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障害者雇用の「ジョブ型」導入を考えてみませんか?

〇障害者雇用における「仕事の定義が不明確である」ことの問題
障害者雇用に対する社会的なニーズが高まるなか、障害者を雇用した企業側では「業務がうまく回らない」「コミュニケーションに課題がある」など、多様な問題に直面するケースが増えています。特に顕著なのが「仕事の定義が曖昧で、雇用した障害者の定着が難しい」という問題です。この問題は、単に業務内容の整理にとどまらず、障害者本人の負担を増大させる要因ともなり、結果的に企業側が想定していた成果を上げるのが難しくなります。

特に日本では一定の業務を特に役割を明確化せずに進める「メンバーシップ型」の働き方が一般的な仕事の進め方となっており、障害者が配属された業務内容も「〇〇事務」などのように業務範囲を明確化せず、関連する業務もおこなえる範囲でしてもらうように、確に定義されておらず、「本来の業務と関係のない仕事を頼まれる」「急に別の作業を頼まれる」といった状況が発生しがちです。このようなケースでは、障害特性から適応が難しい業務や精神的な負担が伴う業務を頼まれる場合が多く、それがストレスの一因となり、結果的に離職につながるケースが少なくありません。

たとえば、強迫性障害をもつ人の場合、ある特定の環境下では安心して働ける一方で、不意に清掃を頼まれると、突然の変化に対する強い不安感や動揺が生じ、精神的な負荷が非常に高まります。日常的なルーチン作業が特性に合う反面、このような突発的な変化に対応するための心理的な余裕が足りないため、業務遂行が難しくなりがちです。障害者が本来の業務に集中できるよう、何をどこまで担うべきかを明確にする「職務定義書(ジョブディスクリプション)」が存在しないと、障害者と企業の双方にとって負担となるのです。

また、障害者の雇用を担当する人事部や上司が、「職務定義の重要性」や「適切な業務の割り振り」について理解が不十分な場合も問題を深刻化させます。配属先の部署で職務内容がはっきりしていないと、日々の仕事に支障をきたすだけでなく、障害者に不適切な業務を担当させてしまい、働き続ける意欲や自信を失う原因にもなりかねません。

実際の現場では、障害者が自分の担当業務とそうでない業務を「断りやすくする」ための工夫がほとんどされておらず、障害者本人が困惑しているケースも多いようです。

〇障害者雇用の課題を放置すると、企業全体の生産性にも悪影響が
障害者雇用に取り組むなかで「雇用したものの業務が回らない」「不満が増えて離職につながる」といった問題に悩んでいませんか?このような課題を見過ごしてしまうと、障害者本人の成長や働きがいが損なわれるだけでなく、企業全体の生産性にまで悪影響が及びかねません。

職場で障害者が安心して働ける環境が整っていない場合、業務の負担が偏り、同僚や上司にも精神的な負担がかかります。さらに業務が円滑に進まないことで、職場内でストレスが蓄積し離職率が高まるリスクもあります。また障害者が自身の職務内容について不安や混乱を抱えていると、それが顧客対応や業務品質に響き、企業の評価やブランドイメージにまで影響が及ぶことも考えられます。

特に「仕事の範囲が曖昧で、頻繁に別の作業を頼まれる」という状況は、障害特性から不安を感じやすい方や変化に適応しにくい方にとって、職場の大きなストレス要因となります。例えば突然の別業務が発生すると、対応が難しくなり、最悪の場合、障害者本人が「職場に合わない」と感じてしまう恐れもあるでしょう。こうした問題を抱えたまま業務を続けると、本人の職場定着が難しくなり、せっかく雇用した人材を活かしきれない結果となってしまいます。

障害者雇用に取り組む企業として、こうした課題を見過ごさずに早めに対応することが重要です。問題を放置すると、企業としての社会的責任に疑問が生じ、また障害者の雇用と定着を支援するための効果的な取り組みが行われていないと見られる可能性もあります。障害者が長期的に活躍できる職場づくりは、企業の成長にも直結するため、今こそジョブ型の導入と明確な職務定義書の作成を検討すべき時と考えています。

一度仕組みを整えることで、障害者雇用に対する不安や悩みは減り、企業の生産性が向上し、長期的な成長を実現する基盤が生まれる基盤づくり役立つことでしょう。

〇明確な職務定義書(ジョブディスクリプション)とキャリア面談による解決策
問題を解決するための有効な方法として、「ジョブ型」を導入し、明確な職務定義書(ジョブディスクリプション)を作成することが挙げられます。ジョブ型とは、業務内容をあらかじめ具体的に定義し、その業務に適したスキルを持つ人材を配置する考え方です。障害者雇用では特にこの「職務定義」が重要であり、本人の特性に合った業務を設定することで、仕事に集中しやすく、職場での安定した定着が期待できます。

障害者の特性に適した業務を行ってもらうためには、職務定義書をただの形式上の書類とせず、実務に則して内容を精査することが重要です。この際に注力すべきは、人事部ではなく配属先の現場担当者と協力しながら、実際の業務内容を十分に把握したうえで業務範囲を明確にすることです。例えば、以下のような手順を踏むことが効果的です。

1. 業務内容の具体化
配属先の担当者と協力し、日常業務と補助業務を区別し、どの業務が重要かを定義する。
2. 業務範囲の明確化
障害者の特性に基づき、適した業務と適さない業務を具体的に示す。急な変化が負担となる場合には、突発的な依頼を避けるよう調整する。

〇定期的なキャリア面談の実施
ジョブ型の導入後、固定的な仕事のみが割り振られることにより、「やりがいや成長機会が限られる」といった懸念も生じます。この点を解消するため、障害者本人と定期的にキャリア面談を行い、業務内容や今後のキャリアについて相談する機会を設けることが必要です。これにより、本人の成長意欲を高め、職場での定着率も上がります。

また、ジョブ型において賃金が固定化されてしまうと、成長機会が不足しているように感じ、モチベーションの低下や離職の原因となる場合もあります。このため、職務内容に合わせて、スキルの習得や職務遂行力を評価し、適切な賃金見直しを行う仕組みを導入することが大切です。これにより、障害者雇用の安定化と定着率の向上を目指すことができます。

障害者雇用やジョブ型導入についてさらに具体的なアドバイスが必要な場合は、社会保険労務士法人東京エルファロまでご相談ください。私たちは、貴社の状況に応じたアドバイスや制度設計のサポートを行い、障害者雇用の課題解決と職場の安定した成長に向けたお手伝いをいたします。

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