちこ』なのね『まちぃこ』じゃなくて。あら大変!」
その翌日、私はお休みだったので、二日後に出勤すると、キッチンスタッフからフロントスタッフ、ベーカリースタッフまでが、私の顔を見ると、意味もなくニコニコ&ニヤニヤ笑って「まちこ!」「まちこ!」と連呼するのです。聞くところによると、私との会話の翌日、オーナーはみんなのところをまわって「まちぃこではなく、まちこなの。はい、言ってみて!」と散々練習させたとか(笑)。ありがたいことです。オーナーのお母様は、デンマーク人で、やはり私と同じように、デンマークではあたりまえの名前が、アメリカでは正しく呼んでもらえない、とよくぼやいていたそうです。このお名前の一件で、私と他のスタッフとの距離はググっと近づいた感じがありました。
学んだこと。「まちこ」と「まちぃこ」は決して同じではなく、私の名前は、あくまでも「まちこ」であるということ。よって、お店を変わった今も「まちこ」で定着させています。最初は難しいし、私の名前を呼ぶまでに数か月かかる人だっています。でも、そんな人から初めて「まちこ」と呼ばれたときの驚きと喜びは、一種の感動ものです(笑)。
また、「まちぃこ」の他にもよくあるのが「ましぃこ」です。なぜか、ヨガの先生はみんなそろって「ましぃこ」と呼びます。ローマ字表記を英語読みすると、そうなるのも普通のようですね。毎日顔を合わせる相手でない限りは、面倒くさいので、あえて訂正はしません(笑)。It doesn't matter...(どっちでもいい、なんでもいい)
最後にもうひとつ。今のお店の中で、ちょっと仲良くしてもらっている、中国とインドネシアのハーフのおばちゃまと、ビルマ生まれ中国経由マカオ育ちのおばちゃまは、中国語が母国語です。「Machiko」という名前がどうしでも頭になじまないようだったので、紙に「麻千子」と書いて見せ、これが私の名前だ、と言うと「あー、これ、あなたの名前?マーチンツーね。OK!じゃ、これからは『チンツー』って呼ぶね!」とすんなり。説明はしたのですが「麻 千子」と理解しているようで、それ以来、私は彼女たちからは「チンツー」と呼ばれています。憧れていた珍しい名前だけでなく、中国名までついてしまった私。「麻千子」という名前をつけてくれた父と母、そして兄には感謝するばかりのアメリカ生活です。