思わず「ホント?!」の ラティーノネタ3選
カリフォルニアで出会うラティーノ文化
1年ほど前の「メキシコはお隣さん。カリフォルニアのラティーノ文化」の記事でも書いたように、南の国境をメキシコと接しているカリフォルニアの日常生活には、ラティーノ文化が点在しています。「人種のるつぼ」と言われるアメリカでは、職場にも白人、黒人、アジア人、ラティーノがそろっていているのがあたりまえ。もちろん、アメリカでも地域によって、白人率が高いとか、黒人が多いとか、アジア人多めなどの特徴はありますけどね。
私が住んでいるサクラメントの郊外あたりは、白人超多め、ラティーノそこそこ、そこに少々の黒人とアジア人っていう感じ。20名ほどからなる私の職場のベーカリーも、アジア人は私とフィリピン人女性の2人。黒人は1人。ラティーノは4人で、あとはみんな白人です。
4人のラティーノのうち、ひとりは私の現場ボスのPablo(「あったかくて、たくましい。移民の大先輩&同僚のPablo」)。彼はグアテマラ出身です。そして、メキシコ人のケーキデコレーターの女の子が2人。もうひとりは、午後から閉店シフトのメキシコ人のおばちゃんです。ラティーノの特徴なのか、全員、陽気でフレンドリー。働き者だけど自分を追い詰めないほどよさが、私は好きです。今日は、この3人を通して出会った、思わず「ホント?!」と言いたくなるラティーノネタを3つ紹介します。
まさかの、ライムは皮ごと?!
先日、白人デコレーターのエミリーが、私の隣でキーライムパイの仕上げをしていました。キーライムパイというのは、ライムの果汁、卵黄、コンデンスミルクが入ったフィリングをパイクラストに入れて焼き上げ、ホイップクリームがトッピングされる、甘さの中にもライムの酸味がすがすがしい人気のパイのひとつです。私たちのベーカリーでは、ホイップクリームの上にライムの薄切りをトッピングしていて、彼女は、そのためのライムをスライスしているところでした。
キーライムパイ然り、フルーツタルト用にカットした果物の残りを頂戴するのは、何を隠そう、ベーカリーで働く私の楽しみのひとつ。その日も「ライム残るかな~」と横目でチェック。作業は続行中だったものの「余ったら欲しいなぁ~」アピールの意味も込めて、早々にトッピングには使えない端っこ部分に手を出すことにしました。まぁ、果実はほとんどついていない部分ですが、ゼロではないし。その切れ端を口にしていると、なんだかエミリーに必要以上に見られている気が… 目が合った彼女は、私がライムの皮を食べるかどうか見ていたのだと言ったのです。「は?ライムの皮?やーだー、食べるはずないじゃ~ん!」と笑ったのですが、そこで彼女から驚きの発言が!
「Pabloは皮も食べるんだよ」
え?皮って、この外側の分厚い皮のこと?冗談でしょ?どういうこと?そんな私の反応を楽しむかのように、彼女はライムを大きめにカットすると「見ていてね!」とPabloのところに向かいました。
「ねぇ、Pablo、ライムいる?」とエミリーが差し出すライムを見て、顔を輝かせたPablo。エミリーの横でしげしげと観察中の私の存在を確認しつつも、その大きなライムを、あたりまえのように口に放り込みました。そしてむしゃむしゃむしゃ。エミリーがPabloに状況を説明すると、彼はむしゃむしゃしながら私に向って「うん、うん!」と頷くのです。疑うわけではありませんが「皮を飲み込むの?」と改めて確認をしてしましましたが、間違いないとのこと。でも、ライムの皮ですよ。結構厚いし、硬いですよぉ。
更に驚くことに、私はこれはてっきりPablo事だと思ったのですが、エディもライムの皮を食べるとのこと。つまり、ラティーノにとっては“そういうもの”のようなのです。柑橘類一般、なんと、グレープフルーツの皮さえ食べちゃうんだって!
そういえばつい最近、エディから「すっごくおいしいから!」とグレープフルーツのひとかけを皮つきでもらったことがありました。私は当然のごとく、皮を剥き、さらに房ごとの皮さえ飲み込みきれず、口から取り出したものでした。そうか、エディはあの外皮をも食べていたのか…
子供の時からそうやって育てばそれがあたりまえなのでしょうが、いやいや、私にとってはかなり衝撃的な事実でした。
牛=Cow=バカ?!
