「湯沢町人口ビジョン・総合戦略」を読んでみよう!
はじめに
さて、湯沢町では来年度(2025年度)に「総合戦略」の改訂があるので、今年(2024年)は湯沢町ではその改訂準備が行われています。
今回は、その新しい総合戦略ができる前に、現行の人口ビジョン・総合戦略を見てみたいと思います。
「ことし上半期の出生数 約33万人 年間70万人下回るペースで減少」
先日、こんなニュースが出てきました。上半期が33万人なので、単純に「X2」をすると66万人くらいになって、70万人を切りそう!というニュースですね。
出生数の減少はこんな感じで200万人台からどんどん下がってきているのにも着目すると、大きな少子化の波がどんどん加速しているというのが分かると思います。
さて、そして今日は、湯沢町の少子高齢化と人口減少の問題について見ていくことになります。
「湯沢町人口ビジョン・総合戦略」って何??
「湯沢町人口ビジョン・総合戦略」は、湯沢町のホームページのこちらからダウンロードすることができます。
全体の構成は、タイトルにもある通り、2部構成になっていますね。
2025年度に改訂が予定されているのは、この第2部の総合戦略の方、ということになります。
さて、最初に人口ビジョンの冒頭の「目的」はこんな感じです。↓
続いて、第2部「総合戦略」の冒頭の「目的」がこちらです。↓
このオレンジの部分、「これまでにない危機感をもって問題意識を町民と共有」する。これを行政任せにせずに町民もちゃんとやってみよう!というのが今回のテーマです。
将来人口推計 〜2045年、人口は5374人になる〜
さて、それじゃあ第1部の「人口ビジョン」の中を見ていきたいと思います。まずは、将来人口推計ですね。↓
湯沢町の人口は、本日の直近のデータ、2024年10月末ですと7,888人です。上図の推計値より少し増えていますね。今回はこの2020年以降推計をもとに見ていきます。
さて、平成25年(2013年)の8,046人を基準として、2045年の数字を見てみると、、、
・全体人口は33.2%減少、2/3になります。
・年少人口(14歳までの子ども)は362人減少。
・生産年齢人口(15歳から64歳)は2,270人減少し、半分になる。
・これに対して、老年人口(65歳以上)は23人の減少のみ、0.8%しか減りません!
「こんな感じで人口が減っていくのか、ちょっとやばそうだな。。。」くらいのイメージは持っていただけましたでしょうか?ここから先は、その「やばさ」の中身をもっと具体的に見ていきたいと思います。
人口推計が示す湯沢町の未来の姿(人口構造の変化)
「湯沢町人口ビジョン」の45Pから、人口推計から予測される湯沢町の将来の姿が、10個の視点でまとめられています。まずはこれ順に見てみましょう。
①2025 年には 65 歳以上人口がピークを迎える
↓の図表をご覧ください。2025年のところを見ると、65歳以上人口は、3,010人でピークを迎えていますね。これは推計値ですので、実績値としてはどうなるかも気になるところです。
②2030 年には高齢者だけの単独世帯(独居老人)の割合が最大になる
↓の図の2030年のところを見ると、高齢者単独世帯が885で最大になっていますね。2015年のところが493というところからすると、かなり増えている感じがします。
③2030 年には 75 歳以上人口がピークを迎え、高齢者の 3 人に 2 人が 75 歳以上になる
↓の表の2030年のところを見ると、確かに1,892人でピークになっています。
④2035 年には勤労者と高齢者の割合が 1:1 になる
これもさっきから見ている図表38 ↓の2035年のところから分かりますね。勤労者2,957人、高齢者2,917人になって、だいたい1:1になっています。
⑤2040 年には 85 歳以上人口がピークを迎え、高齢者の3人に1人が 85 歳以上になる
これもさっきの図表39↓の、2040年を見ると分かりますね。845人で最大。
⑥2045 年には2人に1人が65歳以上の高齢者になる
これもさっきの図表38↓の2045年のところから分かります。2,705÷5,374で、ほぼ50%です。
⑦2045 年には 3 人に 1 人が 75 歳以上の高齢者になる
⑧2045 年には勤労世代(生産年齢人口)が(2015 年比で)半分になる
