思い出のシークレットサンタ
今年も、11月の第4木曜日のサンクスギビングが終わりました。家族が集まって、ご馳走を囲むこの日は、クリスマスとならんで、ベーカリーのかき入れ時。大量のパンを焼きまくった日々も取り合えず無事終了。1ヶ月後にはクリスマスに向けて同じことが起こるのですが、とりあえずホッと一息の本日です。
サンクスギビングの翌日はブラックフライデーと呼ばれる、お買物の日。でも、おなか一杯食べた翌日というだけあって、ベーカリーを含む食料品店は静かな朝を迎えます。やっと、通常の業務に戻り、疲れを実感しながら車で帰路についていたとき、早くも気分はクリスマスへと向かう光景を目にしました。天井にクリスマスツリーをくくりつけて走る車です。タイトル上の写真の光景は、実生活の中に普通に存在するのですよ。ツリーはもちろん本物の木です。本物の大きなクリスマスツリーを購入して、自家用車の天井に縛り付けて家へ持ち帰る。なんともアメリカっぽい、私が好きな光景のひとつです。
サンクスギビングが終わるや否や、お店などのBGMもまた、クリスマスソングに変わります。あまりにもエンドレスなためか、または、忙しさを連想させるだけのためか、一緒に働く、または働いてきた仲間の大多数は、このクリスマスソングが好きでありません。そんな中において、クリスマスソング大好き!だったのが、Karen's Bakeryで一緒に働いていたFoodie(食通)の彼女。日頃からラジオがかかっている職場だったのですが、サンクスギビングの翌日から、彼女が出勤するとチャンネルはクリスマスソングのみの特別ステーションに設定されたものです。1ヶ月間、毎日8時間をクリスマスソングとともに仕事をするのです。幸いなことに、私はクリスマスソングが好きです。さすがに、8時間ぶっ続けで聞いていると多少飽きてきますが、それでも好きです。彼女とは出勤時間に差があったので、正確には1日6時間ほどでしたしね。また、私にとっては英語の歌詞はより自然に聞き流せる、という点も大きいのでしょう。J-Popも好きですが、日本にいる頃、仕事で終日聞き続けることがあった日は、さすがに耳垂れ状態でした(笑)。やっぱり、同じ感じの曲調、そして自然と耳にも頭にも入ってくる日本語の歌詞のせいもあるのでしょう。だから、クリスマスソングにうんざりするアメリカ人の気持ちも分かる気はするのです。私が現在働くベーカリーのメンバーのほとんどはクリスマスソング反対派のため、ベーカリー内では、あえて他の音楽がかかったりします。なので、私は自分の車の中をクリスマスソングラジオに設定します。たとえ出勤時間が5分程度とはいえ、私は、この時期にはクリスマスソングが聞きたいのです。
さて、クリスマスに向けて始まることのひとつが、クリスマスギフトショッピングです。家族、友達、同僚、お世話になっている人などへのプレゼント選びは、楽しいけれど、気を遣うものでもあります。家族内でルールを決めてプレゼント交換をすることもあるようです。ある年のFoodieの彼女は、家族内で金額固定のギフトカードの交換をすることにした、と言っていました。ギフトカードといっても、レストランから、デパート、スーパー、映画館、ガソリンなど、ありとあらゆるものがありますから、それぞれの家族が喜びそうなカード、またはウケそうなカードを選ぶのだ、と言っていたっけ。
そういえば、私が子供の頃、クリスマスに家族でプレゼント交換をしたことがありました。確か、各家族メンバーに対して300円とかで。私は母に、テーブルにおくミカンなどを入れるようなバスケットをあげ、兄は母になぜか輪ゴムをひと箱ほどプレゼントしていたように記憶しています。あの頃の私たち子供からする「お母さん」へのプレゼントって、そんなふうになっちゃったんですね(笑)。そして私は父から、結構ちゃんとしたペーパーナイフをもらいました。モノ作りが好きだったからでしょうか。でも、今考えると、あれはどう考えても予算オーバー!ずるいなぁ。また、父は母と兄へ、ゼンマイでカタカタと動く入れ歯のおもちゃと、スイスイと走るお寿司のおもちゃをプレゼントしていました。遊び心いっぱいの父らしい。ひとりでプレゼントを買いに行った日のこと、プレゼントを一つずつ開封するたびに笑った、本当に楽しいクリスマスの思い出のひとつです。
さて、クリスマスプレゼント交換ですが、ここアメリカでよく行われる方式があります。その名も「シークレットサンタ」。事前にプレゼント交換参加者の名前が書かれたクジを引いて、誰が誰にプレゼントを贈るかを決めます。でも、誰が誰に贈るのかは秘密。決められた予算内でプレゼントを準備し、交換当日にプレゼントを贈る人の名前のタグをつけて、指定の場所にそっとプレゼントを置きます。誰かが誰かのシークレットサンタになるというものです。この方式のいいところは、贈る相手が分かっているので、その人にあったプレゼントを用意することができる点。送り主は明かさなくても、その人のことを考えてプレゼント選びをすることができるのです。ランダムなプレゼント交換で起こりがちな、サイズ違いとか「なんでコレ?」ということが起こりづらいのですね。