私たちのベーカリーでは、週末限定でブリオッシュ生地を編み込んだChallah(ハラ)というパンを作っています。通常、生地の仕込みは日曜日で、翌日は一晩寝かせた生地の成型になります。1本4オンス、4本の編み込み。それなりの時間はかかりますが、私はこのChallahの成型が結構好きです。人気のパンのひとつで、週末にはこのパンを目指して来店するお客さんもいます。そして、このパンの成型で私が楽しみにしていることは、ズバリ、余った生地で遊ぶこと。これまでに、うさぎ、猫、パンダ、タコ、人間などの動物を中心に、時には花やかたつむり、シーズンによってはクモも作りましたね。あ、握り寿司もあったな(笑)。このパン、発酵中と、更にはオーブンの中でもよく膨らむので、最終形を考えて成型するのは、これがなかなか難しいのです。だもので、焼きあがったパンを眺めては「これはうさぎ」「いや、猫でしょ」「これは難しい」「これは...」と頭を右に左にと動かして推理するのが、スタッフのお決まりの楽しみとなっています。これも経験、練習、想像力、創作意欲のうち、というのが私の“遊び”のいい訳です。真剣に作っている訳ではないので、みんなの反応を見たり、言いたいことを言うのを聞いたりするのは、ただただおもしろいのです。
先日、いつものノリで牛を作りました。例によって発酵~オーブン中に鼻が下に伸びてしまい、どこかキリンっぽくはなってしまったものの、ほぼ全員が第一声で「Cow!」と言っていたので、出来はそこそこということで。
その日、私がランチ休憩から戻ると、Cow(牛)を見たエディがニコニコしながら近づいてきました。「マチコのパン見たよ!すっごくいい!何て言うんだっけ…えっと…(と、英語の「Cow」を思い出そうとしている) ほら、バカ!」彼女が思い出しているところで私が「Cow?」と言ってしまったので、なんとなく曖昧だった最後の部分。と、すぐに、エディが傍にいたPabloにスペイン語で話しかけました。「Pablo、マチコのバカ見た?マチコ、ブリオッシュでバカを作ったんだよ!」と。これだけ何度も聞くと、どうやら私の聞き間違いではないらしい、ということで、これは確認作業が必要です。
「エディ、今「バカ」って言った?」
「うん、スパニッシュでCowはバカって言うの」
ほ、ほぅ。私が、ニヤニヤしながら「エディ、日本語でバカってなんのことだか知ってる?」と聞くと、当然、エディは「何?何?」となりますよね。
「日本語でバカはね「Stupid」ってことなんだよ」
今度はエディが「うそー!?」の番でした。早速Pabloに伝え、PabloはPabloで私に再確認です。
それにしても、スペイン語で「バカ」と呼ばれる牛たちが、なんともかわいそう。家に帰って調べてみると、正しくは「Vaca」で、音声で聞く限り「ヴァカ」。うむ、Close enough (十分近い、同じようなモノ)ですね。
あしたまにあ~な?!
最後も日本語とスペイン語の奇妙な一致についてです。
例えば仕事が終わって家に帰るとき、日本人なら「お疲れ様~」が定番中の定番でしょう。でも、英語にはこの「おつかれさま!」にあたる物言いが存在しません。よって、英語でよく使われるのが「See you tomorrow!(また明日!)」や「Have a nice day!(良い一日を)」になりますが、その裏にある気持ちとしては日本人の「お疲れ様」と同じように思います。
そして、この「See you tomorrow!」をスペイン語にすると「Hasta mañana」となり、で音声で聞くと「アスタマニャーニャ」と聞こえます。これで思い出すのが、その昔、放映されていた5分ほどのテレビの番組「あしたまにあ〜な」。濱田マリさんがナレーターで、発売予定のCDや新作の映画、新商品などを紹介する番組でした。
実は、日本語の「明日」にあたる部分は「Hasta (アシタ)」の方ではなく「mañana (マニャーニャ)」の方なのですが、ラティーノの同僚には「また明日!」のつもりで「あしたまにあ〜な」と言えばばっちりOK。
日本人はお別れの挨拶は上手だねぇ、なんて思われているかもしれないですね。
Hasta mañana
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