これも、この図表↓から読み取れる内容ですね。2015年で4,547人だった勤労世代が、2045年には2,268人になる。
⑨2045 年には20-39歳女性数が(2015 年比で)半分になる
⑩2045 年には子ども数が(2015 年比で)半分になる
最後の2つはこちらの図表から。↓
…..こんな感じで、勤労世代も、子どもの数も、若い世代の女性の数もどんどん減っていくことがデータから読み取れました。ここまでくると、湯沢町の「人口減少・少子高齢化」という社会問題の輪郭が見えてきます。
人口減少が地域社会・町民生活に与える影響
次は、この人口減少が地域社会、町民生活に与える影響について見ていきます。冒頭も述べた通り、問題意識を町民と共有しながら、みんなでこの人口減少について対処していきたいというのが人口ビジョンの理念です。
なので、ここからの話をより具体的にイメージして頂くのが特に重要になるかと思います。
人口ビジョンでは、町民生活に与える影響を、
1)生活、
2)経済、
3)財政、
の3つに分けて解説しています。順に見ていきましょう。
(1) 町民生活に与える影響
[世代間の支え合い機能の低下]
2045 年には高齢者 1 人の福祉に要する費用を 1 人の勤労世代で負担する社会になる
この図表 ↑ を見ますと、高齢者一人あたり福祉費12.1万円(2015年の実績値が、2045年まで続くて仮定。)のうち、一人当たり5.6万円負担しているので、倍にすると11.2万円。だいたい2人で一人分くらいをカバーしていたのが、働き世代がどんどん減っていくので、2045年には12.1万円のうち11.7万円が一人当たりの負担になります。つまり、勤労世代一人が高齢者一人を支えるような形になるということです。財源の厳しさが読み取れると思います。
[孤独による町民の健康リスクの上昇]
未婚者の増加が高齢単身者を増やす
高齢単身者は、健康や生活に心配がある。。。これは良く聞く話だしなんとなく想像がつくと思うのですが、もう少し細かく読んでみましょう。
まず、2040年代において65歳以上の世代というのは、2015年時点で40歳以上の人になります。2025年で言えば50歳以上の人ですね。この世代の方々についてのデータがあります。↓
まず女性です。2025年で言えば50歳以上の女性は、現在470人程度で、2040年までには、既婚者の方はパートナーの方が亡くなられたり、ご自身が亡くなられたりすることもあると思うのですが、470人のうち140人の方が単身高齢者世帯になると予測されています。
次に、男性の場合は580人います。この方たちは推計では、2040年代には260人ぐらいになります。男女を合計すると約400人程度の単身高齢者がこの町に2040年にいることになります。これをどう支えるかという問題があるわけです。
また、上の図を見ると、全国比でも県内比でも、湯沢町の男性未婚率は特に高いという傾向があるのも、特徴になっています。
[孤独による町民の健康リスクの上昇]
高齢化と未婚が孤独を生み、町民の健康を蝕む
ここはイメージがしやすいところだと思うので、「人口ビジョン」の記載を以下そのまま読んでみてください。↓
[町民同士の支え合いや地域コミュニティ機能の低下]
子どもの減少によって、地域住民同士のつながりが途絶え、地域活力が失われる
この問題については、湯沢学園の学校運営協議会・コミュニティスクールでも、現在すでに顕在化している問題として、地域学校協働活動を増やしていったりしようという議論をしているところです。人口減少・少子高齢化はいろいろな人たちがみんなで取り組んでいかなくてはならない課題ということですね。
(2) 地域経済に与える影響
〜主要産業の人手不足が深刻化する〜
次は経済の話ですね。主要産業の人手不足が深刻化する問題です。湯沢町の主要産業は観光業ですが、こちらの労働供給の将来推計を見てみましょう。
このグラフの緑の線は、町の産業を成り立たせるために必要な人数を示しています。これは2045年には減っていくのですが、まずは観光業については、調子が良ければインバウンドなどで、これからも海外のお客さんも引き続き来てくれると思うので、お客さんのニーズは引き続きあると仮定します。そうすると、人口減少のペースよりも、2,400人だった必要人数が2045年には2,000人必要になります。
