不時着機
(平成二年十月)
かつてわたしが所属していたウルトラ・ライト機のフライング・クラブの住友金属の傘下入りから二年半。 燃料切れか操縦ミスか、はたまたパイロットが目の下にある鹿島の海にもぐってしまったのか、その行く末がはじめから危ぶまれながらもこれまでなんとか?フライトを続けてきたのに、ついに不時着の憂き目を見ることになった。
こうなることは、以前にも書いたことがあるようにわたしには最初からわかっていたが、「だから言ったじゃないの」と改めて言うほどの熱意はすでになくなっている感がある。 女の直感はそれほどバカにしたものでもないことがこれで証明されたことになる。 この会社の償却期間が五年と知った時点で、わたしは大会社の、こういう「もののついでに」経営でもしてみようかという姿勢におおいに疑問を感じ、また当初から採算ベースに乗せることばかりを考えているようなやりかたに「どっか違うんじゃない?」と言いたかたところである。
かつぎあげられて社長になった人は一橋大出のエリート氏であるはずなのに、非エリートから見るとやはり「どっか違うんじゃない? 」を口にせざるを得ないような感じのうちに終始し、ついに学歴だけでは経営はできないということの証明をした。住友金属の社員すべてがこの調子というわけではないが、天下の大会社がオープンのときには新聞一面を裂いてPRしたような華々しさをどこへ押し込んで後始末しようというのかが見ものになる。
あちらに大学を出ていないために仕事に就けないと心配する人あればこちらは大学を出て経営に失敗する人ありで、この世はいかに生きにくいかを両極面の例をとおして教えられる。いずれにしてもどんな人も食べて生きていかなければならないことには変わりが なく、かくいうわたしも本意であろうがなかろうがお店の仕事を続けていかなければ口に糊することもできなくなる。
飛行機は永遠に飛び続けることはできない。 いつかは地上にもどって来なくてはならない。 空中に給油所がないのははじめからわかっているのであるからガス欠になる前に降りて来なければいけないし、パイロットに技量が欠けていると思えばそういう人に機体を任せてはならない。
してみると管制ミスか。しかしウルトラ・ライト機はそういう管制の必要のない飛行機であるはずだが…。
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