カンボジア人はドーナツ屋、日本人は?
数日前に、アメリカ、カリフォルニアへの移住9年の記念日を迎えました。気が付けば、アメリカ生活10年目に突入。何かが変わったような、何も変わらないような… 生活環境が変われど、私と言う人間は変わらない、故の感想なのでしょうね。これからも、自分らしく日々を過ごしていきたいものです。
さて先日、Huluで「The Doughnut King(ドーナツキング)」という、ドキュメンタリー映画を見ました。カンボジアの内戦から、カリフォルニアへと逃れてきたカンボジア人の男性が、アメリカのドーナツに目覚め、ドーナツ店経営で大成功をおさめ、後に「ドーナツキング」と呼ばれるまでになった、アメリカンドリームのお話。「えぇーーー!そうなっちゃうのぉ?!」と、思わず私もおったまげたストーリー展開、日本でも順次公開になるようなので、興味がある方は、是非見ご覧くださいね。
この映画によると、アメリカにある25,000のドーナツ店のうち、約5,000店がカリフォルニアにあるそうです。それこそ、ドーナツキングこと、主人公のテッドさんの功績。ベイエリアにもサクラメントエリアにも、ドーナツ屋さんは街のいたるところにありますよ。アメリカってそういうところなのかと思っていましたが、カリフォルニアに特出したことだったのですね。そういえば、アメリカで最初に住んだアパートの、通りを挟んだ向かい側には24時間営業のドーナツ屋さんがあって、「アメリカではドーナツ屋さんが24時間営業なんだ!」と驚いたものでした。元来、甘いもの好きの私は、一時期、ドーナツにどっぷりとはまりまして、旦那さんにも協力してもらって、近隣のドーナツ店のグレーズドドーナッツを買いそろえ、目隠しをしてランキングを作る、利き酒ならぬ、利きドーナッツを決行したこともありました。あれはなかなかおもしろかった。その当時から、旦那さんが「ドーナツ屋さんは、カンボジア人が多い」と言っていましたが、なんで?と聞いても、彼も理由はよく知らず、ふたりしてそういうモノとして受け止めていました。この映画「The Doughnut King」で謎が解明。映画の主人公のテッドさんが、カンボジアからカリフォルニアへ渡り、ドーナツに一目ぼれ、ドーナツ作りを習得、そしてドーナツ店を経営、更には、同じような境遇のカンボジア人にもドーナツ作りや店経営のノウハウを伝授したのが、今も残るカンボジア人経営のドーナツ屋さんなのです。
映画を見て、ドーナツが食べたくなり、このエリアで未トライだったドーナツ屋さんに行ってみましたが、予想通り、そのお店もカンボジア人経営のようでした。コツや秘訣はもちろんあるのでしょうが、ドーナツ作りそのものが、ものすごく複雑なものだとは思えませんが、ドーナツはひとつ1ドルから2ドルとお手頃価格。そして、かなりの早朝からお店は開いているもの。家族総出で、早朝からドーナツをせっせと作り、せっせと売る、このスタイルがきっとカンボジア人のお人柄に合っているのでしょうね。ちなみに、カリフォルニアのドーナツ需要は大したものです。職場で誰かが辞める、ミーティングがある、忙しい一日だった、または忙しい一日が予想される…など、何かにつけて、差入れで登場するのがドーナツです。ドーナツ好きの私にとっては、嬉しい限り。この差入れされたドーナツの大きな箱を見るたびに「アメリカだなぁ」と、ひとりでニヤリ。日本だったら、おにぎりなのかなぁ、なんて…
さて、ここカリフォルニアには、ドーナツ屋さんといったらカンボジア人、と同じように〇〇屋さんは✕✕人、というものが他にもあります。なぜだか理由は分かりませんが、クリーニング屋さんは韓国人が多いそうです。そして、日本人はというと、庭師です。かくいう、うちの旦那さんのお父さんも日本からアメリカへ渡ってきた日系一世で、庭師(Gardener)でした。今は、旦那さんの弟が、お父さんのお仕事を継いでいます。最近では、日本人の庭師は随分と減ってしまったようですが、旦那さんが子供だった頃は、両親の日本人仲間の多くが庭師だったそうですよ。お父さんが手掛けた、旦那さんの実家のお庭は、橋がかかった池、松の木、石の使い方など、純日本風。昔は、その池で鯉も飼っていたそうですよ。そんな日本風のお庭を求める需要も多かったようですし、ここカリフォルニアにおいて、庭師という仕事は、器用で勤勉な日本人のスタイルによく合っていたということなのでしょう。
最近は日本でも、外国からの労働者が増えていると聞きます。確かに、2019年に一時帰国したときは、都内のコンビニ、チェーンのレストランの店員さんは、留学生かなと思われる若者が、本当にたくさん働いていました。日本の学生はどこで何をしているのだ?と思ったくらい。ジャパニーズドリームでもアメリカンドリームでも、先発隊の成功談や体験談は、後発隊の大きな情報源になります。アメリカで生活をするようになり、気が付いたらパン屋さんになっていた私。まだまだ、知らないこと、初めてのこともいっぱいで、日々勉強の毎日です。海外生活ならではの苦労がないと言ったら嘘になりますが、それでも、自分らしく、楽しく生きています。これからアメリカへ来ようとしている人に「なんとかなるのかも」なんて思ってもらえたら嬉しいですね。どこにいても、人生は続きます。要は自分。何を感じ、何を思い、何を考え、どう生きていくか。後発隊の参考に、なんて言っている余裕はないですね(笑)。頑張ろ、私。