一方、青と水色の線を見てください。青は町内就業者の数、つまり供給の数です。2015年の時点で743人しかいません。現状でも南魚沼市などから湯沢町に働きに来てくれる方がたくさんいて、町外居住の就業者の方たちが635人います。ちなみに南魚沼市も湯沢町と同じぐらいのペースで人口減少していく予測なので、そういう意味ではもう「運命共同体」ということになります。
さて、そうすると、だいたい1/3、623人の働き手が足りなくなるということになります。これも人口を増やしていくことが、産業を維持させていくために必要ということになります。
(3)地方財政に与える影響
・2035 年以降に将来の公共施設等の更新費用がピークを迎える
・2035 年以降、公共施設や道路などの一部が使えなくなる
インフラ・公共施設等の維持にかかる費用などは、「湯沢町公共施設等総合管理計画」で詳細に議論されています。これは、町の公共インフラについて分析した資料で、将来の税収を見据えて、これから老朽化する公共施設がいつ更新時期を迎え、寿命を迎えるのか、そういったものを逆算して、いつまでにどれくらいお金が必要なのか、どういう順番でどの公共施設を手当てをしていくのか、を計画している資料になります。
この「湯沢町公共施設等総合管理計画」かなり上の方にも、人口ビジョンが引用されて、将来の人口推計の話が書いてあってあります。人口ビジョンがなぜここに書いてあるかというと、やはり税収の話に直結するからですね。
これ(↑)は湯沢町の税収の推移です。将来推計ではなく、過去の実績だけ書いています。この赤い部分が一番大きな割合を占めているのですが、これは地方税です。地方税というのは主に住民税(個人・法人)と固定資産税と軽自動車税です。これは全部、住民がいて、働き手がいて仕事して稼いで,,,ということが起きないとどんどん下がっていく性質の税収ですね。
この10年だけ見ても42億が36億に、6億減っています。国からの地方交付税とか、地方債という形で町が借金をして運営するということもあるわけですが、やはり根幹は地方税の税収なので、ここを維持していくためにも人口を維持していくことが必要ということが言えます。
↑の通り、道路舗装のほ修繕すらも十分に行われなくなる可能性。。。なども指摘されています。
人口の将来展望
目指せ! 2045年に「6,326人」
さて、「人口ビジョン」に戻りまして、ここまでまあちょっと暗い見通しの話が書かれていたわけですが、「このままだとまずいから、少しでも良くない未来を回避できるように人口展望を描こう!」というのがここから先の内容です。
「人口ビジョン」では、2045年に6,326人の人口を目指すことを目標にしています(↑)。これが湯沢町の人口ビジョンという資料のゴールみたいなものですね。これは、これまで見てきた社人研の推計よりも1,000人ほど多い数字です。
多分、この人数であってもやはり諦めなくてはいけないインフラは出てくるだろうし、労働者世代が支えなくてはいけない高齢者の数や割合は当然高くなっていくのですが、それでもそのペースをちょっとでも緩やかにしていく、そういった目的でこの数字が掲げられているわけですね。
合計特殊出生率
さて、この6,326人にするというのは、どういう計算でこの数字が出てくるのかと言いますと、まず一番重要なのは合計特殊出生率です。2020年の実績値で1.46です。
合計特殊出生率というのは、一人の女性が生涯に産む子供の数ですね。これが2を超えていないといけないというのは、当たり前といえば当たり前なのですが、なぜかというと、パパとママがいて2人いるので、ママが2人産めば親が亡くなっても2人残る、人口が維持されるということです(人口置換水準)。なので、合計特殊出生率は2が、目指すべき基準になります。ただ、子供も途中で亡くなってしまったりすることもあるので、2ぴったりではなく、2をちょっとだけ超えた数字が目標値として設定されます。湯沢町の場合も、2045年に2.07を目指そうとなっています。
2045年に2.07、ここから逆算すると、上図(↑)のように徐々に合計特殊出生率を上げていく必要があります。これも決してやさしい目標ではないですね。
社会増減