私は、アメリカのベーカリーで働き始めた最初のクリスマスに人生初のシークレットサンタを経験しました。私も含め、日本から来たばかりのスタッフもいましたので、シークレットサンタなるもののことも知らず、それを紹介してくれたのが、韓国系アメリカ人の女の子でした。その子のリードで名前が書かれたクジをひきました。私が引いた名前は。。。じゃじゃーん♪「ぶちこちゃん」!そう、先日書いた「日本人も大好きなTrader Joe's。人気のワケは…?」の記事に初登場した、あのぶちこちゃんでした。私は内心「やったぁ」と思いました。日頃から本当にお世話になっていましたので、お礼の気持ちを形にできる&プレゼント選びには悩まなくて良さそうだ、と思いましたからね。
ぶちこちゃんへのプレゼントでまず最初に思ったのが、スタバのギフトカードでした。超忙しい日々と格闘を続けていたぶちこちゃんでしたが、たまに時間ができるとスタバに行って本を読むのが、その頃のぶちこちゃんの楽しみのひとつでしたので。私がおススメした本なども読んでくれていたので、私も嬉しかったのです。ということで、実用的ではありますが、まずはクリスマス仕様の可愛いスタバのギフトカードを購入。残った予算で、可愛いムースのオーナメントをGETしました。ちなみにムースは日本語だとヘラジカというようでです。ちょっとずんぐりむっくりしたシカって感じで、クリスマスにはつきもの。サイズ感と見た目の可愛さからの選択でした。ここで終われば普通のプレゼントだったのでしょうが、前日の晩に思いついてしまったのです。そうだ、クリスマスカードを作ろう!シークレットサンタということで、私は新聞やらチラシから「Merry Christmas! -Your Secret Santa」の文字を一文字ずつ切り抜いて、カードに貼り付けました。私としては、かなりの名案だと思ったのです。ただ、クリスマスソングを聞きながら、もくもくと作業をする私のことを、半ばあきれ顔で見ていた旦那さんの顔は覚えています。「You're crazy...」な~んても言っていましたが、私は「まぁ、よくそんな面倒くさいことをするねぇ」の方だとばかり思っていまして。出来上がったカードは会心の出来。スタバのギフトカードとムースとセットして準備万端。ぶちこちゃん、喜んでくれるかな♪♪♪
プレゼント交換当日。仕事もひと段落して、いよいよプレゼント開封の時間がやってまいりました。ぶちこちゃんの番です。まずはカードを開き。。。第一声、「コワッ。何これ?コワいんですけど」 えー、そっち?!と内心、驚く私。そして、ムースを見たぶちこちゃんが取った行動がまた。。。なんと速攻でムースを耳にあて、時限爆弾でないことを確認したのです!しかも結構マジメに。そして、爆弾装置ではないことを確認した上で、ムースに対して言った言葉がこれ。「誰これ?」 えーーーー!焦りまくる私。「ちょ、ちょ、ちょ、ほら、見てください。ここにスタバのギフトカードがあるじゃないですか」と無難と思われるスタバのギフトカードで必死のフォロー。と同時に、ぶちこちゃんの思わぬ言動に笑いが止まらない私。ルンルン気分で脅迫状を作っていた私がヘンなのか、あんなに可愛いムースを疑ったぶちこちゃんがヘンなのか。結局、私がぶちこちゃんのシークレットサンタだったことは簡単にばれてしまいましたが、これが、超びっくり&おなかがよじれた、私の人生初の思い出に残るシークレットサンタでした。
そうそう、私はというと、かなり便利な赤いキッチン手袋とちょっと高級なハンドクリームをいただきました。私のシークレットサンタが誰なのかも、そのプレゼント内容からすぐに分かり、結局シークレットの部分はなくなりましたが、みんながそれぞれの相手のことを考えてプレゼント選びをしたという事実が明るみに出まくった、心温まるシークレットサンタでした。楽しかったな、そして、いい仲間たちだったな。今ではぶちこちゃんは日本へ帰り、我らのボスベーカーは日本で自分のお店をもち、韓国系アメリカ人の女の子も自分のお店をオープンしたとか。私は、あのお店、あの仲間から始まったベーカー道を、今も歩き続けています。
あ、あの時いただいたキッチン手袋、さすがに結構ボロボロになりましたが、今でも使っています。手が小さい私にはとっても便利だし、何よりも思い出付きですからね。ボロボロながらも、まだまだ重宝していまーす。
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