合計特殊出生率が「自然増減」、つまり生まれたり亡くなったりというのに関わる数字です。もう一つのポイントは「社会増減」です。これは、湯沢町に来る移住者とか、湯沢町から引っ越して出て行ってしまう人の話です。この社会増減というのも人口動態に影響を与えますね。
さっきの2045年の「6,326人」という目標値は、25歳から39歳の夫婦と子供一人世帯が年間5組移住し続ける、と仮定した場合の数字です。↓
このように、出生率が徐々に徐々に上がっていく、加えて、年間5組は家族3人が引っ越してくる。そうすると「2045年に6,326人」という数字が実現できるという計算になっています。
2020-2024総合戦略のKPIの達成状況
「人口ビジョン」には、人口の数字の話だけじゃなくて、「目指すべき将来の方向性」として、以下のような「まちづくりの方向性」も示されています。↓
人口ビジョンで示された6つ「方向性」、このそれぞれに対して具体的な打ち手を定めていくのが「総合戦略」です。この「総合戦略」の中ではKPI(数値目標)が設定されています。今回は、その中でも「④子供がすくすく育つまちづくり」のKPIを見ていきたいと思います。↓
この「子供がすくすく育つ街」という目標に向けて、まず数値目標がここに書かれています。
- 合計特殊出生率を、2015年あたりの平均1.46から令和6年までの3年平均で1.61にする
- 年間の出生数は、平成25年から29年の5年間平均の44人を48人に増やす
- 婚姻件数は、平成28年の36件を40件に上げていく
この設定目標値に対して、これまでの取り組みの結果どうだったかというのを、2024年5月に、湯沢町総合戦略推進会議で議論されています。2024年5月の湯沢町総合戦略推進会議の資料が以下になります。↓
結果と考察を見ると、目標である合計特殊出生率と年間出生数、および婚姻件数も目標値を達成できていない上に、計画策定時の値からも下がっています。特に新潟県内の他の町と比べても厳しい状況にあります。結婚する人が少なく、婚姻件数の減少に比例して出生数も減少していると考察されます。
評価としては、婚姻数・出生数について減少を止めることができていないことから、実施した取り組みが効果につながっていないと評価されています。
達成できていないからダメじゃん、、、と言ってるだけで終わってしまうのはPDCAではないので、今度は、この話をもう少し詳しく理解するために、人口ビジョンの関連資料を見ていきましょう。
「人口ビジョン」に出てくる色々なデータを見てみよう!
出生数と死亡数(自然増減)の推移
まず、出生数と死亡数の推移を見てみましょう。
青い部分が出生数、水色が死亡数です。直近の平成29年の数字だと43人が生まれて128人が亡くなっており、差し引き85人の自然減でした。これが拮抗したのが平成14年で、平成6年を振り返ってみると、ここが出生数のピークで115人生まれて87人が亡くなり、28人増えていた。こんな時代もあったんですね。
これが現状どんどん下がっていっているという状況です。それでも高齢者の割合は維持されていきます。これは、若い世代の人口がどんどん減っていく一方で、60代が70代になったり、50代が上がっていったりするので、高齢者の減少スピードが遅いためです。寿命も伸びていますしね。
出生率の推移
今度は出生率の推移ですね。上の方の図を見ると、意外とでこぼこしている感じですかね。
下の方の図、全国平均と新潟県平均との比較で見てみると、湯沢町はこの紫のグラフ、平成20年までは新潟県平均と全国平均よりも高い水準で実は来ていたんですね。でも、平成20年からガクッと下がって、一時期持ち直すのですが、ここから結構低いペースが続いているという状況です。
未婚率の推移
次に未婚率を見ていきましょう。
まず、下側のグラフの、女性から見ていきましょう。湯沢町の女性未婚率は多くの年齢層で全国平均並みですが、30から34歳と40から44歳で全国平均よりも高くなっています。特に30から34歳は全国33.5%に対して本町は38.6%で、全国比で5.1%高くなっています。県平均では20歳代を除いて全ての年齢層で高くなっています。
赤い線が湯沢町で、緑色の線が新潟県平均です。30から34歳の未婚率が結婚していない女性の割合が湯沢町は少し多く、40から44歳のところもちょっと多いですね。一方で20歳から24歳のところは県平均より低く、結婚している人の割合が少し多くなっています。
次に男性です。上側のグラフですね。湯沢町の男性は、女性の方と比べて、全国平均・新潟県平均との乖離が大きくて、湯沢町の男性は20歳から49歳までの未婚率が、新潟県と全国に比べて高くなっています。これは、湯沢町にかなり特徴的な傾向と言えそうです。
人口ビジョンでは、「本町は、男性は 20 歳代から 40 歳代において未婚率が特に高いこと、女性は県平均よりも高いことが出生数に影響を与えているといえます。」と結論づけられています。
転入・転出の状況 (社会動態)
次は社会増減の話です。特に若い世代がこの街から出て行ってしまうという問題ですね。高校から町外に進学していって、まず高校卒業して大学進学、就職という時に、やはり湯沢町から出て行ってしまいます。その辺の話が転入数・転出数というところで見れるわけです。
真ん中のグラフ、平成28年から30年のデータを見てましょう。
・まず15歳から19歳。高校生くらいですね、ここを見てみましょう。青いバーが入ってくる数で、緑のバーが出ていく数ですが、出て行く数が多いですね。
・20歳から24歳になると、49人入ってくるけど66人出て行ってしまう。
・25歳から29歳も43人入るけど50人出て行ってしまう。
毎年このくらいの人数がどーんと湯沢町から出て行ってしまっているということです。ちなみに、その逆の現象として、50歳から74歳は転入の方が多いという特徴があります。
若者の定住意向のアンケート結果
さて、このように、若い世代はほとんどが町外に出て行ってしまうわけですが、若い世代の定住意向についてのアンケートが取られています。以下をご覧ください。
19歳から39歳の町民に「湯沢町に引き続き住みたいか?」と聞いたところ、53%が今後も住み続けたいと答えています。この中には、移住してきた町外出身者の回答なども入っているのはご留意ください。
さて、次に16歳から18歳、今の高校生くらいの子たちに将来の進路先の希望地域を聞いたアンケート(上の図表30)です。進路先として湯沢町を希望する割合は、わずかに7.5%です。92.5%が町外を希望しており、その内訳は県内の他市町村が22.5%、他県に行くのが70%となっています。
続いて、16歳から18歳の町民の将来の湯沢町への帰郷意向、つまりふるさとに戻りたい意向について見てみましょう。上の図表31,32です。一度は町外に出るものの、将来は湯沢町に戻りたいと考える割合は半数をわずかに超えていて、52.8%となっています。
その戻りたいと回答した52.8%の子たちのうち、いつ頃戻ってきたいと思っているか?という回答を見ると、「20代、30代」が多いという結果になっています。
これをまとめると、16歳から18歳のうち、将来湯沢に戻りたいと思っている人の割合は半分を超えているので、特にこのような子たちが一度は町外に進学や就職をしたとしても、将来戻りたいと思ったときに戻ってこられるように、仕事や生活面などの様々な受け入れ態勢を整えていく、という話になるかと思います。
独身者の結婚に関する意向
ここからまた重要なトピックで、若者の結婚意思について見ていきます。これが出生率などにつながってくるので、ここも丁寧に見ていきたいと思います。まず結婚意思の有無を年齢別に見て、結婚したいと思っているかどうかと、独身でいる理由との関係を見てみましょう。
「結婚したいと思っているのに、まだ独身なのはなぜですか?」という質問に対して、
適当な人に巡り会えていない:22.6%
今は学業や仕事に打ち込みたい:12.9%
趣味や娯楽を楽しみたい:12.4%
という回答になっています。これが結婚したい人たちが、まだ結婚していない理由ですね。
一方で、個人の人生の大事な選択の問題として、「一人で生きていく」という選択だってあっていいわけです。そのような「結婚意思はありません」と答えている人たちの理由としては:
結婚する必要を感じない:27%
独身の自由さを失いたくない:19.8%
となっています。
希望出生率
次は、希望出生率です。これは、「湯沢町の女性がどのくらいの子供の数を持ちたいと思っているか」の平均値を取ったものです。
この希望出生率を見ると1.66となっています。子どもは0人でいいという人もいるし、4人欲しいという人もいて、平均を取ると1.66ということですね。
この1.66という数字が今の湯沢町の20代から30代の希望なのだとすると、さっき「出生率の推移」で見てきたここ最近の数字より高いのが分かります。つまり、希望に現実が届いていないということですね。
人口減少対策の問題は、「あなたたちみんな結婚して子供を産みなさい」みたいな話でははなくて、産みたいと思っている人たちの希望をちゃんと実現させてあげられる社会になるよう、必要な政策や手を打つ、これが大事なスタンスになるのだと思います。
湯沢町の出生率低下の要因分析
出生率の長期的動向
では、1.66という希望出生率があるのになぜそこに到達しないのか?というところに関連して「湯沢町の出生率低下の要因分析」というページを見ていきましょう。
これは出生率の移動平均を示したものです。移動平均というのは、例えば2016年の数字は、直近過去3年の平均値を取って、その数字が置かれているという意味です。赤が湯沢町の5年移動平均で、紫が湯沢町の3年移動平均です。紫の方が直近のトレンドをより反映する数字になります。
これを新潟県(水色)や町村平均と比べて見ていくと、湯沢町は県平均に比べて1990年から10年くらいは県平均を越えて、まあ結構いい感じに1.9とかの時代もあったのですが、グッと下がってきて、最近はむしろ下回り始めているというのが、2010年以降の傾向ということです。
分析の視点 [出生率=既婚者出生率 × 既婚率]
ところで、出生率を分析するには、「既婚者出生率 × 既婚率」という視点が重要です。出生率は、「既婚者出生率」と「既婚率」に分解できるということですね。具体的な数字の例で見てみましょう。
当たり前のことを言っているだけと言って仕舞えばそれまでなのですが、既婚率を上げる施策を考えること、既婚者の出生率を上げる施策を考えること、この2つは別の話だというのを踏まえて議論するのが重要ということですね。
なぜ湯沢町では出生率が低いのか
なぜ湯沢町では出生率が低いのか?ということについても、「人口ビジョン」では分析をしてくれています。ここからはそれを見ていきましょう。
①未婚率の実態
まず湯沢町の未婚率(25-34歳)を見てみると、47.6%で、新潟県の 30 市町村中 21 位と未婚率が高い水準にあります。
②既婚者の年齢階層別出産割合の分布
今度は、女性既婚者の年齢階層別出産割合、結婚した人がどのくらい子供を産んでいるかという数字を見てみましょう。湯沢町は赤いグラフで示されています。
これを見ると湯沢町の特徴がやはりありまして、点線の新潟県平均と比べると、15歳から24歳くらいまでの比較的若い世代では出生率、既婚者出生率は少し高いのですが、25歳から39歳、つまり20代後半から30代後半までを見ると、この傾向が逆転して、この町の既婚者の子供を産む割合がちょっと低くなっています。40代になるとまた上がるという傾向があります。
③未婚率と出生率の関係
未婚率と出生率の関係を示すグラフがあります。これは何を表しているかというと、合計特殊出生率と女性未婚率を、それぞれ縦軸と横軸において各自治体の数字をプロットしているものです。
ここから読み取れることは何かというと、25歳から34歳の女性の未婚率が高いほど出生率が低い、逆に言うと、未婚率が下がる(=既婚者が増える)と出生率が改善する。これが統計的に明らかになっているということですね。
④本町の未婚率と出生率(1990年と2015年の比較)
上手をみると、1990年から2015年にかけて、未婚率が増え、出生率が低下したことが分かります。以上の未婚率・出生率の分析を踏まえた人口ビジョンの結論が以下になります。
おわりに
少子化というと、ついつい女性に対して「結婚して子どもを産みなさい」という話に昔からなりがちだと思います。ですが、結婚は女性だけの問題ではなく男性の側の問題でもあるし、そもそも、結婚することも子どもを産むことも、一人ひとりが
どう生きるかという個人の選択の問題でもあります。
少子化対策の問題は、この点を議論の土台となる共通認識にした上で進めていくことが重要です。
今回はデータや資料などをたくさん見てきましたが、これを通じて、少子高齢化・人口減少の問題を、まだ将来のことと高をくくらずに、身近な自分ごとの問題として、自分にできることってなんだろうとちょっとでも考えてもらえたら嬉しいです。